#54
【作者より】
今回も前回に引き続き、医療シーン(手術など)です。
作者は医療従事者ではございませんので、あらかじめご了承くださいませ。
また、苦手な方はご注意ください。
「……どうしましょうか……?」
ジャスパーは悩みながらもメスを入れる部分を考えながら口をもごもごと動かしている。
友梨奈の脳は過去の記憶は消したくないため、そこは控えるとして、要望書に「同じ身長の女子中学生」と書いてあったため、外見から作り上げていこうと彼は決めた。
あとは彼女が事前に書いた要望書通りに仕立て上げるだけ――。
ジャスパーはその要望書の記憶を頼りに迷いなく、てきぱきと手を動かしていく。
彼は転生手術を人体改造をしているようで、地味に楽しんでいた。
「せ、先生……」
「す、素早いです……」
「メスさばきが……」
「すざましいです」
「さっきまでと比べて、丁寧さはそのままにハイペースになっているのは気のせいだろうか……?」
「あっという間に顔の輪郭ができあがったぞ!」
「その技術、自分も身につけたいです」
「いや、無理だろう……これは意外と繊細そう」
「俺は彼みたいに器用じゃないですしね……」
「確かに……」
「俺は諦めますが、なんか憧れます!」
「そうか」
それを見た他の医師や看護師はどよめきを起こしている。
彼らは少しずつ変わっていく友梨奈の容姿をただ呆然と見ていた。
「さて、外見はこのくらいにしておきましょう」
血が付着した部位をきちんと消毒した布で綺麗に拭き取り、ジャスパーは唖然としている他の医師や看護師から「凄いですね……」と言葉を漏らしている。
彼は「それほどでもありません」と返答した。
担架の上には友梨奈から見知らぬ美少女が無傷の状態で横たわっている。
モニタの心電図では心臓はきちんと動いており、脈拍の乱れもないため、正常だとジャスパーは判断した。
彼は自分で人工呼吸器を止め、麻酔医に麻酔を止めてもらい、看護師はその少女に衣服を着せている。
「これにて今回の手術を終了します。みなさん、お疲れ様でした」
「「お疲れ様でした!」」
ようやく友梨奈の転生手術を終え、その手術の様子を見ていた者達は驚きを隠せないまま、手術室をあとにした。
*
ジャスパーはベッドに乗せ換え、麻酔から目を覚ましていない彼女を診察室に誘導する。
今度は前世に戻す場所について考えなければならない。
友梨奈の家にきた親戚ということにするが、この少女も何かの病気に罹っており、手術していたところだった。
よって、麻酔から目が覚めた時には病室の方が自然だろう。
彼女は自ら命を絶っているため、その当時の自分の姿を客観的に見ることが可能かもしれない――。
「もし、前世に戻すならば……やはり、病院だな……」
彼にとって最も自然なシチュエーションは病院のとある病室しか見当たらない。
最初は「自殺を謀った場所で親御さんが見つけた」というシチュエーションも考えたが、あまりにも残酷すぎだとジャスパーは判断した。
。
「では、あなたをここから前世に戻させていただきます。これからは木野家の親戚として、有意義な時間が過ごせることを祈ります」
ここからは彼は再びタブレット端末にて監視という名の見守りに入ることとなるが、転生した彼女の性格をまだ告げていないことに気がついてしまった。
彼女の性格は「悪役令嬢」であるということを告げずに現世に戻してしまったことに――。
「そういえば、別の名前も告げるのも忘れていた……」
ジャスパーは回転椅子の背もたれに身を委ね、後悔していた。
「スピンオフ」の「#27」をベースに改稿。
2018/11/11 本投稿
※ Next 2018/11/11 19時頃更新予定。




