#53
【作者より】
今回は医療シーン(手術など)です。
作者は医療従事者ではございませんので、あらかじめご了承くださいませ。
また、苦手な方はご注意ください。
酸素マスクや人工呼吸器などの医療器具の設置を終え、担架の上で全身麻酔によって完全に眠らされている友梨奈。
彼女はまるで眠れる森の美女もとい、美少女のようだ。
緊迫した空気が流れている手術室の中で心電図のモニタが規則的に鳴り響いている――――。
「手術を始めます」
ジャスパーは他の医師や看護師に告げ、手術が始まった。
彼は今回の手術で久しぶりにメスを握ることになり、失敗しないかどうか不安になる。
しかし、この手術での失敗は確実に赦されない。
なぜならば、友梨奈が事前に書いていた要望書に沿った別の少女に仕立て上げ、彼女を現実世界という名の前世に戻さなければならないからだ。
過去のトラウマを呼び起こしかけたジャスパーは軽く首を振り切り替えようとする。
「先生、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
彼は看護師の一言で完全に切り替え、彼女の転生手術が始まった。
「……メス……」
「はい」
ジャスパーは友梨奈の胸部にメスを入れる。
メスがすっと皮膚を裂き、傷口から血液が滲んでいく中で胸骨を開き、新膜切開をした。
次に彼女が本来持っている心臓から別の人物の心臓を移植する。
その時、全員の視線はそれに向けられていた。
心臓移植に使われる心臓はドナーを見つけることが大変であり、大きさの合うものがくるまで待たなければならないため、残念ながら間に合わず死に至ることがある。
よって、ドナーが見つかるのは運なのかもしれないのだ。
他の医師や看護師はそのような現状にも関わらず、彼が心臓ドナーをあっさりと見つけ出せるとは思ってもいなかった。
「先生?」
「はい?」
「よく今回の心臓ドナーが見つかりましたね」
「今回はたまたま運がよかっただけなのです。しかし……」
「……しかし……?」
「心臓の大きさはちょうどいいのですが、きちんと動いてくれるのかどうかが心配ですね」
「そうですね。友梨奈ちゃんは十四歳か十五歳くらいでしたっけ?」
「ええ。彼女は中学三年生と伺っていましたので、年齢はそのくらいだと……」
「なるほどねー。中学生は青春真っ盛りですものね」
「そうですね。では、胸部の縫合を行います」
「はい」
黙々と手を動かしているジャスパーに話しかけてくる看護師。
彼は彼女に苛立ちを感じていたが、次第に冷静になり、会話を成立させたやさき、胸部の縫合が終わり、心臓移植は終了した。
「あれ? 先生、まだ手術を続けるんですか?」
「え、ええ……」
彼は自分からメスを握り、周囲にいた医師や看護師から不審そうな視線で見られているため、曖昧な回答をする。
この流れでは心臓移植手術だけだと思われた。
しかし、今回はその手術の他に転生手術も含まれており、友梨奈の心臓以外にも手を施さなければならないところがまだあるのだ。
ジャスパーは彼女の身体を眺めながら次はどこにメスを入れようか悩むのであった。
「スピンオフ」の「#26」をベースに改稿。
※ 次回も医療シーン(手術など)が入ります。
苦手な方はご注意くださいませ。
2018/11/10 本投稿
2018/11/11 前書き欄の誤字修正
※ Next 2018/11/11 0時頃更新予定。