#52
あれから約一時間が経過した時、友梨奈を乗せたベッドは看護師によって病室から手術室へ連れて行かれた。
彼女はベッドから立ち上がり、そこで手渡された手術衣に着替えたりと準備している。
「友梨奈ちゃん、手術衣に着替え終わったかな?」
「はい」
「そうしたら、担架の上に横になってね」
「分かりました」
すでにこの場所には手術衣に着替えている医師や看護師が集っており、彼女をベッドから担架に横になるよう指示を出した。
友梨奈はその指示に従い、担架の上に横になる。
彼女から見た手術室は凄く綺麗かつ本格的で、まるで医療ドラマに出ているみたいだと思い、興奮していた。
一方、ジャスパーは手術室の隣にある小部屋で支度をしている。
「さ、さすがに、この髪型だと確実に怒られるよな……」
普段は隻眼で仕事をこなしている彼は手術時も同様の髪型で友梨奈の身体に刃を入れるわけにはいかない。
「恥ずかしいが、隻眼は止めておくか。誰も僕が誰だか分からなかったら悲しいが……」
仕方がなく前髪を輪ゴムで縛り、ヘアピンで落ちてこないよう固定し、髪が出ないよう帽子をしっかりと被る。
手を洗い、消毒し、手術モードに切り替えたジャスパーは「さて……行こうか」と呟き、そこから手術室へ向かった。
「みなさん、準備はできましたか?」
「「はい!」」
担架の上で横になっている友梨奈は彼の声が耳に入ってきたため、どこにいるか視線を巡らせる。
ようやくジャスパーを見つけた時には彼女の目の前にいたので、じっと見ていた。
友梨奈は彼の髪型が通常と異なり、違和感があったが、声で認識していた模様。
彼女に気づいてくれるかどうか不安だったジャスパーはマスクに隠された口元が一瞬だけ緩んだ。
「友梨奈さん、顔が真っ赤ですよ?」
「いえ。なんでもないですー」
「では、これから全身麻酔を投与します。意識は徐々に遠退きます。もし、目覚めることができましたら、手術は成功したと捉えてください。それであなたは第二の人生の始まりです。よろしいですか?」
「はい、分かりました」
「麻酔の投与をお願いします」
彼の指示で麻酔医が返事をし、友梨奈の身体に麻酔が投与されていく――。
彼女は意識が朦朧する中で「手術を始めます」と微かに聞こえた時にはそれによって深い眠りについていった。
「【原作版】」の「#19」の後半部、「スピンオフ」の「#25」をベースに改稿。
※ 次回は医療シーン(手術など)が入ります。
苦手な方はご注意くださいませ。
2018/11/10 本投稿
※ Next 2018/11/10 19時頃更新予定。




