#48
「では、友梨奈さん、手当てを始めます」
「お願いします」
友梨奈は自分が呟いたことをジャスパーに気づかれたかと思っていたが、その心配をする必要がなかった。
彼は手当てを施そうと事前に消毒液を染み込ましてピンセットに摘まれた脱脂綿が乾いてしまったため、新しいものに変える。
「少しだけ消毒液が染みますからね」
「……っつ……」
「どうされましたか?」
「……痛い……です……」
「おや? 早速、染みてしまったのですね……」
「……はい……」
彼女の身体には無数の傷があるため、消毒液が染みてしまうようだ。
二人が共通して思うことは友梨奈は一体全体どのような体勢で自殺を謀ったのかというところ――。
「んー……ここは傷跡が残るかもしれませんね……」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。肘のあたりが深く切れてしまっているので――――」
ジャスパーは女性はおそらく傷跡を気にするだろうと思い、慎重に友梨奈の身体の手当てを施していく。
彼女はその痛みを涙を飲むように堪えているのであった。
*
あれから数分くらい時が流れた頃、彼の手はぴたりと止まった。
「まだ痣が目立ちますが、一応手当ては終わりました」
「ありがとうございます」
友梨奈の傷だらけの身体にはジャスパーが使いたくはなかった包帯や絆創膏が貼られている。
彼は彼女の怪我の手当てを終え、使用済みの脱脂綿やピンセットなどを大まかに片付けている中で友梨奈はこのように思った。
もし、自分が生きていたとすると、クラスメイトや家族から馬鹿にされるか、心配されるかのどちらかだと――。
「ところで、友梨奈さんは先ほどおばあさんになるまで生きたかったと仰いましたね?」
ジャスパーは彼女の顔を覗き込むように問いかける。
ついに、彼は友梨奈が呟いたことに気がついたようだ。
「は、はい。確かに言いました」
「ならば、もう一度やり直してみませんか? ただし、二度目の人生になってしまいますが……」
「えっ!? 凄い! そんなことができるんですか?」
「左様ですが?」
「だったら、このままの姿で戻りたいです! それはできますか?」
彼女はジャスパーに上目づかいで今のところで望んでいることをはっきりと告げてくる。
彼は眉間にしわを寄せながら「……残念ながら……」と答えるしかない。
ジャスパーはこれではまるで友梨奈に余命宣告を告げるような空気を作ってしまい、心中では慌てている。
彼は仕方がなく、彼女に「残念ながら、あなたはそのままの身体で前世に戻ることができません」と告げた。
「【原作版】」の「#17」の前半部、「スピンオフ」の「#22」をベースに改稿。
2018/11/07 本投稿
※ Next 2018/11/07 6時頃更新予定。




