表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/87

#47

 友梨奈にとってその声はまるで、彼女の知らない世界に(いざな)うような口調の声が耳に入ってきた。

 その声は聞き覚えがあるか否かは曖昧(あいまい)なところである。


 友梨奈はふと違和感を抱き始めていた。

 彼女の身体には何かに包まれているようで温かく、救急車の中か、最悪の場合は未だにコンクリートの上かもしれないと――。


「……ん……?」


 友梨奈はそのようなことを思いながらゆっくり()を覚ますと、真っ白な天井が視界に入ってきたため、おそらく部屋だと察した。

 その部屋は家の電気と同じ明るさではあるが、瞳を開けたばかりの彼女にとっては視界がぼんやりし、()()()()()()()()()()()()()()

 どうしても友梨奈自身が今いるところが知りたいと思い、部屋の中を(うつろ)ろな瞳で見回してみる。

 壁や天井は白く、彼女の身体が温かく感じたのはかけ布団が敷いてあった。

 ようやく、友梨奈はどこかの病室のベッドの中にいることが判明。


「友梨奈さん、ようやくお目覚めですね?」


 彼女は先ほどまでは曖昧だったその声に聞き覚えがあった。


「……あっ……ジャスパー先生……」


 友梨奈は先ほどの声の主であるをジャスパーを呼び、そのままの状態の瞳で視線を合わせようとする。


「友梨奈さん?」


 彼はピンセットに摘ままれた脱脂綿を持ったまま呆然としていた。

 ジャスパーは友梨奈の()()に立っているが、彼女は()()を向いているため、二人は(つい)の方向を向いている。

 友梨奈はまだ意識がはっきりしないしていないため、どちらに彼がいたか分からなかったとジャスパーは思った。

 しかし、彼女は反対側に彼がいなかったことに気づいたのか、左側に向き直す。


「う、嘘……」

「どうされました?」

「嘘!? なんで私は生きてるんですか!?」

「僕が蘇生させました」

「えぇーっ!」


 友梨奈ははじめてジャスパーと会った時からなんか怪しいと思っており、彼女は呑気に彼のことを()()()という人物なのだろうかと思っていた。

 一方のジャスパーはもしかしたら友梨奈は()()()()()()()()のかと思ったが、きちんと元いた場所に戻ったため、それは違うと判断した。

 しかし、今回はその時と異なり、彼女は()()()()()()()()ため、そのままの姿できちんと戻るという選択肢はない。


「あの……友梨奈さん、今は傷だらけなので、動かないでください。これから、手当てをしますので」

「すみません。手鏡って……こちらにはないですよね……?」

「ありますよ。もしよかったらどうぞ」


 彼は友梨奈に手鏡を渡すと自分の顔や身体をじっと見ている。

 顔は額と頬に少し切り傷が、腕や脚にもアザや擦り傷があり、彼女の身体は本当に傷だらけ。

 ジャスパーはその様子を見ていると、友梨奈は本当にごく普通の女子中学生だと思っていた。


「……あの……」

「はい?」

「変なことを言ってもいいですか?」

「どうぞ?」

()()()()()ということは本当にパパやママに会えないんですよね?」


 彼女は寂しそうな表情を浮かべながら上目づかいで問いかける。

 彼は表情を崩さずにこう答えた。


「ええ、その通りです。友梨奈さんは現世では自ら命を絶たれていますので……」

「……そうですか……」


 ジャスパーがこう答えると友梨奈は今までのことを思い出している。

 彼女はクラス全員からのいじめと両親や先生の前ではいい子を演じなければならないというストレスがきっかけで自殺。

 誰一人として、友梨奈が自殺すると告げたわけでもなんでもない。

 下手したら体育の授業で校庭にいた高等部の生徒であろう人物の中に目撃者は少なからずいたはずだった。

 数分くらい経ったあと、彼女は「もう少し生きたかったなぁ……できれば、おばあちゃんになるまで生きたかったな」と呟く。


 彼女の両親はもちろんのこと、誰もが同じことを思ったと思われるその言葉。

 今まで一緒にいた人と突然にして会えなくなるということは事実だということを意味しているようだった。

「【原作版】」の「#16」、「スピンオフ」の「#21」をベースに改稿。


2018/11/06 本投稿

2018/11/06 後書き欄修正


※ Next 2018/11/07 0時頃更新予定。



本日は19時にも更新する予定でしたが、最新話の執筆が間に合っていない関係上、明日の0時頃(・・・・・・)に変更します。

楽しみに待っている方には申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

その他の作品はこちらから(シリーズ一覧に飛びます。)

cont_access.php?citi_cont_id=137134310&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ