#46
【作者より】
今回は医療シーンです。
作者は医療従事者ではございませんので、あらかじめご了承くださいませ。
また、苦手な方はご注意ください。
ジャスパーが診察室に到着した時、病院内では看護師が慌ただしく何かを探していた。
「せ、先生、今までどこへ……?」
「ずっと探していたんですよ?」
「すみません」
彼女らは彼を探していたらしく、そのような状況になっていたとは思っていないため、謝罪するしかない。
「今現在で構いませんが、急患はいますか?」
「いえ」
「今はいませんが……」
「ところで、そちらの方は?」
「こちらの方はは急患です。手術室の空きは?」
「ちょっと調べてきます!」
「お願いします」
ジャスパーは眉間にしわを寄せながら問いかける。
看護師が手術室の空き状況を調べさせている間に彼は友梨奈を診察室のベッドに横にさせた。
「先生! 診察室はあと一時間くらい待たないと空かないみたいです!」
「……仕方がない……ならば、ここで行いましょう。処置の準備を速やかに願います」
「「は、はい!」」
急患がいるにも関わらず、全く空かない手術室――。
そこが使えないならば、診察室などの限られた場所を最大限に活用すればいいとジャスパーは判断した。
彼女らは処置に必要なものを準備し始める――。
*
彼らが手術室を待っている間に準備を終えたようだ。
「先生、準備が整いました!」
「分かりました。では、始めましょう」
「「お願いします!」」
「よろしくお願いいたします」
友梨奈の身体には心肺や血圧が表示されるモニタが設置されており、ジャスパーと看護師は彼女に蘇生してほしい一心で心臓マッサージをし始める。
今回、彼らが行っている医療行為は「心肺蘇生法」は主に心臓マッサージや気道確保、人工呼吸の三点。
気道確保や人工呼吸はしっかり訓練を受け、自信がある者は可能であるが、心臓マッサージはいざという時に役に立つ行為だ。
そのやり方は胸の中央に手の付け根を置き、両手を重ねるようにする。
肘を真っ直ぐ伸ばし、継続できる範囲で強く圧迫を繰り返すようにしなければならない。
そのため、体力はかなり消耗するので、交代できる人がいると最もよいのだ。
今回は幸いにも医師が一人と看護師が三人いる。
交代は可能であり、医療器具もあるので、気道確保や人工呼吸なども容易だ。
「…………いち、にっ、さん…………」
看護師にカウントしてもらいながら、心臓マッサージと人工呼吸を繰り返すジャスパー。
やはり、人工呼吸は男性である彼にとって少し抵抗があり、「こればかりは仕事なのだから仕方がない」と思いながらやっていく。
「はぁはぁ……そろそろ、交代、しましょう……」
「はい」
「私が代わります」
彼らは何回かそれらを繰り返した時に看護師の一人が「ん?」と軽く首を傾げていた。
それに気がついたジャスパーは「どうされました?」と問いかける。
「モニタを見てください!」
彼はタオルで額から流れてきた汗を拭き取りながら、彼女に言われたモニタ画面を見た。
その画面に表示されている心拍数の波が一定から少しずつ波打ち始めている。
「よかった……心拍数が戻ってきていますね」
「先生、よかったですね!」
「ええ。みなさん、とてもお忙しい中、ご協力していただきありがとうございました」
「いえいえ」
「とんでもないですよ」
看護師は各々の業務のため、診察室から出て行った。
ジャスパーはこれでようやく第一段階を終えたところであり、次の段階に進めなければならない。
「友梨奈さん、僕のところにいらしたのですね?」
彼はふと微笑を浮かべ、友梨奈の耳元で囁いた。
しかし、彼女はおそらくその時のジャスパーの表情は見えていないのだから――。
「スピンオフ」の「#20」をベースに改稿。
2018/11/05 本投稿
2018/11/11 前書き欄の誤字修正
※ Next 2018/11/06 0時頃更新予定。




