#44
「あれはなんだ!?」
「屋上に女の子!?」
「あの子の制服は……ここの中等部の制服だよね?」
「うん」
「誰か早く止めてやれよ!」
「確か……普段、屋上の鍵は閉まっているはずだけど……」
「あの子が鍵を開けたのかな?」
「もしかしたら、誰かが開けっぱなしにしたとか考えられるよね?」
「そうだね」
「こんなところで死ぬなよ!」
「あなたが死んでしまったら、残った家族が悲しむよ!」
友梨奈は無言の死を選んだ時、他のクラスや学年の生徒達はその様子を見ており、止めさせようとしていたが、彼らの願いは彼女に届くことはなかった。
その一方で、彼女のクラスメイトは友梨奈を誰も止めようとせず、この状況がを面白いものを見つけたかのように笑いが起こっている。
「カンニング女がついに死んだぜ!」
「悲劇のヒロイン、ここに散る!」
「うぇーい!」
「篠田の望みがついに叶ったぜ!」
「今までウチに協力してくれてありがとう!」
調子に乗りやすい男子生徒が騒がしくなる中、エリカが満足したような口調で礼を言ってきた。
彼女は「これで秋桜寺くんはウチのもの」と呟いたが、誰かの耳に入ることはない。
なぜならば、彼らの声でかき消されてしまっているから――。
彼女らが教室で騒いでいる中、校庭や学校周辺では人だかりができていた。
「なんだなんだ!?」
「この学校で女の子が飛び降りたんだって!」
「私立花咲大付属って人気ある中高一貫校ですよね!?」
「ええ」
「いじめとか普通にありそう……」
「人気校に潜む闇だよな……」
「表向きはいい学校だと言っておいて、実は問題児クラスとかあったりして」
「問題児クラスって……学園ドラマの定番だよね」
「だねー」
「だ、誰か救急車を!」
「今、電話をかけています!」
校舎内に入れない通行人はその場で心配そうに友梨奈の生死を見守るしかないのだ。
そうこうしている間に救急車がサイレンを鳴らしながら、私立花咲大学付属中等学校に向かっている。
その時、「ここからは僕の出番のようだな……」と男性の声で呟いていたが、周囲を見回す限りではその声の主の姿は見当たらなかった。
書きおろしエピソード
2018/11/04 本投稿
※ Next 2018/11/04 19時頃更新予定。




