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#42

 二人の別れ方は穏やかなものではなかったが、彼女らにとってはその方が最善なのではないかと――。


 あれからあっという間に一夜が過ぎ去ってしまった。

 友梨奈はいつも通りに登校し、早紀や凪とともに音楽室で朝練に参加している。

 しかし、彼女を襲う悲劇はまだこれからも続くのかもしれない――。


「もうすぐ授業が始まるから、楽器を片付けてー!」

「「はい!」」


 部長の指示で部員達は練習を終え、楽器倉庫で後片付けをし始めた時、柚葉は複雑な表情を浮かべていた。

 彼女にとっては決してやりたくないと思っているエリカから突きつけられた課題(ミッション)

 ()()を今すぐにやらなければ、次の機会がないかもしれないとされる中、柚葉は動き出した。


「早紀、凪、ちょっといいかな?」


 片付けをしている他の部員達の音を耳にしながら、彼女は早紀と凪を呼び出す。


「んー?」

「柚葉ちゃん、どうしたの?」

「楽器を片付け終わったら、音楽室にきて」

「分かった」

「了解」


 彼女らはそれぞれ異なった反応を示し、そのやり取りを楽器を片付けながら聞いていた友梨奈はこう察した。

 柚葉は早紀や凪を巻き込み、彼女を一人ぼっちにさせる気でいるのではないかと――。

 友梨奈は彼女らから離れたくないと願っていた。



 *



「柚葉ちゃんから話があるって言ったのは珍しいよね」

「確かに。どうしたんだろう?」

「ホルンパートのことで何か悩んでいるのかな?」

「柚葉はホルンのパートリーダーだもんね。悩みの一つや二つくらいはあるかもしれないよね」

「でもさ、ボク達はホルンと全然関係ないパートだけど、参考になることってあるのかなぁ……?」


 早紀と凪は楽器を片付け終え、柚葉が待っている音楽室に向かっている。

 彼女らは残念ながら、柚葉と同じパートではない。

 早紀が担当しているソプラノサックスはサックスパートに、凪はトランペットパートに分類される。

 それ以前に、二人はなぜ、彼女に呼び出されたのか気になっていた。

 楽器を片付け終えた友梨奈は彼女らのあとを少し時間を空けてから移動し始める。

 その時の彼女はこれから柚葉達がどのような話をするのかが気になっていたから――。


「あっ。早紀、凪」

「お待たせー」

「柚葉ちゃん、どうしたの?」


 二人が音楽室に着いた時、彼女は吹奏楽コンクールで演奏する楽譜を眺めていた。

 早紀と凪はいつも通り、柚葉と接している。


「あのね……」

「ん?」

「柚葉ちゃん、話してごらん?」

「実はわたしのクラスメイトで「部活で友梨奈とよく一緒にいる人に無視したり避けて行動したりするように伝えてほしい」って言われてて……」

「そ、それはボクにはできないよ!」

「あたしも! それって最低じゃん!」

「もしかして、柚葉ちゃんやまひろちゃんが最近になって友梨奈ちゃんと一緒にいることがなくなったのはその人が原因なんじゃないのかな?」

「早紀は鋭いね。だけど、早紀達にも協力してほしいの! そうじゃないと、わたし……」


 二人は柚葉にこのような事情があったとは知らなかったが、彼女が言いたいことを察していた。

 彼女らは黙って頷き、凪はこう続ける。


「今度は柚葉が()()()()()()()()()()()()ということか……」

「なるほどなー」

「そうと決まればやりましょうか」

「早くしないと朝の学活が始まるからね!」


 友梨奈は待つべきではなかったが、早紀と凪が音楽室から出てくるまで心配そうに待っていた。

 その時、柚葉を含めた三人が音楽室から出てくる。


「さ……き……?」


 彼女らは彼女を素通りし、楽しそうに会話をしながら、そこから各々の教室へ向かっていた。

 三人の姿がみるみる小さくなっていく中、友梨奈は誰もいなくなった廊下にぽつんと取り残されている。


「な……なんで? いつも……私だけなの?」


 彼女は泣き出しそうになりながら呟いた。

「【原作版】」の「#14」の後半部、「スピンオフ」の「#18」の前半部をベースに改稿。

中間部は書きおろしエピソード。


2018/11/03 本投稿


※ Next 2018/11/03 19時頃更新予定。

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