#33
帰りの学活が終わり、友梨奈が教室から出たあと、エリカが廊下から顔を出し、彼女の姿がなくなったことを確認している。
「篠田、いなくなったか?」
「まだ二組か三組のところにいるんだけど……」
友梨奈は早紀や凪と一緒に音楽室へ行くために二組と三組の近くで待っていたのだ。
彼女が教室の近くにいることによって事が進まない。
「早く帰れよ、ゴミ女!」
「あの女はカンニング女でもあるぞ」
「もう、そんなのはどっちでもいいじゃん!」
教室内はいつもより騒がしいのは友梨奈と担任の早川以外は全員教室にいたからだ。
本来は柚葉みたいに部活をやっているクラスメイトもいなくなっているはずの教室――。
エリカは今も廊下を見ているため、なかなか教室に戻ってこない。
「……やっといなくなったよー」
「なあなあ! 早く本題に入ろうぜ!」
「ここからは俺らの作戦会議の時間だ!」
「おう!」
あれから数分経ったあと、彼女が戻ってきた。
これから、数人の男子生徒が言っていた「友梨奈をいじめるための脚本」という名の「作戦会議」が始まろうとしている。
*
「さてさて、さっきは協力してくれてありがとね」
エリカが教壇に立ち、全員に礼を言う。
「篠田さん、もういいでしょう?」
「これ以上やったら、木野さんが可哀想だよ」
「もう止めにしないか? 実は俺、そういうの好きじゃないし」
一部のクラスメイトは彼女の行為に呆れ気味になり、それぞれの意見をぼやいていた。
その時、まひろや柚葉は同じことを思っている者は他にもいることに気づく。
「僕もそう思うよ? それは学級委員だからじゃない。僕の本心だよ!」
「さすが、松井くん!」
「勇人、よく言った!」
このクラスの学級委員である勇人も本心で自分の意見を告げてきた。
その意見に対してちらほらと拍手している。
「えー……ウチは物足りないんだけどなぁ……」
それらを耳にしたエリカは不満そうに頬を膨らませていた。
まひろは苛立ちが限界に達し、机をバンッと叩く。
周囲からの視線は一気に彼女に向けられた。
「だったら、あとはエリカ達だけでやればいいじゃん! あたし達は中学最後の年なんだよ!? こういうことに時間を費やすより、楽しい思い出を作った方がいいじゃん!」
「そうだそうだ!」
「いいぞ、白鳥! もっと言ってやれ!」
「あたしはエリカが何を考えてるのか分からないから、なんとも言えないけどさ。中には嫌がりながら協力してる人がいるの! その人の立場を考えてよ!」
「まひろ、落ち着いて!」
まひろの意見に賛同する生徒達。
彼女は顔を赤くしながらヒステリックになってしまい、柚葉が落ち着かせるが、なかなか落ち着かない。
エリカは「……ふーん……」とまひろの意見を聞いている。
「まひろはウチに協力してくれないんだ?」
彼女は教卓からまひろの席に行き、そう言い放った。
書き下ろしエピソード。
2018/10/16 本投稿
※ Next 2018/10/16 19時頃更新予定。




