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32/87

#31

【作者より】


前回更新から約半年ぶりの更新です。

長らくお待たせして申し訳ありません。

 柚葉が頷いたあと、エリカは自分の指示に従ってくれることを承知してくれたと察し、彼女に「ありがと」と礼を言い、他のクラスメイトのところへ行ってしまった。

 その場に残された柚葉とまひろは彼女が他のクラスメイトと楽しそうに話しているところを横目に俯き気味に口を開こうとする。


「もう、エリカったら……」

「……わたしって、馬鹿だなぁ……」

「えっ?」

「……わたしは自分の正義を貫くことができなかった……だから、わたしは悪い」

「荒川さん……?」


 まひろはゆっくりと顔を上げ、呆れたように自分の本音を口にする柚葉。

 彼女の()には光がなくなったかのように暗く、(うつ)ろになりかけていた。


「だって、わたしがエリカの誘いに乗ったことは()()だと思ってるから」

「……違う……」

「えっ?」

「それは違うよ……! 荒川さんは悪くないもん! 木野さんも悪いことは何もしてないもん!」

「…………まひろ…………」

「あたしは荒川さんと木野さんとはつき合いがまだ浅くてよく分からないからなんとも言えないけど、いい人だと思うもん! 他のクラスの新井さんや秋桜寺くん達もみんないい人だもん!」

「まひろもいい人だよ?」

「ゆ、柚葉……」


 まひろは感情を(あらわ)にしながら柚葉の下の名前を呼びながら泣きじゃくる。

 彼女にとって、はじめて呼ばれた下の名前。

 そのことにより二人の距離が縮まったと感じられた。


「ところで、まひろはエリカと友梨奈の板挟み状態じゃない。本当はわたしと同じことを思ってるのかなって」

「……じ、実はそう思ってる。エリカが考えてることはロクなことじゃないもん!」

「そうだね。自分を見失わないで。わたしも人のことを言えないけど」

「……う……ん……」

「まひろ、泣くのは止めて」


 まひろは制服のポケットから可愛らしい絵柄のハンカチを取り出し、涙を拭き取る。

 しかし、彼女らは自分達が思っていることは同じだったということに気がつく。

 二人はエリカが友梨奈に対して何を思って動こうとしているのかどうか分からない。


「まずは友梨奈のことが心配だけど……」

「あたし達の心が痛むけど、エリカから言われたこともやらなくちゃね」

「分かってる」


 彼女らは自らの心を痛みながらエリカの行動を協力することにしたのだ。


 その時の友梨奈は悲しそうな表情を浮かべている。

 彼女にとっては教室の入口で動いているはずの時計の針がなぜか停止しているように感じていた。

 誰も友梨奈のことを心配している様子はなく、まるでこの教室にはいない者として扱われているよう――――。

 彼女はその場でただ呆然と立ち尽くしていた。

書き下ろしエピソード。


2018/10/09 本投稿


※ Next 2018/10/09 19時頃更新予定。

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