#30
エリカが自席に着いた時に友梨奈達は教室に戻ってきた。
「うわぁ!?」
「「何!?」」
友梨奈が教室の扉を開くと同時に黒板消しが彼女の頭に降ってきた。
友梨奈はもちろんのこと、一緒に入ってきた柚葉やまひろも巻き込んで、黒板消しについたチョークの粉で咳き込んでいる。
被害を受けた彼女の髪や学校の制服である紺色のブレザーが白くなっていた。
「あっ……髪と制服が真っ白になっちゃった……」
「友梨奈、大丈夫?」
「もう誰だし……」
友梨奈と柚葉は制服や頭についたチョークの粉を落とし、まひろは床に落ちている黒板消しを片付けている。
友梨奈はふと教室を見回した。
彼女のクラスメイトは友梨奈の姿を見て、大爆笑する者がいれば、じと目で眺めている者、一瞬ちらっと見ただけで視線を逸らす者がいた。
彼らには「自分には関係ない」、「自分はそのようなことはしていない」、「自分はここまでの経緯は知っているが、あえて知らないふりをしておこう」などと思っているに違いない。
友梨奈のクラスメイトのほとんどは彼女のことを心配している素振りが全く見られなかったのだ。
「あっ、カンニング女が教室に戻ってきたぜ!」
「本当だ!」
「木野 友梨奈さーん、カンニングはよくないよー!」
「カンニングは最低な行為だぞー」
「私はカンニングなんかしてないもん!」
「してない? どうやったら、テストであんな高得点を取れるんだよ!?」
「それは私の実力だもん」
「マジかよ? 実力でも限界があるんだぜ?」
「私の実力とあなたの実力を一緒にしないで! 私はカンニングなんかしてないから!」
彼女と何人かの男子生徒と言い争っている。
「荒川さんとまひろ、ちょっといい?」
友梨奈が気がついていない間に先ほどまで彼女と一緒にいた柚葉とまひろがエリカに呼ばれた。
「エリカ?」
「どうしたの?」
彼女らは彼女に問いかける。
エリカは「ちょっとねー」とニヤニヤしながら答えた。
「「ちょっとねー」って……あたし、最近、エリカの心が読めないわ……」
「わたしも。何か言いたいことがあるんでしょ? それをわたし達に教えてほしいな」
「荒川さんならそう言うかと思ってたよ。あのね、まひろは知ってるけど、荒川さんは知らないよね?」
「う、うん」
「荒川さんにも協力してほしいなぁ……木野 友梨奈をはめることに……!」
彼女の話を聞いた柚葉は「木野 友梨奈」と言ったところで何かを感じ取る。
「もしかしたら、友梨奈が本当にいじめられている」ということを――――。
「エリカ、それは人として最低な行為だよ?」
「もしかして、荒川さんは木野 友梨奈の味方になりたいの? ウチの指示に従わなかったら、木野 友梨奈と同じ扱いになるけどいいのかな?」
「……っつ……」
彼女はエリカによって自分の正義感を踏みにじられたような気がした。
彼女の指示に従わなければ、今度は自分もいじめられてしまう。
柚葉はそういうのは嫌だけど、そうするしかないのかなと考えていた。
「わたし、本当は嫌だけど……」
「荒川さん、協力してくれるの?」
エリカが彼女に問いかけると、柚葉は静かに頷いた。
前半部は「【原作版】」の「#12」の中間部と「スピンオフ」の「#13」前半部をベースに改稿。
後半部は書き下ろしエピソード。
2018/04/02 本投稿




