#29
友梨奈の「カンニング疑惑」を学年中に持ち込み、そそくさと教室に戻ったエリカ達。
彼女らは先ほどの授業で使われていた黒板をこれからの授業のためにきれいに消している女子生徒がいた。
「今日の日直は青木か……」
「青木はいろんな意味で嫌がりそうだがな」
「だよなー……って、篠田!?」
男子生徒達が彼女の姿が見当たらないと思い、周囲を見回す。
その隙をついてエリカはその女子生徒がいる教壇付近に移動していた。
「青木さん、ちょっと黒板消しを使ってもいい?」
「え!? 今から何が始まるの!?」
「いいからいいから!」
「ちょっと、止めてよー!」
彼女らのやり取りを聞いていた彼らは予想通りになってしまい、頭を抱え込んでいる。
「ほらなー」
「やっぱりなー」
「予想通りだな……」
「でも篠田は凄いよなー」
「えっ!? なんでだよ!?」
「だってさ、すぐに実行するところがさ……」
「ああ、なるほど……」
「確かに……」
しかし、そのような状況であるにも関わらず、すぐに実行してしまうエリカに感心する男子生徒達であった。
女子生徒の手には黒板消しはすでになくなっており、それらはエリカによって、友梨奈をはめるための玩具と化する。
彼女は少し開いた教室の扉に黒板消しを挟んでおき、友梨奈が教室に戻ってきた時に上からそれが降ってくるというよくマンガやテレビドラマなどで使われている場面をやろうとしているようだ。
「もう、篠田さんったら……」
女子生徒は呆れたような表情をしながら、愉しそうなエリカを見ている。
「青木さんはもちろん、他のみんなにも聞いてほしいことがあるの!」
「はいはい」
「なんだよ」
「これから何が始まるのよ!?」
彼女は教壇に立つと同時に、クラスメイトがざわめき始めた。
エリカは一体全体、何を始めるのか、クラスメイトにも聞いてほしいことがあるということはどのようなことなのか――。
「みんなはもう見たかもしれないけどさ……実はそれ、教室に戻ってきた木野さんに上から黒板消しを落とすように準備した」
「それでなんだ?」
「たとえ、黒板消しが木野さんの頭に落ちたとしても「大丈夫?」とか言わないでほしいの。なぜならば、その方が面白いじゃん!」
彼女は無邪気に満面の笑みを浮かべた。
しかし、その笑みの裏では「クラス全員で友梨奈をはめてやろう」と企てているエリカがいる。
「なんか可哀想だよ…………」
「止めようよ……」
「やりたくない? なら、あんたらも木野さんと同じ目にあうよ?」
「ひぃっ、分かったから!」
「やればいいんでしょう!?」
「うん、お願いね!」
「要するに、木野さんが教室に戻ってきたとしても無視するなりしろということか?」
「そういうことだね!」
彼女はニヤリと口角を上げる。
クラスメイトは全員、エリカの指示に従うしかなかった。
なぜならば、彼女の指示に従わない者は友梨奈と同様の扱いをされてしまうから――。
「みんな、他には質問とかはないかな? ないなら、あとはよろしくね!」
エリカは愉しそうに笑いながら、教壇から自席に戻るのであった。
書き下ろしエピソード。
2018/03/31 本投稿