#27
その騒ぎを耳にした友梨奈の担任教師である早川は他の教師に不正行為があったかどうか聞き回っている。
しかし、返ってきた答えはどの教師も彼女は「カンニングなどの不正行為をしている様子はなかった」としか答えなかった。
*
その頃、ジャスパーは事前に準備しておいた何台かの監視カメラの映像のデータをタブレット端末に映し出し、スローモーションにしてみたりして何度も確認してみたが、そのような様子は見当たらなかった。
「確かに友梨奈さんがカンニングをしているところは存在しないな……」
友梨奈がテスト勉強している映像を確認してみるが、事前にカンニングペーパーを準備している場面はない。
彼女の回答用紙はすべて自力で解かれており、彼はその噂話は偽りの話だと判断した。
「……わざとらしい……」
エリカ達が広めている友梨奈の「カンニング疑惑」は何も根拠はない。
おそらく友梨奈はショックを覚え、精神的に辛くなるのではないかとジャスパーは推測した。
「彼女はカンニングをしていないのに……」
彼が約二週間に渡って撮影していたそれらの映像が証拠を示している。
なぜ、やっていないことなのにやったことになっているのかと様々な意味合いで悩ましいのだ。
「友梨奈さんは決して黒ではない。確実に白だ」
ジャスパーや友梨奈、教師達が無実を訴えているが、エリカ達のような一部の生徒達が噂話を持ちかけたせいで、周囲はそれを鵜呑みにしてしまう。
よって、彼女らの望みは残念ながら儚く散ってしまうのではないかと――。
例の噂話によって、友梨奈の人生に歪みが生じ、本人やジャスパーの手の施しようのないところまできていると察していた。
しかし、彼が察している「嫌な予感」はまだ先かもしれないが、最悪の場合はすぐに起きてしまうかもしれない。
自分の未来は分からないが、他人の未来はさらに分からないものであるとジャスパーは思っていた。
「スピンオフ」の「#10」の最後の場面、「#11」、「#12」の最初の場面をベースに改稿。
2018/01/03 本投稿