#26
聡は友梨奈達の姿を見つけると手を振っていた。
彼女らは彼のところに駆けつける。
「あっ、秋桜寺くん。掲示板の順位表は見ることができた?」
「いや。実は凄く混んでてまだ見てないよ」
「あれ? 凪は?」
「新井はお手洗いに行ってくるって」
早紀と柚葉が聡に問いかけるが、答えは単純なもの。
彼女らは凪が戻ってくるまで、雑談をして待っていた。
*
同じ頃、エリカ達はまひろを教室に残して先に掲示板のところにいた。
なぜならば、エリカがハメようとするギリギリまで友梨奈や柚葉と一緒にいさせるための作戦だと思われる。
「みんな、今からが本番だよ! 今日の一件で学年中に噂が回るようにしよう!」
「おう!」
「了解!」
彼女らは順位表の最後である五十位から食い入るように見つめはじめた。
「篠田、なんで最後の方からなんだよ?」
「特に意味はないんだけどね」
「出たよ。篠田のどうでもいい情報」
「あんたら失礼ね」
エリカ達がいるところは友梨奈達がいるところよりかなり離れているため、互いの姿を分かってしまうことがあったとしても、声は小声で話していると周囲の会話にかき消されてしまうため、都合がいいのだ。
「おい、篠田。木野の順位が書いてあったぞ!」
「マジで!」
男子生徒が彼女を差しおいて掲示板を指差した。
*
あれから数分経過し、凪が友梨奈達のところにやってきた。
「ごめんね! お手洗いを我慢してて……」
「お手洗いに行くことは生理的欲求だからいいんじゃない?」
「まぁね……ところで、あたしをおいてみんなで順位を見に行っちゃった?」
「いや、行ってないよ。ご覧の通り凄く混んでるしさ……」
彼女以外が話している時、友梨奈は嫌な予感がした模様。
そして、その瞬間はすぐにやってきた。
「木野は今回の中間テストでカンニングしたから成績がいいんだよ」
「えっ、マジで!?」
「カンニングかよ?」
「ヤバくないか?」
「それだから、毎回のテストの成績がいいのか」
彼女のクラスメイトの男子生徒の声が耳に飛び込んでくると同時に周囲は騒然としている。
「木野さんがカンニング!?」
「ありえない……」
「嘘だよな……」
その話を聞いた同級生達はざわめき始めた。
そのせいで友梨奈は中間テストの順位を見ることができなかった。
「友梨奈ちゃんは自分の実力で頑張ったんだよね?」
「友梨奈はカンニングしてないよね?」
「友梨奈はカンニングなんてしないもんね?」
「友梨奈は頑張ったんだよな?」
「あたしは木野さんの近くだったから、カンニングしてないと信じてるよ?」
早紀、凪、柚葉、聡、まひろの順で彼女に疑問文で訊いてきた。
友梨奈は「……してない……してないもん」と答える。
こうして、彼女はエリカ達によって「カンニング疑惑」が出てしまうのであった。
2018/01/02 本投稿