#24
同じ頃、友梨奈と柚葉は音楽室に着いた頃、他のクラスに属している早紀や凪はすでに机と椅子の確保をし、弁当を広げようとしていた。
「あっ、友梨奈ちゃんと柚葉ちゃんだ!」
「お待たせ!」
「ごめん、遅くなった!」
「あたし達もついさっき音楽室に着いて机の確保して落ち着いたところだから、全然大丈夫だよ」
今日から部活が再開されるため、他のクラスの生徒や後輩達が集まっている音楽室は騒がしくなっている。
「やっと、中間テストが終わったねー」
早紀が弁当を少しずらし、机の上に突っ伏していた。
友梨奈が「そうだね」と相槌を打つ。
「あたしは回答用紙が手元に返ってきてほしくないんだけどね」
「私も凪が言っていることがよく分かるよ」
「うんうん、わたしも!」
「柚葉ちゃんがそんなことを思っているなんて意外!」
凪は椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げ、柚葉はうんうんと頷いていた。
「そういう早紀はどうなの?」
「ボクは英語と数学以外なら」
「早紀が嫌いそうな教科ばかりじゃん」
「えへへ、バレちゃった。本当に英語と数学は嫌いだよ?」
「「あははは……」」
彼女ら四人の笑いが溢れている。
話題はどの学年も先ほどまで行われていた中間テストのこと。
部活が始まる時間までの昼休みはあっという間に終わり、部員達は先ほどまでのまったりとした雰囲気から切り替えるかのように楽器の準備をし始めるのであった。
*
一方のまひろとエリカ、一部の男子生徒達は教室の隅に集まっていた。
机の上にはルーズリーフと筆記用具が置いてある。
「じゃあ、何かいい案ある?」
「……うーん……」
「なんだろうか?」
エリカの進行で彼女らの作戦会議らしきものが始まった。
まひろ以外はどのようにして友梨奈をハメてやろうか考え、発言している中、彼女は誰とも視線を合わせず、一人で黙っている。
「――――まひろは? 何かある?」
エリカは彼らから出た意見をルーズリーフに書き込みながら、まひろに話を振るが、首を振りながら「……ない……」と答えた。
「ところで、篠田。全部のテストが返ってくるのは遅くても一週間後だよな?」
「うん」
「それで上位五十位くらいが貼り出されるのはあれから数日くらい間が空くしな……」
「木野 友梨奈の毎回テストの順位は上位五十位圏内だったはずだよな?」
「多分」
「お前、詳しいじゃん!」
男子生徒達の中で友梨奈の順位を把握している者がいた模様。
その話を聞いていた彼女はメモを取りながら、「ウチ、いいこと考えた……」と呟いた。
「なんだよ?」
「あの女がいつもテスト上位圏内ならばカンニング疑惑として噂にしておけばいいんじゃない?」
「「カンニング疑惑?」」
「順位が貼り出されたら、学年全員が見る。その時に「あの人、今回の中間テストでカンニングしたんだー」って噂したらすぐに広まる!」
「なるほど!」
「さすが、篠田だな!」
エリカの考えを聞いた彼らはそれに賛同しているが、まひろの表情は冴えない。
「まひろはギリギリまであの女と荒川さんと一緒にいてもいいからね」
「あ、あたしもやるの!?」
「当然だよ。まひろがいないと意味ないじゃん! そして、荒川さんを通じてあの女の友達にも協力してもらうからね」
「……はぁ……」
彼女はまひろの肩を軽く叩き、まだ続いているエリカの意見を聞きながら呆れている。
「よし、テストの順位が貼り出された日に実践するよ!」
「「了解!」」
「分かったよ……」
彼女はまひろの表情を気にしていないようだ。
そして、エリカ達は友梨奈に心理的な刃を向けようとするのであった。
書き下ろしエピソード。
2017/12/26 本投稿
2017/12/28 次回更新時刻の変更
※ Next 2017/12/30 5時頃予約更新にて更新予定。




