#23
静まり返った教室には孤独にリスニング問題の放送が流れている。
早川は静かに教壇へ戻り、生徒達は一問目から順番に二回ずつ放送されている問題文をよく聞き取りながら答えを導き出そうとしていた。
「――――以上で、第三学年中間テストリスニング問題を終了します。残っている問題を解いてください」
そのようなアナウンスが流れ、リスニング問題が終わった。
再びカリカリとシャープペンシルを走らせる音だけが残る――。
「試験終了まであと五分だから、名前の書き忘れがないかきちんと確認してね」
早川は教壇から彼女らに告げる。
友梨奈はすべての問題を解き終わり、最終確認をし始めた。
最初に名前を書いたかどうか、英単語のスペルミスや文法はおかしくないかなどの確認をする。
その頃にはシャープペンシルを動かしている音は少しずつなくなりつつあるようだ。
彼女が腕時計を見ながら、「もうそろそろ終わるからね」と言ったやさき、テスト終了を告げるチャイムが鳴り響く。
「はーい! シャーペンを置いて、後ろから問題用紙と回答用紙を集めてきてね!」
「うぇーい! 中間テスト、終わったー!」
「えっ、待って! あともう少し!」
「だーめ。早く回収してきて!」
「はーい……」
中間テストの全日程を終え、教室内はこれまでより騒がしい。
これには友梨奈も全ての力を出し切ることができ、安堵の表情を浮かべていた。
一番後ろの席に着いている生徒がしぶしぶと問題用紙と回答用紙を回収し始める。
「これで全員分は揃ったかな? 確認するから少し待っててね」
早川は白衣のポケットから指サックを取り出し、それらが揃っているか数え始めた。
先ほどまで騒がしかった生徒達は彼女が数え終えるまでの間、静かに待っている。
「うん。どちらも揃っていたので、担当の足立先生に渡すね。ついでに帰りの学活に入るね」
「「はい」」
「みんな、二日間の中間テストお疲れ様。今回のテストは公立中学校に通う同世代は高校入試に必要な内申点に影響されるものだけど、みんなはあと三年間はエスカレーター式で進むと思うけど、私は頑張ってくれたと思ってるからね。早いところは明日辺りからテストが返ってくるはずだから、楽しみに待っていてね!」
早川は最後に「もしかしたら、みんなにとっては返ってきてほしくないと思ってるかもしれないけどね」と苦笑しながらつけ加えた。
生徒達は彼女につられて笑っている。
「今日までみんな本当にお疲れ様。今日から部活が再開される人もいるかもしれないけど、家に着いたらゆっくり休んでね」
「「はい」」
「今日はこれで終わり!」
勇人が号令をかけ、帰りの学活が終わった。
*
生徒達は帰路に着くなり、部活動が行われる部室に行くなりと教室に残っている生徒は疎らになっている。
まひろは通学鞄に荷物をまとめ、教室から出ようとした時、エリカに呼び止められた。
「まひろ?」
「ん?」
「テストが終わったから例のアレをやるよ」
「エリカ、本当にやるの?」
「うん」
彼女は「止めようよ」と止めようとしたが、一方の彼女は「止めない」と答え、首を縦に振らない。
「これ以上やったら、木野さんが可哀想だよ……」
「そう思ってるのはまひろだけ。そのうち、みんなウチの味方になってくれるはず……」
「エリカったら……」
まひろはエリカが何を考えているのか分からず、頭を抱えてしまうのであった。
書き下ろしエピソード。
2017/12/19 本投稿