#21
カリカリ……と紙に文字を書く音と試験監督の教師が不正行為をしていないかを見ながら歩いている音しかしない教室――。
友梨奈はもちろんのこと、全校生徒が今まで勉強してきたものを回答用紙に書き込んでいく。
問題を解いている途中で解き方を忘れ焦りを覚えている者や、答えが分からず悶絶している者がいる中、彼女は分かる問題から回答用紙を埋めていった。
「試験終了まであと五分前だぞ! 回答用紙にきちんと名前を書いてあるか確認しておけよ!」
試験監督の教師が教壇から生徒達に言う。
残り五分という長いようで短い制限時間――。
彼女らは分からない問題は勘に頼って答えたり、最終確認を行ったりしている。
そして、一限目のテスト終了を告げるチャイムが孤独に鳴り響いた。
「止め! 問題用紙と回答用紙を後ろから集めてこい」
生徒達は問題用紙と回答用紙を後ろから集めていく。
「お前ら、二限目と三限目のテストも頑張れよ」
「「はい!」」
彼女らは息をつく暇もなく、二限目、三限目のテストをこなし、一日目は何事もなく終了した。
*
ようやく終わったテスト一日目。
他のクラスメイトは翌日のテストに備えて帰路についている中、友梨奈と柚葉、まひろの三人は教壇付近に集まっていた。
「テスト一日目が終わったね……」
友梨奈がこう言うと、柚葉達は「うん」「そうだね」と相槌を打つ。
「そういえば、今日のできばえはどう? あたしは理科があまりできなかったけど……」
まひろが柚葉と友梨奈に問いかけた。
彼女らは少し俯き加減になり、はぁ……とため息をつく。
「数学がヤバい……」
「わたしも……」
二人がこう答え、暗い表情をしている中、彼女は「ん?」と首を傾げていた。
「あとで分からないところとか教えようか?」
「えっ!? いいの?」
「白鳥さんは数学が得意なの?」
「実はあたし、理数系は得意なんだなー。でも、今回は理科の調子が上がらなくてね……」
「数学が得意なんて、ちょっと意外!」
「理系女子って感じでかっこいいね!」
「ふ、二人とも、あたしの理科の件については触れてくれないんだね……」
彼女らの表情が晴れた時、まひろの数学が得意という話題の方が大きく、理科ができなかったという話しには触れてくれなかったので、少し不満そうな模様。
彼女は「まぁいいか」と心中で切り替えた。
「ところで、テストはあともう一日あるよ」
「二日目は英語と社会だよね」
友梨奈と柚葉は次の話題に移ろうとしている。
まひろはいつの間にかに進んでいる話の状況を探っていた。
「あたし、英語は苦手だから、リスニングでしっかり点数を取らないとならないから辛いわ……」
「毎回思うけど、リスニング問題が難しくないといいよねー」
「だよねー」
彼女はなんとか話しについていけたので、安堵の表情を浮かべる。
「社会は公民がメインだけど、地理と歴史も出るっぽいから、ちょっと厄介だね」
「そうだった! 社会は全分野だったことをすっかり忘れてた!」
「柚葉はおっちょこちょいだね」
「意外とね!」
「それじゃあ、また明日も頑張りますか?」
「「おーっ!」」
三人は通学鞄に筆記用具や本日のテストで使った教科書や問題集などをしまい、教室をあとにした。
書き下ろしエピソード。
2017/12/12 本投稿




