#20
中間テスト前日――。
友梨奈はさすがにテスト前日まで職員室に行くかどうか悩んでいた。
なぜならば、最悪なことに数学のテスト対策プリントを紛失してしまったから――。
「こんな時まで職員室に行くとなると勇気がいるよね……テスト前日だから、答えを隠しながら家でラストスパートをかけるしかないなあ……」
彼女はひたすら悩んだ末、筆記用具などを通学鞄にしまう。
友梨奈は職員室には寄らずにまっすぐ自宅に戻った。
その日はチョコレートを摘まず、自室に籠もって最後の追い込みをしている彼女。
夕食や入浴、トイレ以外はずっと缶詰状態となっている。
「あっ、十五分過ぎちゃった……もう寝なきゃ……」
友梨奈は時計をチラッと見ると、十一時十五分を回っていた。
彼女は椅子から立ち上がり、軽く身体を動かす。
友梨奈は通学鞄に一日目のテスト教科である理科と数学、国語の三教科分の教科書や問題集、テスト対策としてまとめたルーズリーフバインダー、筆記用具を入れた。
そして、洗面所に行き、彼女は歯を磨き眠りにつく――――。
*
そして、迎えたテスト本番。
誰もいない三年六組の教室にはジャスパーの姿があった。
彼は友梨奈のクラス全員の様子を監視するべく、瞬間移動を使い、普段より何台か多めに監視カメラを設置している。
「これだけ多くの監視カメラが設置してあるのだから、いくら不正行為をしたとしても見逃しは多少はなくなるだろう」
彼が通常よりも多目に設置した監視カメラ。
本日からの二日間は友梨奈を監視するためではなく、クラス全員を監視するものとして機能することとなる。
すべての監視カメラの設置を終えたジャスパーは瞬間移動で診察室に戻った。
*
あれから数時間後――。
「「おはよう!」」
「今日からテストだねー」
「嫌だけど後戻りはできないしね」
友梨奈達が登校し始め、最終確認をしたり、気晴らしにおしゃべりをしたりしている。
「柚葉、今回のテストは自信ある?」
「そういう友梨奈はどう?」
「数学がヤバいかも……」
「だよねー「平方根」がメインみたいだからね……」
柚葉と友梨奈は話しながら最終確認をしているうちに徐々にそれぞれの勉強ペースに入っていった。
朝の学活が終わり、試験監督の教師が教室に駆けつけてきた。
その教師が「教科書やノートは鞄の中にきちんとしまったか?」と言いながら、問題用紙と回答予定を配布していく。
一限目が始まるチャイムと同時に「では、始め!」と指示が入り、生徒達はシャープペンシルを走らせる――。
こうして、彼女らは三年生に進級してはじめての中間テストが始まったのであった。
2017/11/24 本投稿