#13
同じ頃、柚葉とまひろは彼女を探しに校内をあちこち探し回っていた。
「友梨奈ー!」
「木野さーん!」
彼女らは友梨奈の名前を呼ぶ。
しかし、彼女の姿や物音を立てる気配はない。
柚葉達は再度呼ぶが、辺りは静まり返り、教室を一周しても友梨奈からの反応はなかった。
「……ここにはいなそうだね……」
「音楽室は?」
「行ってみよう!」
「うん!」
「まずは空き教室とかを回りながら行こう!」
「そうだね」
彼女らは空き教室を回り、音楽室や美術室がある特別教室棟へ向かった。
*
一方、友梨奈達がいなくなったあとの教室では彼女らのクラスに属する女子生徒達が友梨奈の机の中の掃除をしたり、画鋲を片付けたりしていた。
「男子ったら……」
「なんでこんなことをするのかなぁ?」
「きっと、誰かが友梨奈ちゃんをいじめようと持ちかけたんじゃない?」
「もう、松井くんからもなんか言ってやってよ!」
彼女らは勇人に鋭い視線を向けられる。
彼も「僕からも言うようにするけど、聞いてくれるかな……」と少し不安げに教室の窓際に集まっている主犯格の男子生徒を指さしながら、女子生徒達に告げた。
「あははは……これ、面白いわ」
エリカが机の上に脚を組んで座り、手を叩きながら言う。
「ところで篠田」
「ん?」
「白鳥もいなくなっちゃったけど、そのまま放っておいていいのか?」
男子生徒が彼女に問いかけた。
エリカの答えは「まぁ、あの子はそのうち帰ってくるでしょう」と適当に答えを口にする。
現段階では教室にまひろの姿はないのだから――。
「最近、白鳥は荒川とかと一緒にいるよな?」
「それは言えてる。ウチはまひろもだけど、荒川さんやクラス全員を巻き込んで木野 友梨奈をハメることしか考えてないから」
「お前、容赦ないな」
「それくらいしないと、ウチの気が晴れないし」
「いつ実行するんだよ?」
「テストが終わったあとにでもやる? その順位が貼り出される頃でもいいし……」
「そうだな……」
彼らが話している時に、まひろと柚葉が「結局いなかったねぇー」と言いながら教室に戻ってきた。
「友梨奈ちゃん、いなかったの?」
「残念ながら……」
「でも、みんなで木野さんが戻ってくるのを待っていれば、きっと戻ってくると思うよ?」
「そうだね」
「おそらく戻ってくるよね。きっと」
女子生徒達を安心させようとする彼女ら。
その時、教室に「荒川と白鳥はいる?」と男子生徒の声が耳に飛び込んできた。
「「しゅ、秋桜寺くん!?」」
クラス全員が声がした方へ視線を向ける。
そこにいたのは他のクラスに属している聡はもちろんのこと、凪と早紀の姿があった。
書きおろしエピソード。
2017/10/10 本投稿




