55
アイコの家に行って10日ぐらい。
あと1週間で11月も終わり。
なんだか今年はとっても寒い。
寒いのはそんなに苦手じゃない。
むしろ得意な方っていっていいかもしれない。
それでも今年の冬の寒さはなんだかきつい。
何だか気を抜いたら。
あっという間に風邪をひいちゃいそうなぐらいに。
私はそんなことをカナに言った。
いつもの帰り道。
夕方の時間。
だんだん寒くなっていく時間。
早く家でぬくもりたいな。
そんなことを考えながら歩く。
空を見上げると雪が降ってきそう。
降ってほしいって思った。
目を覚ますと銀世界。
そんな朝に何だか憧れる。
カナも寒そうな感じ。
あんまり寒いの好きじゃないって言ってたし。
でもカナは言う。
「そうかな?」
吐く息は白い。
いかにも冬って感じ。
「いつもと変わらないって思うけど」
きっとカナの言うとおり。
ニュースとかでも言ってないから。
今年はいつもより寒い。
みたいな言葉。
「寒さに弱くなっちゃたかな……」
言いながら思う。
きっとそうだって。
今は何だか心が弱くなってると思う。
「わたしが温めてあげるっ!」
言いながらぎゅって私の手を握る。
私もカナも手袋をしてた。
でもすぐに温かさが伝わってきた。
「ありがとう。全然違うね」
心も、体も、温まる感じ。
私が弱くなったのは。
きっとこの暖かさを知ったから。
「わたしもとっても温かいよっ!」
とっても嬉しそうな表情。
カナのそんな顔。
見てるとなんだか幸せな気分になる。
カナはどんな時も。
私の隣りにいて。
私のことを守ってくれるから。
でも、それじゃ駄目だって分かった。
きっとまた。
私のせいでカナが誰かを傷つけるかもしれない。
誰かに傷ついてほしくない。
誰かを傷つけてほしくない。
だから私は強くなって。
そしてカナに伝えないといけない。
あの時からずっと考えてること。
でも、どうすればいいのか思いついてない。
「そういえばね」
私は思った。
「カナって何か欲しいものはあるの?」
私はカナにもらってばっかり。
暖かさとか、安心とか。
「欲しいもの?」
「うん」
だから私もカナにあげたいって思った。
「そうだね……」
考えるカナ。
なんだかとっても楽しそう。
「いっちゃんからもらえるものなら」
そしてそのまま私に言う。
「なんでも嬉しいよっ!」
それは私が考えてたのと一緒。
お小遣いとかで何かをプレゼントをする。
それはできる。
したいって思う。
でも、本当にしなくちゃいけないこと。
カナにしてあげなくちゃいけないこと。
それはそうじゃないって分かってる。
「私も同じ」
「同じ?」
「カナからもらったら何でも嬉しい」
言いながら私はぎゅって強く握る。
何だか考えることが多い。
自業自得なんだよね。
私は思う。
私がカナにしてあげれること。
それって何だろうって。
……
…………
………………
「本当にどうすればいいんだろう……」
思わず愚痴っぽくなる言葉。
アイコと電話してる。
「何だか本気で悩んでるわね」
聞こえるアイコの声。
前は何だか変な感じがした。
でも今はもう慣れてしまった。
電話で話すのが当たり前になってしまった。
2日に1日は電話してるし。
ナツミとは3日に1日。
くるるは週に1日ぐらい。
何だか毎日電話してる。
たくさん電話しても必要なお金は同じ。
便利な世の中。
そうじゃなかったらきっと怒られてる。
「本気で悩むよ……」
私のせいでアイコがあんなことになったんだし。
でもアイコは自分が悪いっていう。
きっと本当にそう思ってる。
だからこそ心苦しいって思った。
「カナを安心させるにはどうしたらいいのかな?」
「そもそもアタシはそのプランがどうかって思うんだけど」
「そのプラン?」
「カナを安心させたら全部が解決プラン」
「そうかな?」
私は言われて考える。
でもやっぱりそうするのがいいって思った。
だってそれ以外に思いつかないし。
「カナがあんなことをしたのは私を守るためだし……」
「それもあるわ。それは認める」
「だったら……」
「でもそれだけじゃないって思う」
「……それだけじゃない?」
他に何があるんだろう?
カナは私を守ることが使命だって言ってくれた。
だからずっとそばにいてくれるって言ってくれた。
「他に何があるの?」
「それは……分からないけど……」
「それじゃやっぱり安心させるのがいいって思うけど」
「……分かったわ」
何だかやり投げな声。
「でもそうだとして、どうすればいいのか分からないんでしょ」
痛いところを言われた。
「アイコはいいの?」
「ん?」
「このままで」
「あー。そうね」
私は嫌だって思う。
やっぱり学校でも話したい。
カナとも仲良くしてほしい。
それはナツミも一緒。
ナツミも学校で話せたら。
きっと、ずっと、もっと。
楽しい学校になるって思う。
「何だかもどかしいっていうか、変な気分はあるわ」
「それじゃあ……」
「でもこうやって話せるだけでも満足」
アイコの言葉。
喜んでいいのか。
喜んじゃいけないのか。
私には分からなかった。
「でも……」
だから私は考える。
何かいい方法はないかって。
カナを安心させる。
私の味方はいるって分かってもらう。
アイコみたいに。
じゃアイコはなんで信じれた?
それは秘密を知っても友達でいてくれたから。
だからそれをカナに……。
「そうだっ!」
何だかこれっていうのが思いついた。
何で今まで悩んでたんだろう。
「いきなり大きな声を出してどうしたのよ……」
「思いついたの!」
「何を?」
「カナを安心させる方法!」
「……とりあえず聞いてみよう」
何だか変な言い方。
「でもとりあえず落ち着いてからね」
「分かった」
私はわざとらしい深呼吸をする。
そして気持ちを落ち着けて言った。
「秘密を知っても平気だって言ってもらうの」
「誰が誰に?」
「アイコがカナに」
そうすればカナも分かってくれる。
そう思った。
でも……
「却下」
アイコはすぐに言った。
「それは無理。無理っていうか嫌」
「……何で?」
「怖いから」
はっきりとした言葉だった。
「理由は他にもあるけど……」
ちょっと間があく。
「1つは目、今のカナとできるだけ向き合いたくないってこと」
「うん」
「2つは目、アタシは1度あんたを拒絶した。説得力ない」
「……うん」
「3つ目、それだけじゃとても解決しそうにないってこと」
「……分かった」
確かに難しいことだって思った。
あんなに怯えてたんだし……。
私が悪かったなって思う。
「あんまり焦らなくてもいいって思うわ」
「そうかな?」
「さっきも言ったけどこうやって話せるだけでも十分にし……」
「し?」
「う、嬉しいからっ!」
「私もだよ」
「アタシと電話できることを感謝しなさいよっ!」
なぜか無意味に偉そうな感じ。
でもこんな感じのアイコは好き。
「うん。感謝してる」
だからこそってやっぱり思う。
「本当にありがとう」
「本当にお礼言うんじゃないわよっ!」
「理不尽に怒らないでよ」
私は言いながら思わず笑ってしまった。
何だかとっても楽しい気分。
私は何となく外を見る。
外は雨が降ってる。
雪になるような雰囲気は全然なかった。
……
…………
………………
思わず出るあくび。
私を見てカナは言った。
「寝不足?」
「うん。そうなんだ」
「いっちゃんって割りと夜更かしするよね」
「そうだね。星見たり本を読んだり……」
「いっちゃんっぽいって思う」
「朝起きれないまでがワンセットだけどね」
「それもいっちゃんっぽいっ!」
「私って本当に駄目人間って思われてそう……」
「大丈夫だよっ!」
カナは言う。
とっても嬉しそうに。
「そういうのも含めて好きだからっ!」
フォローになってるような、なってないような。
「でも昨日は何で夜更かししたの?」
「本を読んでたんだ」
「そうなんだねっ!」
「昨日は天気悪かったからね」
「そうだねっ!」
きっとカナも夜空を見上げてる。
今日はどんな感じなんだろうって。
だから天体観測で寝不足じゃないってすぐに分かったんだって思う。
でも、私が本を読んで寝不足なのは嘘。
本当はずっと考え事をしてた。
秘密を誰かに話しても大丈夫。
そう証明するのがきっと1番の近道。
寝ないで考えた答え。
でもそれには高いハードルがある。
それは私が誰かに秘密を話さないといけないってこと。
私にそれができるの?
自分が地球人じゃないって話すって。
……考えただけでも怖い。
でもその怖さを克服しないと。
絶対にカナを安心させることなんて無理。
だから。
だから絶対に誰かに話さないといけない。
それは分かってる。
でも誰に話せばいいか。
それはまだ分からない。
「でも今日も寒いね」
「うん。寒いね」
「早く温かくなるといいのにね」
「気が早いよ……」
まだ12月になりそうなぐらい。
寒さの本番は1月ぐらい。
でも早く温かくなって欲しいなって思う。
そして温かくなる前に。
また学校でアイコと話せるようになりたいって思った。
……
…………
………………
「おはようっ! いつきっ!」
教室に入ると亜里沙に声をかけられた。
これは私に用事がある感じ。
そんな時は勢いが凄いからすぐに分かる。
「おはよう」
きっとまた曲を聞いてとかそういうのだって思う。
正直、何だか亜里沙のレベルが高いからそろそろ役に立たないって思うんだけど……。
でもそうじゃなかった。
「いつきって本を読むの好きでしょ?」
「うん。好きだけど」
「おすすめの小説教えてっ!」
「いいけど……」
亜里沙はあんまり小説を読まなさそうだって思った。
今まででそういう姿を一回も見たことない。
でも、そういう人が読書に興味を持ってくれるのは嬉しい。
「どんなのがいいの?」
「どんなのがいいかな?」
「そこからなんだ……」
「作曲は良くなったけど作詞が駄目って言われるんだ」
「だから小説を読むの?」
「そうっ!」
いつものニカッとした笑顔。
「やっぱりいい歌詞をかけるようになりたいしねっ!」
「それなら……」
私は5冊ぐらいのおすすめの本を教えた。
ジャンルはできるだけバラけさせて。
亜里沙がどんなのを気にいるのか分からなかったから。
でもこういうのって楽しい。
「ありがとうっ!」
「図書室に置いてるのだから」
「昼休みに行ってみるっ!」
「うん」
忘れないようにか手にペンで本の名前を書いてる。
「本当にありがとうっ!」
言って自分の席へ戻っていく。
そしていつもの仲がいい人とお喋りを再開。
私は亜里沙とそこそこ話す方だって思う。
でも秘密を話せるかって言うと……。
難しいって思った。
どうしても否定される想像しかできない。
私は自分の机に鞄を置く。
そしてゆっくりと教室を見回す。
教室にはだいたの人がいた。
お喋りをしたり、本を読んだり、勉強したり、眠ったり。
眠ってるのはいつもの人。
……誰になら話せる?
そう考えながら1人、1人の顔を見ていく。
でも、誰の顔を見ても不安しかない。
言ったら全てが壊れてしまいそう。
そんなことばっかり考えてしまう。
秘密を言えないなら。
誰も信じることができないなら。
やっぱり私は成長してないってことになる。
カナを安心させれないってことになる。
誰かに……誰かに言わないと……。
そんなことで頭がいっぱいになってる。
ナツミになら……。
ナツミになら言えるかもしれない。
でもって思う。
もしナツミに言って。
否定されたら。
本当にどうしようもなくなるって思った。
だからナツミには言いたくない。
頭の中はごちゃごちゃのぐちゃぐちゃになってた。
やっぱり私は……。
そんな気弱な考えで頭がいっぱいになる。
そんな時だった。
「いっくんっ! おはようございますっ!」
扉を開けてとたとたとたまこが入ってきた。
いつもより遅い登校。
走ってきたせいかも。
うっすらと汗をかいてる。
それにちょっと疲れてるみたい。
でも凄く楽しそうに見えた。
……そうだ。
私は自然に思えた。
きっとたまこになら。
たまこになら言えるって。
何だか真っ暗な中に小さな光が見えた気がした。
たまこなら絶対にすぐに否定しない。
頑張って考えてくれる。
そう思えた。
「どうかしましたか?」
きっと思わず見てしまってたんだろうって思う。
たまこの顔を。
「もしかしてご飯粒ついてますっ!」
慌てて自分の顔をさわりだす。
何もついてないのに。
そんな仕草がとっても可愛かった。
そして凄く安心した。
「ううん。何でもないよ」
私は言った。
「おはよう。たまこ」
「おはようございますっ!」
そして私は決めた。
たまこに告白しようって。
そしてカナに教えようって。




