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ある日の出来事。
休み時間にのんびりとしてると美香が何か読んでるのが見えた。
私の印象では美香はあんまり読書とかしないイメージ。
それに美香の表情がとっても真剣そうで何だか気になった。
だから思わずじっとした感じで見てたのかもしれない。
「何か用でもあるのか?」
少し不機嫌そうな感じで美香は言った。
美香は髪の毛もそめてないし、運動してるからか短めにしてる。
でも目つきがきつい感じとかはやっぱりそのまま。
口調も強めな感じ。
変えようと思って変えれるわけじゃないし。
そんな美香から不機嫌に見られたら、睨まれてると勘違いしてしまう。
そして前ならそれを怖がって何か誤魔化したりしてやりすごしてたって思う。
でも今は違う。
色々あってそれなりに仲良くなってると思うから。
「用っていうか……」
私は立ち上がって美香の席まで移動した。
読書の邪魔になるかな?
そう思って見てるだけだったけど、今はあっちから話しかけてくれたし。
何を読んでるかはとっても気になってた。
「何を読んでるのか気になって……」
「ああ……これか……」
言いながら美香は私に読んでたものを見せる。
それは本というより冊子のようなもの。
すぐに手作りだって分かった。
印刷して束ねて穴を開けて紐で閉じる。
なかなか大変な作業で作られたもの。
「部活で使ってるもの?」
クラスの出し物でも似たようなものを作ってる。
占いの時に言う台詞とかそういうの。
でもこんなにしっかりしてなかった。
「そう」
美香は冊子を机の上に置いた。
演劇部 文化祭 台本
って書いてある。
私はそういうのを見るのは初めてだったから、何だか凄いなって思った。
「台詞とか覚えてるの?」
「そんなところ」
何だかとっても不機嫌そうな言い方だった。
そういえば夏休みに合宿してたような……
それとは別のやつなのかな?
そう思ってると……
「あのあほがいきなり終わりを変えたいとか言いやがって……」
言いながらため息をつく。
何だか本当に大変そうな感じだった。
「だから急いで覚えてるとこ」
「文化祭用?」
「そう。内容は見せれないけど」
「当日の楽しみにしとくね」
どんな演劇になるんだろう。
美香はどんな役で、どんな感じになるのかな?
演劇ってほとんど見たことがない。
今まであんまり縁がなかった。
だからこそ今度の文化祭の演劇はとっても楽しみ。
もしかしたら、1番かもしれないぐらいに。
「わざわざ見にこなくていいのに」
ちょっと照れた感じの言い方。
同じ不機嫌そうでも色々あるって最近は分かってきた。
今のはいい感じの不機嫌そう。
「そんなに面白い物でもないと思うけど」
「自信ないの?」
「どうだろうな……」
言いながら美香は真剣に考える。
「悔しいって言うか、変な感じだけど……」
美香は台本に目を落とす。
私もつられて視線を移動させた。
机の上にある大きくもない、小さくもない、ただの冊子。
あれから舞台の世界が産まれるんだなって思うと、何だか凄いものにみえた。
「脚本は面白いって思う。凄く」
「そうなんだね」
美香が素直にそう言うのは、よっぽど面白いんだろうって思った。
「演劇って何かを題材にしてすることが多いんだっけ?」
って言うけど、私はシェイクスピアぐらいしか知らない。
シェイクスピアにしても読んだことも、見たこともないし……。
「そういうのが一般的かな。アタシもよく知らないけど」
「これもそうなの?」
私に質問に美香は首をふる。
「これはオリジナル。あいつが書いたやつ」
「そうなんだ……」
美香があいつとかあのあほとか雑に呼ぶ人。
美香を演劇部に誘ってくれた人。
顔や声は何となく思い出せる。
でも名前はまだ知らない、あの人。
あの人が書いたんだ……。
あの人の世界がこの中にあるんだ……。
「オリジナルって凄いね」
本当に感心してしまう。
急にどんな内容か気になってしまった。
でも当日まで我慢しないと……。
「おかげでこっちは苦労が多いんだけどな」
「そうなの?」
「オリジナルって自分達で考えなきゃいけないことが多いし」
「演技の仕方とか?」
「そんなところ。アタシはよく分からないから自己流だし」
「この台詞も早く覚えないとね」
「昨日の夜に送ってきて今日の放課後には練習したいってさ」
「……本当に急なんだね……」
文化祭まであんまり時間もない。
本当に頑張って練習しないといけないんだなって分かる。
「大変で嫌になったりしないの?」
「大変といえば大変」
美香は言った。
でも表情は凄く嬉しそう。
「でもそれが楽しい……って思う」
その言葉が、その表情が私は嬉しかった。
私も大変なのが楽しいって部活を始めて分かったから。
だから自然と私も美香と同じような表情になってる。
「美香も同じなんだね」
「……何でそんなに嬉しそうなんだよ。きもいな」
また不機嫌そうな表情になって美香は言う。
それに何だか酷いことも言われた気がする。
でも私は全然気にならなかった。
……
…………
………………
「…………」
真剣な表情でアイコが私の小説を読んでる。
今回はどんな駄目出しが出るんだろう……。
私は心臓がどきどきしてた。
見せるのは慣れた。もう平気。
そんな風に言えるようになれなら格好いいのになって思う。
でも何度見せてもやっぱり緊張する。
「どうかな?」
読み終えたみたいなアイコに私はたずねる。
部室にはアイコと2人だけ。
カナは部長として文化祭の話し合いみたいなのに参加してる。
「……まぁいいんじゃない」
ノートパソコンのファイルを開いたままアイコは言った。
「かなり良くなってると思うわ」
「本当っ!」
「うん。それにこれ以上伸ばしたらレイアウトの時間が厳しいしね」
「よかった」
私はほっとした気分になった。
去年みたいな大変さはあんまりなかった。
その分だけ修正する苦労があった。
書いては駄目出しされて、書き直す。
の繰り返し。
途中で嫌にならなかったといえば嘘になる。
でもアイコの指摘は的確で、アドバイスはしっかりしてた。
それに少しずつ良くなってるのは自分でも分かる。
それが楽しかったから、最後までやり通すことができた。
「アイコ、ありがとう」
「べ、別に大したことはしてないわよ」
照れながらアイコは言う。
良い小説が書けたのはアイコのおかげ。
それはとってもお礼を言いたいって思ってた。
「アイコの漫画はどうなの?」
「ほとんど出来てるわ。あとは仕上げだけ」
「漫画って色々作業があって大変だね」
大変なら私も手伝いって言った。
ベタ塗り?みたいなのなら手伝えそうだって思えたから。
でも……
「カナはいいけどいっきはちょっと……」
本気で困ったような表情で言われてしまったことを思い出す。
遠慮とかで言ってるわけじゃないってすぐに分かった。
「そうね。大変といえば大変」
アイコは言う。
やっぱりその表情は嬉しそう。
「でも大変なのが楽しんでしょ」
「そうそう。よく分かってるじゃない」
大変なのが楽しい。
凄くいい言葉だって思う。
「でもいっきの読んでると小説もいいかなって思うのよね」
「小説書きたくなったのっ!」
思わず大きな声を出してしまった。
思わず身を乗り出してしまった。
「ちょっ……近いって……」
「ご……ごめん」
ちょっと興奮しすぎちゃった。
私は離れて改めてアイコを見る。
「でもなんで小説もいいかなって思うようになったの?」
「やっぱり媒体でかけるものって違うんだって思ったんだ」
「かけるものが違う?」
「どっちもそれぞれの良さがあるってこと」
なんだか深いことを言いそうだった。
でもアイコはざっくりとしたことを言う。
今はそれが本題じゃないみたい。
「何度も修正ができるっていうのはやっぱりいいことだって思うしね」
「漫画は書き終えたあとに修正って難しそうだもんね」
「できなくないだろうけど……やりたくはないわね」
「でもアイコが小説を書くならぜひ読んでみたいなっ!」
「……まぁ気が向いたら書くわ」
「絶対に書いてねっ!」
アイコが書く小説。
きっととっても繊細で綺麗なんだろうなって思う。
ぜひ読みたいって思った。
「分かったから……書いたら読んでもらうわ……」
「ありがとうっ!」
がちゃりって音がした。
カナが帰ってきたみたい。
「ただいま」
「おかえり。どうだった?」
「退屈だった。連絡事項が中心だったしね」
言いながらカナは椅子に座る。
なんだかちょっと機嫌が悪い?
そんな感じがした。
集まりがよっぽど退屈だったんだろうって思う。
「小説完成したから読んで欲しいな」
私はノートパソコンの画面を見せる。
「ありがとうっ! これで一息つけるね」
「そうだねっ!」
ほっとした気分になる。
後はデータを整えてにしてアイコに渡すだけ。
今年も漫画研究部と一緒に印刷は申し込むことになってる。
そのアイコはカナが帰ってきてからは自分の作業をしている。
……もっと2人も仲良くしてくれればいいのに。
私はそう思うけど、やっぱり難しいのかなとも思った。
……
…………
………………
ある日の出来事。
「図書委員では何をするんですか?」
私は図書室の本を借りながら言った。
本を返して、借りにきていた。
今日は杉森先生が貸し借りの受付をしてる。
図書委員の人達は奥の部屋で何か作業をしてるみたいだった。
なんだか1年生が多い気がする……。
「絵本の紹介をするみたいね」
嬉しそうに杉森先生が言った。
「絵本の紹介?」
「うん。何かしたいことはないかなって聞いたら……」
1年生が言ったみたい。
大人も読んで楽しめる絵本を紹介したいって。
絵本ならその場で読めるし、家族連れでも楽しめる。
本と一緒に紹介ポスターも書いてみんなに読んで欲しい。
「それであそこでポスターを書いてるんですね」
なんだか楽しそうだって思った。
それに絵本は面白そうだけど、何だかよく分からない世界。
そうやって紹介してくれれば興味を持つ人もたくさんいるだろうって思う。
「そう。だから今日は私が変わってあげてるの」
言いながら作業をしてる1年生を見る。
気がついた1年生が嬉しそうに手を振ってる。
本当に楽しそうに作業してる。
きっと言い出し物になりそうだって分かった。
「時間があったらぜひ来てね」
「はいっ!」
……
…………
………………
ある日の出来事。
もうちょっと……もうちょっと……。
時間は少しずつ迫っている。
今日も放課後は残って作業してる。
みんな黙々と何かをやっていた。
私とたまこと藍姫の3人でやってる衣装作り。
みんな部活がある。
でも合間をぬって集まって少しずつ進めてきた。
時間的に今日中に作り上げたい。
そんな感じ。
「…………」
「…………」
「切れたっ!」
私は言った。
最後の布が綺麗に切れた。
最初はただ切るだけでも苦労してた。
でも今はゆっくりなら綺麗にまっすぐ切れるようになれた。
「ありがとう。あとはリボンをつけて……」
藍姫が作業をしていく。
漫画研究部の作業も大変なんだろうって思う。
でもいつも頑張って1番作業してくれた。
「できました……」
たまこが自分の分を終えたみたい。
あとは藍姫だけ……。
もう少し、頑張れ、頑張れ……。
って感じで私とたまこは無言で応援する。
藍姫は真剣な表情で作業をすすめて……
「終わった……」
ふぅと息を吐きながら藍姫は言った。
なんだか達成感っていうより安心感が大きい感じだった。
「何とか間に合ったね」
言いながら藍姫はにっこりと微笑む。
「漫画研究部の方はもうちょっとあるんだけどね」
「本当に大変なんだね」
「本当です。こっちの方は別の人に頼んでも……」
「ううん」
私とたまこの言葉に首を振る。
「やりたくてやったことだからね」
「そうなんですね」
「何だか分かる気もする」
きっとアイコに影響を受けたんだろうって思う。
アイコを見て自分も頑張ろうって思ったんだって思う。
自分のできることを、少しずつ。
「衣装できたみたいねっ!」
委員長が走ってやってきた。
委員長の顔もなんだか凄く疲れてる感じ。
「忙しいところ本当にありがとうっ!」
言いながら大げさに頭を下げる。
それはちょっと予想外の行動。
だから私達3人は慌ててしまった。
でも委員長はそんなことは気にしないって感じだった。
お礼を言いたかったから言った。
それだけって感じ。
「今いる人達に合わせたいからもっていっていいかな?」
「うん。いいよ」
藍姫が言った。
すっかりこの3人のリーダーみたいな感じになってる。
「ありがとう」
言って衣装をみんなに渡していく委員長。
「このリボン可愛いねっ!」
「シンプルだけどなんかいいかも」
「アタシそっちの色がいいな」
みんな作業を中断して衣装を着ていく。
とっても似合っていて、可愛い。
楽しそうに着せあってるのを見るのは嬉しい。
「なんだか凄くいい感じですね」
嬉しそうにたまこは言う。
「そうだね」
私も同じだった。
ほとんどお手伝いみたいなことしかできなかった。
それでも嬉しいって思えた。
「みんなで写真とろうよ!」
誰かがそんなことを言った。
その言葉を合図にみんなが真ん中に集まった。
私ももちろん、喜んで。
「取るよっ!」
スマートフォンがこちらをむく。
カメラマンは偶然通りかかった隣のクラスの人に頼んだみたい。
快く引き受けてくれた。
委員長はもちろん真ん中。
その周りを衣装を着た人達。
衣装係の私達は少しはしっこにいた。
「ハイっ! チーズっ!」
フラッシュがまぶしかった。
とても明るく、綺麗に見えた。
そのまま何枚か写真撮影をした。
写真を撮られるのはあんまり好きじゃない。
できたら避けたいって思うぐらい。
でも今日は違った。
みんなで記念写真をとれてよかったって思う。
「ありがとう……。みんな……本当にありがとう……」
感極まったのか委員長がぼろぼろと泣き始めた。
「まだ早いって」
「本番まで突っ走ろうっ!」
みんなが委員長に声をかける。
本当に良いクラスだなって思った。
このクラスで文化祭の準備を頑張れたのが嬉しかった。
文化祭までもうすぐ。
楽しい文化祭になるなって確信できた。




