表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/156

12

私は長い時間泣いてたと思う。

でも涙がなくなると、とてもすっきりした気分になった。

外の景色が来たときよりとても綺麗に見える。

きっと心のなかにあった不安がとても小さくなったらだと思う。

全部、カナさんのおかげ。


「今日はありがとう」


並んで歩くカナさんに言った。


「おかげで不安な気持ちがとても小さくなった」


「いつきさんのちからになれて、とっても嬉しいっ!」


カナさんはにっこりと微笑んで言った。


「でもちょっと恥ずかしかったかな」


そんなカナさんに私は言った。

カナさんは少し不思議そうな表情。


「恥ずかしかった?」


「うん」


まさか人前であんなに泣いてしまうとは思わなかった。

でもカナさんだったから、あんなに自分の弱いところを見せれたんだと思う。


「わたしは嬉しかった。いつきさんの本当の心の中を知ることができて」


「それは私も嬉しい」


ずっとずっとみんなに秘密にしてきたこと。

誰かに話したくて、相談したくて、告白したくて……

でもできないでいたこと。


「カナさんがいなかったら誰にも言えずに苦しんでたと思うから」


「わたしもいつきさんがいなかったら自分の使命がわからずにもやもやしてたと思う」


使命……。

カナさんは私を守ることが指名だって言う。

でもカナさんは……


「カナさんは地球人。でいいのかな?」


もしかしたら私と同じように地球人じゃないかもしれない。

そう思ったけれども


「うん。正確に言うと地球人だって思う」


カナさんは否定した。

その言葉に私はがっかりしなかった。


「わたしはいつきさんみたいに誰かに見つかりたくない恐怖とか全くないから」


「でも何か私の故郷と関係ありそう……」


「きっと私の前世がいつきさんの故郷に住んでたんだと思う」


ちょっと遠くの方を見ながらカナさんは言う。


「前世?」


「わたしってよく夢を見るの。それでたまによく分からない場所の夢を見るんだよね。地球とはまた違う星の」


「それが前世の記憶みたいなの?」


「多分そう。今までは何なのか分からなかった。でも使命に気づいてはっきりと分かった」


夢で前世の記憶を見る。

とってもロマンチックで素敵だって思った。

悪夢ばかり見る私とは大違い。


「その夢でね、とても美人な王女様にお願いされるの。私の娘を守ってって。その後に儀式があって、私は目覚める」


「私の娘を守って……」


「王女様はきっといつきさんが間違えて地球に生まれることを知っていた。だからわたしをここに地球人として転生させたんだわ」


「でもそれなら私がお姫様に……」


カナさんの話はとても信用できるって思った。

でも自分がお姫様っていうのは想像もできない。


「それはないって!」


私は見た目も男の子っぽいし、あんまりお姫様っぽいタイプじゃない。

それならカナさんの方がずっとずっとお姫様っぽいって思った。


「わたしはいつきさんはすっごくお姫様みたいって思うっ!」


「どっ、どんなところが?」


そこまで強く言われるとなんだかその気になってしまう。

お姫様って言われるのはやっぱり嬉しいし……。


「色々あるけど1番は……」


カナさんはとっても嬉しそうに微笑む。


「とっても可愛いところかなっ!」


「か、可愛いって!」


「いつきさんはとっても可愛いって思う。見た目の強さも、中身の脆さも。全部」


「あ……ありがとう……」


恥ずかしくて熱がでそうな気分。

カナさんみたいなとっても可愛い人からそんなことを言われるなんて……。

すっごく嬉しい。


「わたしたちって今まですごく苦しんだと思う」


「……うん」


私はうなずいた。

私は自分の秘密を誰にも言えない、秘密が誰かに知られたら酷い目にあうと怯え苦しんだ。

カナさんは色々なことをやっても、自分の使命や夢の意味が分からず苦しんだ。


「でも全部、こうやって出会うためには必要だったと思うの」


「なんだか運命みたいだね」


「なんだか、じゃなくて運命なのっ!」


カナさんは力説する。

運命っていうとちょっと気恥ずかしい気がした。


「見つけるのが遅くなってごめんね」


「うんうん」


私は首を振った。

きっとこのタイミングだから出会う意味があったんだと思う。

少し前でも、少し後でもカナさんのことを信用できたかは分からない。

少し後なら、私は耐えきれずにどうにかなっていたかもしれない。

だから私はカナさんに言った。


「カナさん。今の私を見つけてくれてありがとう」


私はもう1人ぼっちじゃない。

私は生まれて始めてそう思えた。

そしてそれは思った以上に心の不安を消し去ってくれるものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ