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01

私には人に言えない秘密がある。

それは15年間、誰にも言わずに隠し通してきたこと。

もし、その秘密が誰かに暴かれたらどうしよう。

もし、その秘密が地球人に見つかってしまったらどうしよう。

私の心の中には墨汁のように真っ黒くて、鉄のように重い何かがずんと存在している。

もし私の秘密をみんなが知ってしまったら……

当然、社会的にも迫害される。

家からも追い出されるに決まっている。

でもそれだけですんだらまだましなほう。

きっと、いや、絶対にそれだけではすまない。

私は確信できた。悲しいことに。

私はどんな目に合うんだろうか……。

牢屋に入れられて、一生見世物にされるかもしれない。

どこかよく分からない研究所につれていかれて、拷問じみた実験を受けさせられるのかもしれない。

秘密がばれた瞬間、みんなから暴行を受け、その場であらゆる苦痛を受けて殺されるかもしれない。

一度始まった妄想は私の足をしっかりと掴んで離さない。

私はまるで底なし沼にはまったかのように、思考に溺れ続けている。

何度も、何度も夢で見た。

自分が秘密がばれた結末を。

ハッピーエンドなんてない。

全部がバッドエンドの夢の話。

それが現実になるのだけは、どうしても避けたいって思った。

だから私は秘密を隠すことを一番に生きてきた。

だから私は表面上は明るく、楽しく振る舞っている。

本当に楽しい時だってたくさんある。

でも心の中はいつも怯えていた。

誰かにこの秘密を言えたら……。

そう何度も、何度も思った。

地球人だって、私の秘密を知ったからと全員が悪いことをするとは限らない。

きっと、私のことを守ってくれる人だっているはず。

でも、私にはその2つの人が区別をつけるのは不可能に思えた。

だから私は誰にも相談することなんてできない。

楽しくおしゃべりをするクラスメイトにも

色々な相談にのってくれそうな先生にも

面白い本を教えてくれる司書さんにも

いつもお小遣いをくれるおばあちゃんにも

そして、お父さん、お母さんにも……

だってみんな私とは違う。

みんな地球人だから。

私はみんなのことが嫌いじゃない。

好きだって思う。

でも信用は、信頼はできない。

いつみんなが私の敵になるか分からないのだから。

だから私はいつも明るく、悩みなんてないかのように過ごしている。

悩んでいると思われたら、そこから秘密がバレてしまうかもしれないから。

私は落ち込んだ時などは星を見る。

お小遣いで買った、小さな望遠鏡を取り出して。

そして私は探す。

本当は私が生まれるはずだった星を。

といっても望遠鏡で見えるのは恒星。

私の星の近くにも恒星は絶対にあるから、それで十分なんだけど。

星座を見れば私の故郷かもしれない星の位置はだいたい分かる。

つる座の方向にあるグリーゼ832cとか……。

でも、もし私の生まれるはずだった星を見つけても意味があるんだろうか。

ふとそんなことも考える。

だって私と故郷の星には想像もできないぐらいの、物理的な距離という壁があるから。

今の地球の技術ではその星どころか太陽系すら出ることもできない。

きっと私の故郷だって同じなはずだ。

だって、もし地球に来れるぐらい技術が発達しているなら、私を迎えに来てくれているはずだから。

だから私の故郷の星にいけるのはまだまだ先の話。

いや、まだまだなんてとてもぬるい表現だ。

もしかしなくても、そんなことは私が生きている間には不可能なことだから。

私はこのまま死ぬまで間違えて生まれてしまった星、地球で生きていかなければならない。

自分が地球人ではないことを隠しながら。

間違った場所に生まれ、間違った場所で生きている。

こんな罰を受けなければならないぐらい、私は前世で罪を犯したのだろうか。

それとも私がこの地球という間違った星に生まれた意味があるのだろうか。

ずっと私は悩み、怯えている。

本当に理不尽だと思う。

私の周りにいる地球人は、そんなことも考える必要もなく暮らしているのに。

地球にはたくさんの人がいる。

でも、私は1人ぼっちだ。

1人ぼっちの異星人だ。

せめて、仲間が欲しい。

同じ異星人がいい、という贅沢は言わない。

せめて、秘密を共有できる誰かがいて欲しい。

でも、そんな人が本当にいるとして私は秘密を告白できるだろうか……。

……結局、私は誰も信用できないまま生きていく。

それが私の生き方で、それが私の全てだと思う。

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