(6)三人組。
「……で、ナイトとアリスと……智沙ちゃん?でいいのかな?」
改めてスキル選択に割り込んできた3人組を確認する。
まず騎士然とした風貌の唯一の男性。彼はナイトだろう。と言うか髪も目もイジってないしどこからどう見てもナイトだ。髪と目をいじるのは基本なんじゃなかったっけ?
一見して種族悪魔な少女で、一番最初に声を掛けてきた子。これはアリスかな。水色系統に揃えた髪や目以外にも何処かイジっているのか、妙な違和感はあるけどたぶん間違いない。
最後、人間サイズでも低めの中学生ぐらいしかない僕の更に胸辺りまでの身長の少女。彼女はたぶん智沙ちゃんかな。リアルでは僕より頭1つぐらい大きいから違和感あるけど、確か子供の頃の彼女がこんな感じだったはずだし、しゃべり方で考えれば間違いないと思う。ちなみに髪と目は明るめの茶系で揃えたようだ。
「その通りだけど、お兄ちゃんはなんでお姉ちゃん?」
「後で言う。けど性別違うのによく分かったね」
「どう見てもけ……でしたから」
「というか不自然なぐらい違和感ないし」
「あはは」
ナイトの言葉に同意とばかりに首を振るアリスと智沙ちゃん。ちなみに本日2回目のお言葉。なので軽くスルー。
「じゃあ、先に軽く自己紹介言っとくか」
そう言いだしたのはナイトだ。
「俺はナイト、種族は人間。前衛職志望。容姿はあれだ。俺もナビも面倒臭かったからな」
「キャラ名は?」
「そのままナイトにした。わかりやすいだろ?」
いや確かに分かりやすいけど。
「ボクはアリスでキャラ名がアルス、悪魔族で魔法職志望だよ」
「……ボク?」
アリスらしからぬ一人称に首をひねる。
「うん。ボク、男の娘プレイしているからそのロールの一環」
「えっ……、男?」
お母さん、知らぬ間に妹が弟になっていたよ。
ってか、さっき感じてたのはそれか。性別が違ってたらそりゃ違和感感じるよね。
「ベータの時にネカマって言われて腹が立ったから、いっそ男性アバターでプレイしようと思って」
なら普通に男装すればいいんじゃ?
「でも可愛い服も着たいから回り回って男の娘に?」
なるほど。
「まあ今じゃ、ネカマだと言った相手が、ボクが男だと知った時の顔を見るのが面白くなって来ちゃったけどね」
「そういう時のアルスちゃんの顔って本当に楽しそうですよね」
「にひひ」
「なんつうか、小悪魔だよな。種族が悪魔なだけに」
言葉に出してにひひと笑う妹と、それを見てあきれ顔の幼なじみ。ほんと、なんだかな。
「妹が男キャラで女の振りする小悪魔って一体……」
「むぅ。リアルネカマなお兄ちゃんだって似たようなもんじゃない」
「僕はネカマじゃない。男だ」
「でもどう見ても女アバター…」
「ネカマって言うのは男が女性型アバターを使って女の振りをする行為だろ? 僕は確かに女性型アバターを使っているけど女の振りをするつもりは全くない。だから僕はネカマじゃない。以上、説明終わり」
異議を唱える間も与えず、一気にまくし立てる。見た目的に男だと言い張るのは無理があるのは分かっている。だからこそ正論で論破する必要がある。
「でもぶっちゃけ楽しいよ? 男の娘プレイ。お兄ちゃんも女の子プレイしなよ」
「絶対しない。ネカマになる気は全然これっぽっちも全くない!」
断固として拒否だ。
「えぇ、勿体ない。てか塩ってロールプレイ推奨なんだよ?」
ん? それは初耳だ。
「確かリアルとギャップのあるキャラを使用する場合に、リアルと混同しないようにプレイヤー内でスイッチを切り替えて欲しいって名目だった筈です」
「まあ、俺はそこら辺が面倒だったから今の容姿にしたしな」
「ふーん。ロールか。僕もなんか考えてみるかな。1人称が被るのもなんだし……」
ちょっと考え込んでしまった僕を、智沙ちゃんが申し訳なさそうにつつく。
「次、私いっていいですか?」
「あっ、ごめん。どうぞ」
いったん考えるのをやめ、智沙ちゃんの自己紹介に耳を傾ける。
「えっと、私は智沙でキャラ名はチィサ。ホビットで斥候型ですね。【裁縫】も持っているので布装備なら言ってくれれば融通しますよ」
さすが智沙ちゃん。特につっこみ所のない優等生だ。逆にナイトやアリスがつっこみ所ありすぎなだけか。
「あっ、あと可愛い物を集めているのでよろしくですっ!」
取って付けたように言ったけど、リアルの智沙ちゃんにはそう言うイメージないから、これが智沙ちゃんなりのロールなのかな?
「じゃあ、最後はぼ……俺様だね、だな。僕は健也で、俺様はトルテ。格闘系を目指してる、ぜ。よろしくね、な」