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塩。~拳精、思い付きを行く(仮)~  作者: 天爛
チュートリアル的な
33/33

(33)露店。

 ナイト達と別れ、僕は1人町を行く。というか飛ぶ。


 なんか少し前にも同じ様に言った気もするけど、きっとデジャビュと言うやつで、たぶん気のせい。

 つまり門まで行っちゃってたりしてないし、僕は迷子になっていない。

 QET。以上証明終わり。

 ……QETであっているよね?



 とにもかくにもたどり着いた露店通り。

 プレイヤーメイドの武器や防具、薬以外にも日用雑貨や野菜、金物など冒険には関係なさそうだけどそれっぽい物を売っている店も結構ある。

 たぶんだけど何割かは住民の出しているお店なんだろうね。


 わらびスライムとかウサギの串焼きといったファンタジーらしい食べ物に後ろ髪を引かれつつ、いろいろと見て回っていたけどある店の前で足が止まった。

 まあ、【浮遊】使って浮いてるから元々止まっているっちゃあ止まっているんだけど。


 品ぞろえ的には他のプレイヤーの露店と大差ない、いや他の店も【裁縫】なら布製品や【鍛冶】なら金属製と言った風にその人のメインスキルによるのかある程度素材が統一されているんだけど、その店にはそれがなくいろんな素材の武器・防具を売っている。

 まあ、取り分け金属製のが多いからそれがメインなのかな?

 

 あと並んでる商品の種類の他にも、他の店に売っている物より明らかに安い物が何個かあるも気になった。同じ皮の胸当てでもこっちの方が5割近く安い。

 安い理由は一目瞭然で、安くなっているのはすべて傷物。つまり訳あり品だ。

 とはいえその傷の付き方はなんというか、格好いい傷の付き方だったりする。大きな爪跡の付いた盾とか、胸に7つの傷があいた鎧とか。

 妖精サイズで見ているからか中には人工的に付けられたとおぼしき傷もあるのが分かる。あれは明らかに格好良さを求めて付けられた傷だ。


「ほう、嬢ちゃんもわかる口かい?」

「ふぇ」


 急に声をかけられて思わず変な声がでた。


「あぁ、すまない。あまりにいい顔で見入っていたからついね」


 見上げるとそこには僕をのぞき込む顔。

 うん。「可愛い」や「綺麗」より「格好いい」と言う言葉が似合う顔立ちだね。

 そんな的外れな感想を抱いてみる。


「オレの名はラウニー。この店の主だ。お前さんは?」

「僕はトルテ。この店の客、かな?」

「ほう。僕っ娘か。女子でこういうのに興味持つのも珍しいと思ったが、そうか僕っ娘だったか」


 僕っ娘とこの装備との因果関係はよく分からないけど、取りあえず一言。


「むぅ。そう言うそっちはオレっ娘じゃないか」

「いや自分で言うのも何だが「○○(まるまる)っ娘」って表現が似合う柄じゃないぞ?」

「そうかな?」

「そうだろ」


 まあ、本人がそう言うならそれで良いけどさ。


「ちなみに僕も微妙に「僕っ娘」じゃないかも」

「微妙にとは?」

「んと、このアバターは確かに女の子なんだけど、中身は男だから。ほら、これが証拠」


 そう言って組合カードの性別欄を見せると、「ほう」と一声漏らしたあと口元に手を当て、すこし首を捻って微妙に固まってしまった。


「えと、どうしたの?」

「いやなに、わざわざ女性アバターを使用しているにも関わらず堂々と男と開かしているからね。変わってるなと」


 そう言えばエーコさんにも似たようなこと言われたっけ。


「よければ、男と主張する君が女性アバターを使用する理由を訊いてもいいかい?」

「別にいいよ。特に深い理由はないし……」


 そう前置きだけして、勘違いして選んだことや特にこだわりがあるわけでもないから女性アバターのままにしている事などを話す。


「なるほど……。ちなみにオレはトルテをどういう風に扱えばいい? 見た目通りに扱うべきか。中身にあわせるべきか」

「んー、別にどっちでもいいよ。女扱いもリアルでなれてるし中身が男だと分かっててくれればそれでいいよ」

「ふむ。どっちでもいいか。ならば少し取引がしたいのだが……」

「と、取引?」


 え、この流れで?


「そうだ。実の所、オレはTSFつまり性転換物の話が好きでな、自分でもTSっ娘のロールをしてるんだが、元々が女なせいか男らしい仕草とかがうまく出来なくてな」


 確かに一人称とか口調は男らしいけど、ネカマっていうよりヅカ系って印象だ。でもそっか、だからオレっ娘なのか。


「イジってくれる奴が少ないのもあるが、イジられるよりイジる方が好きなんだと最近気づいてな……」


 そこで小さく息を吐いたかと思うと、いきなり顔の前で手を合わせた。


「頼む、トルテ。TSっ娘になってくれ」


 ……はい?

一応、ラウニーは中も女性。女性でTSF好きはおかしいかもだけど

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