(31)即バレ。
いつもよりかはちょいと長い(超微妙に)かもだけど会話回
いまボクが受けられる依頼を確認してからエーコさんにまたお願いしますと別れを告げてから、ナイト達の待つ席に戻るとそこにいたのはナイトとアルトの二人だけで、ソルトちゃんの姿が見当たらなかった。
「あれ? ソルトちゃんは?」
「なんか運営に呼び出されたって言って戻ってった」
「まあ、その内ひょっこりと顔出すんじゃね」
「そだね」
ってかソルトちゃん。短い付き合いだけどもうすっかり神出鬼没キャラが板に付いてるからね。
「で、二つ名は……って"不可侵妖精"か。ルビが付いている辺り厨二チックだな」
「あはは、確かにそうかも。って、僕まだ言ってないよね?」
「それは……って、待ってナイトさん。なんか別の二つ名持っているんだけど」
「おっ、本当だ。なになに。"未来の拳精"? いつ言われたか心当たりあるか?」
「えっ、それなら多分……って、それよりなんで僕が言うより前に僕の二つ名を知っていたか教えてほしいんだけど」
もうなんかグダグダだ。
せっかくエーコさんみたくジラしてじらして焦らしまくろうと思ってたのに台無しだよ。ぷんぷん。
「あー、それなら」
「メニューからプレイヤー設定選んで、プレイスタイルをゲーム寄りに設定すると頭の上に名前と二つ名がね?」
そう言いつつ自分の頭の上を指さすアルス。
「だからお兄ちゃんが帰ってくる前に設定を変えといたってわけ」
「さらに言うと表示される二つ名は知名度が一番高いやつか、ステータスで設定したやつ。トルテはまだデフォルトのままだろうから組合で貰ったのが優先されている訳だ」
なるほどね。
じゃあ、さっそく"未来の拳精"に変更しとこ。
どっちもそう大差ない気もするけど厨二チックよりマシそうだし。
「あと複数の二つ名があると二つ名の後ろに▼が見えて、そこを意識することで他の二つ名も見えるんだ」
へぇ。
まあ今のところはゲーム寄りにするつもりはないし、あまり関係ないかな。
「で、その二つ名はどこで付いたんだ?」
「あっ、それなら多分……」
そう前置きしておいてエーコさんから言われた経緯を話してナイト達を納得させた。
「トルテならいつかやると思ってたがまさかもう名前を教えて貰っているとはな」
「もう?」
「お兄ちゃん、普通なら5~6回通わないと名前はともかく予約方法は教えてくれないよ?」
「それに相性が悪かったらそれ以上に通っても無理だしな」
「そうなんだ。じゃあ僕とエーコさんって相性よかったんだね」
「かもな」
「あっ、でもそのことはチィサには言わない方が……、まいっか。それはそれで面白そうだし」
「?」
アルトがなんでチィサちゃんに言わない方がいいと言い出したのかよくわからず首を捻る。
……うん、よく分からないし聞かれたらその時でいいよね。
「ちなみにナイト達の時はどんなのだった?」
「ん? 俺か? 俺の時は確かβの時は"全撃戦士"で正規版だと"全撃騎士"だったはず」
「全撃? それと戦士と騎士の違いって……」
「斬、重、刺、射の全4種類の物理ダメージ与えて勝ったから全撃。戦士と騎士の違いは盾を使ったかどうからしいぞ?」
初期装備は剣だったけど、それで突いたりイスで殴ったりイスを投げたりしたらしい。
「ボクのはβが"五色天使"で、正規版が"虹色悪魔"だったよ」
「五色はともかく虹色?」
「元素4属性に光と闇。ついでに【練気】での気というか無属性? まあ、その七つで七色、つまり虹。六色は最初から狙っていたけど、まさか七色目があるとは予想してなかったよ」
そのために全属性覚えるまで組合を使わないなんてよくやるよ。うちの妹は。
「あとちなみにチィサはβの時が"委員長"で正規版が"いいんちょ"だったらしいぞ」
"委員長"に"いいんちょ"。
どちらも似たような感じだし、多分戦闘じゃなくて話し合いと言うか口論で解決したんだと思うけど、なぜに正規版の方は"いいんちょ"なんだろう?
「由来とかは本人から聞いたらいいと思う。というかボクもナイトさんも教えて貰ってないんだよね……」
「いや。それなら僕も絶対に教えて貰えないよね?」
「んー、今日の感じだと人間サイズで頭なであげれば一発な気もするけど……」
「そうかな?」
流石にそれはないと思うんだけど……。
「と、そろそろいい時間だな。外に出る前に買い物済ませとくなら、今から行けばちょうど昼ぐらいになると思うが、これからどうする?」
そう言われてステータス画面を確認すると「朝1:39(R21:33
)」だった。
確か昼に近づくにつれてやっかいなモンスターが減るんだっけ。
仮に買い物が早く済んだとしても朝の後半なら、夜のモンスターもだいぶ減っているかな。
「確かにいい頃合いだね。取りあえず薬と防具揃えて討伐と採取かな」
「了解。じゃあ行くか」
「あっ、ちょっと待て」
そう言って席を立つ、ナイトに僕が待ったを掛ける。
「ここからは単独行動させてくれないかな」
「別にそれはいいけど、なんで?」
なんでって聞かれても不意に思いついたからとしかいえないけど……
「うーん、流石に初心者の僕に二人をつき合わせるのはの悪いかなぁとか。ほら、チィサちゃんやソルトちゃんも居なくなったしちょうどいいかなって。あ、あと、どうせ強くなるんだったらみんなの知らないところで強くなって驚かせたいというか、ネタバレ防止というか」
僕がそう言うと二人は少し眉をひそめたけど、すぐに言っても無駄と分かったのか諦めてくれた。
「まあ、トルテがそう言うなら別にいいが……」
「うん。お兄ちゃんがしたいようにすればいいと思うよ」
「ごめんね。それとありがとう」
一応だけど軽く頭を下げておく。親しき仲にも礼儀ありって言うしね。
「じゃあ、これ。今のうちに渡しとくね」
そう言ってアルトが取り出した四組のグローブ。
「えっと?」
急にそれを渡された僕はどう返したらしいのかよく分からずにいる訳で。
「急に席を外したお詫びだってチィサから。懸賞とかで今日はもう合流できそうにないからってのも込みで」
「えっ。でも」
タダで貰うのは申し訳ないような……。
「初心者にいろいろ援助するのは先行者の特権だ。遠慮なく受け取っておけ」
「それにその素材はさっきの大量発生で手に入れた物だしうっても二束三文にならないから」
そう言うなら有り難く貰うけどさ。
「でも……」
「トルテは【採手】の検証とかしたいんだろ? ならちょうどいいじゃないか。それを考慮して三種類もあるんだろうし」
確かに普通のグローブと指ぬきグローブ。それとそれぞれの関節部分に突起の突いた武器に分類されるグローブがあるから、手に装備着けたままで効果あるかとか、どこまで素手じゃないとダメかって言う検証は出来るだろうけど。
「それとも、なんか他に言い分があるのか?」
「ううん。そう言う訳じゃないんだけど……」
「だけど?」
「僕が装備するには大きすぎない?」
そう大きいのだ。物が人間用のサイズなものだからフェアリーな僕からしたら自分の身長と同じぐらいのサイズになっている。
「あー、それか」
僕の説明にすぐに納得のするナイト。
だよね? 大きすぎるよね?
「お兄ちゃん。それ、サイズ固定されていないからインベントリに1回入て取り出せばお兄ちゃんサイズになるから」
「えっ、ホント?」
「ホント、ホント。というかこんな事で嘘付いてもしょうがないよ」
確かにそうか。
と言うことで納得し、一旦インベントリに締まってから改めて取り出すと確かに妖精サイズの手袋になっていたのでそのまま装備する。
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無角兎の手袋+1 【効果】VIT:+1
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ちなみに指ぬきの方も同じ上昇値で、突起付きの方はVITじゃなくPOWが上がるようになっていた。
「最初から強い武器も嫌だろうから、なるべく弱いのを作ったって」
さすがチィサちゃん。分かってるね。
という訳でちょっと無理やりだったかもしれないけど3人には退場してもらうことに。
いやだっけ。3人がいるとずっと会話回で話し進みそうになかったし……
はい。あくまで作者の都合です。ごめんなさい。
次回、場面転換して街中探索。かな。
あっ、あと気付いかれていると思いますが、開き直ってサブタイトルつけちゃいました。
……「拳精ちゃん」にした方が良かったかな?
???「言っとくけど、僕、ホントは男だからね?!」




