(30)ランク。
組合システムの説明回。
なんかしっくりこないけど諦めた。
「あぁ、そういえばギルドの受付の際に受付嬢を指名できるのはご存じですか?」
「えっ?」
「水晶に振れる際に受付の名前を指名すればその受付が優先されるんです」
それってどういう……。
「要するにトルテさん、面白そうだから専属の受付になってもいいかなと思いまして。ダメですか?」
「いや、ダメじゃないけど」
まあ、固定の窓口でやった方がいろいろ融通利きそうだし、いいかな?
「では、私はエーコと言います。これからよろしくお願いしますね、未来の拳精さん」
「は、はい。」
なんか僕が言った「拳聖」とはニュアンスが違う気がするけどまいっか。
「それにしてもA子って……もしかして隣、Bの窓口に座ってるお姉さんはB子さんって名前だったり?」
それでその横がC子、D子とか?
「なぜそう思ったかは分からなくもないけど、残念ながら違いますよ」
「ですよね」
さすがにちがうよね。
「私、エーコから順に”女神になり損ねた女”ビーナ、シーリ、ディーア、イーオ、エフィです」
「あ、でもやっぱりアルファペットが含まれてるんだ……。それと何でビーナさんだけ二つ名付き?」
「ビーナは見た目は良いけど素が抜けてる所があるので……」
「いや、それと二つ名を言った事は関係ないよね?」
「あっ、そうそう。先ほどはつい私以外の受付の名前をお教えしましたけど、浮気は厳禁ですよ?」
「えっ、えっと」
なんか誤魔化された気もするけど、それよりも何でいきなりそんなことを……。もしかして僕に惚れたとか?
ん。ないよね。
確かにエーコさんは綺麗だし気も合いそうだし、いいとは思うけどでも急というか。
「うふふ、冗談です。でもその反応、トルテさんは本当に男の子だったんですね」
「あれっ、もしかしてからかわれた?」
「はい。からかいました」
「ひどいですよ」
「うふふ」
そんな風に笑ってごまかすエーコさんだけど、二つ名の事もまとめてごまかそうとしてるよね?
「ちなみに知らない相手からの指名などはこちらから拒否できるので気をつけてください。度がすきると……」
「りょ、りょうかい」
続く言葉が気にならなくもないけど、なんか意地悪な笑みを浮かべてる気がするし聞かない方がいい気がした。
「では、当組合のシステムについてご説明します。が、プレイヤーの方でしたらメニューのヘルプからも確認できるそうですので、お急ぎなら省略することもできます。どうしますか?」
「えと、すぐにクエスト受けたいし後に回すと見るの忘れそうなんで説明お願いいたします」
「分かりました。ですがその前に……」
エーコさんはそこで一旦、くすりと笑みを浮かべるてから言葉を続けた。
「名前を教えた仲ですし、無理に敬語じゃなくてもいいですよ?」
そう言ってエーコさんは片目をつむる。
「じゃあ、エーコさんも止めてもらっていいですか? なんか他人行儀な気もするし。あっ、もちろん規則とかで決まっているなら無理強いはしませんけど」
「わかったわ。と言うより受付している都合上、相手が敬語だとこっちも敬語を使わないといけないから疲れるの。止めてくれると助かるかな?」
「実は僕もそろそろいっぱいいっぱいだったかも」
「うふふ、やっぱり? そうだと思ったわ」
どうやらバレバレだったみたい。というかもしかしなくても気を使わせちゃったのかな?
「じゃあ、改めて説明するわね?」
「うん」
ということで、エーコさんから受けた説明はこんな感じ。
まず、組合ランクと言うのがあってFから始まりA、S、S2……となる。ランクによって受けられる依頼が決まっていて、依頼の達成度というか実力評価と信用度を上げる事によってランクがあがる。
重大な依頼を信用できない人に任せられる筈ないから当然と言ったら当然だね。
言うまでもなく僕は最下位のFランク。受けられる依頼も何回での受けられる常駐依頼のみだ。
依頼の種類は大きく分けて3つ。討伐、納品、その他。
討伐は指定されたモンスターを指定された数倒すという依頼。依頼以外の部分も見られているけど、この依頼の達成率が実力評価の大半を占めているらしい。
納品は指定されたアイテムの納品。入手方法は特に問われず採取、ドロップ、生産、店で買うとかでもいい。言うまでもなく品質が高い方が高評価だし、店買いだと手に入る信用度は少な目なんだって。
最後のその他は、いわゆる日常系とかお手伝い系とか言われる奴。ランクが上がると偉い人からの依頼も来るらしい。あと信用度を一番稼げるけど、地味なのが多いため人気がない。
実際Bランクぐらいまでなら討伐と納品依頼だけでなれるらしいし。
でも、逆に言うとそれ以上になりたかったその他の依頼も受けないといけないと言うことだよね。
それとS2以上の冒険者は現在生存していないらしい。
うん、生存。つまり過去にはいたって事だし、もしかしたら何らかのイベントでアンデッドとして復活する可能性もあるかも。
「……って感じね。他に何か質問ある?」
「今のところは特にないかな」
……ないよね?
作品タイトルに「塩。~拳精と呼ばれた少年~」とサブタイトル付けようか迷う。
一応、キーワードとして「拳精」は出せたけど、実際に呼ばれる所までにたどり着くのにまだまだ掛かりそうなところを考えると……
そもそも現時点でもまだ2戦しかしてないのに、次のバトルシーンが見えないというね。




