(27)クラン。その1
なんか書いてたらいつもの2倍近くにのサイズになっていたので2つに分けて連日で掲載します。
とはいえ会話回です。
クランのマスターってギルマスでいいんだろうか……。クラマスは違う気はするから取り敢えずギルマスで行っとこう。うん。
チィサちゃんの走り去った出入り口を眺めてふと思いついた。
そう言えば二人にも確認してなかったっけ。
「ところで2人はクラン……」
「ごめん」
「すまん」
えと、なんか言い切る前に謝られたんだけど?
「いや、本当なら俺たち4人でクランを組むのが義理というかお約束なのは分かってたんだ。だがな、塩ってクラン成立には最低5人必要で、残り1人どうすんだって事になるよな? かと言って適当な奴を入れるわけにも行かないし、塩での4人全員の知り合いってまだいないしさ」
いまならソルトちゃんって選択肢があるかもだけど、そんなの今日まで分かるはずもないし、しょうがないよね。
って、ソルトちゃんってクランは入れるの?
「それに俺らってβテスターだから、それぞれに付き合いっていうもんがあって断るに断れない状況でついな?」
まあ、人付き合いは大事だよね。でもさ……。
「つい?」
焦って言い間違えたというか語句の選択を間違えただけだと思うけど、もし本当に「つい」で切られたんなら少し悲しいかな。
「あっ、いや、よく考えた上で、だな」
「わ、わたしもっ!」
ナイトの返答にロールも忘れて慌てて飛び乗るアルス。言い訳の時に早口で捲り立てるように言うナイトも、一緒に謝るときとりあえず黙っておいて最後に誰かに乗っかかるアルスもまあ、いつも通りだ。
だから僕もいつも通り許すことにする。ってか、怒ってないし。本当だよ?
「ならよし」
途端にほっとするナイトとアルス。
「その代わり……」
そこで少し間をおいてみると、2人が緊張して息をのむ。
「2人がどんなクランに入っているのかとかいろいろ教えてよ」
そう僕が要求すると、2人は大きく息を吐いた。
「なにを要求されるのかとそんな事でいいのか」
「ん? ケーキ食べ放題を奢れとかの方が良かった?」
「えっと、それは塩で、だよね?」
「もちろんリアルで」
「……」
「……」
「「話させていただきます」」
おぉ。息ぴったり。仲良しさんだね?
「じゃあ、まず俺からだな」
そう前置きしてから、口直しとして新たに注文したジュースを口に含んでからナイトは切り出した。
「俺が所属しているクランは武器特化クラン《ARMS》だ」
「武器特化クラン?」
「あぁ、鍛冶系トッププレイヤーのクロス・ミースがギルマスをしててその弟子や愛用者が加入している。格闘メインのトルテには関係ないかもしれないが、加入特典で購入優先権とかある。つってもギルマスに気に入られる事が前提だけどな」
確かに今のところ僕には関係なさげだけど、もしヌンチャクとかトンファーとか使いたくなったら声かけてみるのはありかも。
「あとナイトさんはそこのサブマスやってるんだよね」
「まあ、なんか一番のお得意さまって事でそうなっちまった」
まあ、確かにあれだけの種類の武器を使ってたらお得意さまにもなるよね。
「っていうかサブマスなのはアルスもチィサもだろ」
「ボクんとこはダブルサブマスだもん。ナイトさんの2分の1ぐらいの凄さだよ」
「って、チィサちゃんも含めてみんなサブマスなのか。それじゃ抜けて新たにクラン設立ってのも無理だね」
「すまん」「ごめん」
「いいって、こうなったら僕も新たにクラン立ち上げてサブマスになるから」
「いや、そこはギルマスだろ」
「あはは」
半分冗談で言ったけど、本当にクランを立ち上げてギルド戦とかでナイト達のクランと競い合うってのもおもしろいかも。だとしたらクラン名は《甘味屋》とか。って流石に名字をモジるのはダメか。
「っと、あとは最近はユニーク武器のレプリカ作成なんてやっているからもしいらない武器とか手に入れたらよろしく頼む」
そう言って軽く頭を下げるナイト。
まあ、僕は格闘家を目指すつもりだからいらない武器は結構ありそうだけど、まだ始めたばかりだから良い武器とか当分手に入らないんじゃないかな。
「じゃあ、次はボクだね」
そう名乗り出たのはアルスだ。というかクランに入っているのは2人しかいないんだから必然的にそうなるんだけど。
「ボクのクランは《本気GIRL》っていう魔法特化クランだよ。こんな名前だから勘違いしている人は多いけど、別に女性専用って訳じゃないよ?」
まあ、じゃないと男の娘なアルスがサブマスな訳ないし。
「ギルマスはリリィ。一言で言うと魔法剣士。んで、もう1人のサブマスがデニア。無詠唱魔法の使い手かな。2人ともβ時代のパーティメンバーだよ」
「と言うことは元々パーティ組んでいたメンツでクランを立ち上げた感じ?」
「うん。あっ、でも、固定メンバーはさっきの2人だけだから必要に応じて物理職を加える感じだった」
「そう言えば俺もたまに誘われてたな」
「うん。ナイトさんは下手に手を出してこないから誘い易かった」
「そりゃ、知り合いのパーティメンバーに手を出して問題になったら後が怖いしな」
「知ってた」
2人はそのまま昔話に花を咲かせる。と思ったけど、ちゃんとこっちの事も覚えてくれていたらしい。
「あとはチィサだけど、どうする?」
「どうするって?」
「チィサのクランについて本人から訊くか? それとも俺らが話そうか?」
あぁ、そういうことか。
「んー、馴れ初めとかは後で本人に訊くから問題にならない範囲で教えてくれる?」
「了解」
そう言って一拍おいてからナイトは話を続けた。
次回はチィサちゃん所とその他クランの話。




