(23)確認。
エタるよりマシという事で、前回の予告とは異なりクエスト他の確認がメインとなってしまいましたがご勘弁を。
『突発クエスト《いちゃもん冒険者》
冒険者登録の最中、いちゃもんを付けられた。受付嬢は係りの者を呼んだというが来るのは15分後らしい。その間、組合職員や他の冒険者たちは積極的に動く気はなさそうだ。と言うよりも、どうやらこの問題をどのような行動で解決するかで、あなたの資質を見極めるつもりらしい……。
終了条件:あなたの行動次第
終了報酬:あなたの行動、及びその結果次第』
これがナイトの言ってたクエストなのは間違いないけど、ちょっとアバウトすぎない?
条件や報酬の内容については言うまでもないし、そもそも『勝利』条件や『成功』報酬じゃなくて『終了』○○なんだよね。つまり成否関係なし。あと『どのような行動で解決するか』って、要するにバトルする必要がないって事?
極端に言えば係りの人が来るまで無視し続けるってのアリな訳だよね?
まあ、僕だと無視されてキレた相手に攻撃されてそのダメージで死亡とか簡単に想像つくけど。
でも、どうしようか。
行動結果で報酬内容が変わるって事だから、たぶんだけどバトルで解決したらバトル関連の何か貰えると思う。
つまりバトルするのは確定かな。でも相手はNPCだし、もしもやりすぎて殺してしまったりしたらどうなるんだろ。
「ねぇ、お姉さん。もし、だけど、もしも僕がNPCを殺してしまったらどうなるの?」
もちろん殺すつもりはない。けど、念のため聞いといた方がいいと思う。デスペナルティ付きとはいえ何度でも復活できるプレイヤーと違ってNPCは復活できないかも知れない。そして、もしそうだとしたら僕はNPCの敵キャラを攻撃するのを躊躇してしまう気がする。
「NPCは基本的に復活しません」
やっぱり……。
「但し、あなた方プレイヤーが関係する場合は別です。例外もある様ですが、あなた方が運営と呼ぶ神々の御技により復活がなされると言います」
あぁ、なんだ。なら良かった。
「ちなみに無闇にNPCを殺したプレイヤーにはペナルティが科せられるそうです。軽いものでは復活の費用の肩代わり、重ければこの世界へ2度と来ることが出来なくなるとか。ちなみに今回の様な場合はペナルティは科せられないので遠慮なく殺って頂いても結構ですよ」
「ありがと。まあ今の攻撃力じゃ無理だろうけど」
と言うかそもそも殺す気とかないし、ゲームとは言え人殺しになるのはいやだし。
「そうですか。でも頑張ってくださいね」
「うん」
そう言って頷き返し、クエストの受領確認メッセージのOKを選択した。するとそれまでのやり取りを待ってたかのように沈黙していたいちゃもん冒険者が騒ぎ始めた。
「おっ、このコザ様に刃向かうっていうのかよ。雑魚が粋がるんじゃねえよ」
そんないちゃもん冒険者……、長いしちょうど名乗ってくれたからもうコザでいいよね、を無視して酒場の方へ目をやるとナイト達が言っていた賭の方も始まったみたいだ。耳を澄ませばその内容もいくらかは聞こえてきた。
「あんな女の子がコザに勝てる訳ねぇよ。負けに一口だ」
「おいおい、プレイヤーを見かけで判断するなよ? ……判定勝ちに一口」
「おい、それでも判定かよ。なら俺はその他、戦闘以外での解決一口だ」
「そこは完勝ちだろ」
「ならお前が賭けろよ」
「いや、今俺は懐が寂しくてな? お前が賭けろよ」
「あっ、すまんが、俺も同じだ。おい、お前、今日大分儲けたと言ってただろ。ご祝儀に賭けてやれよ」
「いやいや、これだけ稼ぐのにどんだけ苦労したと思ってんだよ。夢のマイホームまで後一歩なんだ。一銭も無駄にできんよ」
「つうか、さすがに完勝ちは無理だろ。どう見ても初心者な女の子が一回もダメージ受けずにコザを倒すなんて無理ありすぎだって」
「なんだよ、みんな賭けないのかよ。なら俺が完勝ちに賭けてやるよ」
「「「どうぞどうぞ」」」
「ちょっ、ここはダチョウ的流れで他の奴に押しつける流れだろ?!」
なるほどね。純粋に勝ち負けだけで無く、ノーダメージでの完全勝利や時間切れでの判定勝ちとかあるんだ。なら、ナイト達が賭けてくれてると信じて完全勝利を目指すべき?
でも与えられた選択肢の枠に収まるのってなんか面白くないよね……。
「おい、無視してんじゃねぇ。もうキレた。痛い目に合わせてやる」
いつの間にか剣を取り出していたコザが吠える。
「ごめん。ちょっと酒場の方が気になっちゃって。いいよ。相手にしてあげる」
「ほう、受けて立つらしいぞ」
酒場の方で僕が受けてたつ事に気づいた誰かが声を上げた。
でも、そんな声は無視して、戦い前の礼をする為に背筋を伸ばした。いくら相手がいちゃもんを付けてきたと言っても礼節は大事だもんね。
だから、僕は左掌に右拳を当て……って、しまった。
「あっ、ちょっと待って」
掌に当たった感覚で思い出したけどログインしてからずっとヒュムリング付けたままだった。バトルを始める前に外しとかないとね。
と言うことで、慌ててヒュムリングを外してから改めて手を合わせ一礼。うん。こっちの準備は万端だよ。
「お前、妖精だったのかよ」
「うん。そうだけどなにか?」
「チビが粋がってんじゃねぇっってんだよ」
別に粋がってるつもりはないんだけど。
とか思っていると、酒場の方でもざわめきだした。
「なんだよ妖精かよ。こりゃ、完勝ちはねぇな。圧倒的に打点が足りねぇ」
「まだ魔法があるだろ。ワンチャンあるって」
「いや、コザを見てみろ。妖精だとわかった途端、魔法対策のアクセサリを装備しやがったぜ」
「さすがコザ、せこい」
「そこに呆れる失望する」
「おいおい、失望するほど期待があったか」
「「「ないな」」」
「まあどちらにしろ。妖精の防御力だと一撃喰らったら最後逆転は難しんじゃね。こりゃ、負け、下手したら完負けだな」
確かにコザの持ってる剣って意外に強そうだし、下手したら一撃死しそう。
けど、
全部避ければ関係ないよね?
次回こそバトル?シーン




