(11)とるて。
ちょっと短め
「トルテ。お前、スキル間違えて取っただろ」
「えっ、でも『採る」「手』だし【採手】に間違いないと思うけど」
「いや、おまえバカか。字が違うだろ。『採取』の『しゅ』は『手』じゃない。『取る』だ」
「へっ? だから『採る』だよね?」
音声で理解できない僕を見かねたのか、ソルトちゃんが救いの手で教えてくれる。
[×採手 ○採取]
「あっ……」
把握。
僕は僕が思ってた【採取】のスキルではなく全く別の【採手】と言うスキルを間違えて取ってしまっていたらしい。
えっと、僕が取ったのが【採取】じゃなくて【採手】だとして一体……。
慌ててスキルの説明を確認する。
【採手】
手で触れた相手から一定時間ステータスを採る。スキルレベルによって採れる量、種類が増える。
……ドレインタッチ的な?
とりあえず確認した効果をナイトたちにも教えようと思ったら、ソルトちゃんが既にスケッチブックに書き出していた。
「これまた妖精には不向きなスキルだな。リーチ的に」
「手っていうのもキツいよね。武器を持つなっていってるようなものだし」
[しかも奪えるステータスは自分のステータスの高い順]
あっ、確かに【採手:SPD】っていうアーツがある。
「って事は弱点である攻撃力や防御力を補うのには使えないですね」
スピード特化である以上今更スピード上げても焼け石に水だしね。
「うん。妖精でこのスキル構成はやりすぎだ。やっぱキャラを作り直した方がいいと思うぞ?」
うぅ。確かにそうかも。
「けど、【採る手】って、なんか運命を感じなくもないんだよね」
僕がそういうと3人が3人とも大きくため息をついた。
まあ言いたいことは分かる。けど僕だからね。そこは諦めてもらわないと。
「じゃあ、とりあえずモンスターと1回戦ってみるか? それで使い物にならなかったら諦めもつくよな?」
確かに戦えないんじゃどうしようもないか。
「分かった。そうする」
僕がそう言うのを見計らってかソルトちゃんがツンツンと僕の頭をつつく。
うん。今のサイズ的に肩を叩くのが難しいのは分かる。けど、声かけるなりなんなりできたと思うんだ。
[いっしょに行ってもいい?]
「いいけど、運営的に戦闘参加とかアリなの?」
[ごめん。私は戦えない]
そっか、戦わないじゃなくて戦えないなんだね。
[見てるだけ。監査役と思ってくれていい]
[邪魔はしないからお願い]
ソルトちゃんのこのお願いに僕達は顔を見合わせる。
僕的には問題ないと思うけどどうかな。
「ボクはいいよ」
「私も問題ないです」
「俺もだ。別に守る必要とかもないんだよな」
こくり。ソルトちゃんが頷く。
「ならぼ……れ様もいいと思う。パーティ登録とかはいる?」
ふるふるとソルトちゃんは首を横に振る。まあ、確かに見てるだけだし必要ないのか。
「でも入っても問題はないんだよね。なら誘っちゃう」
そう言うやアルスはソルトちゃんにパーティ加入申請を送信したようだ。
[でも]
どうしたものかと躊躇するソルトちゃんを、チィサちゃんやナイトが後押しする。
「折角フレンドになれたのですから1人は寂しいですよね?」
「だな。枠には余裕があるんだし遠慮なく入ればいい」
もちろん僕としても反対する意味も理由はないし、逆に歓迎をしたいと思っている。
「ようこそ我がパーティにだよ。って、このパーティのリーダーってナイトだけど」
[ありがとう]
こうして僕らのパーティにソルトちゃんが加わった。
[因みに【採手】は【手技】と【魔法才能】を両方取れば解放される隠しスキル]
「あぁ、そりゃ知らないはずだわ」
「殴る魔法使いなんて聞かないしね」
そうかな。魔法拳士とか意外といそうなんだけども……。
運命入りました。




