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第15わん 新しい力


 プーちゃんとお楽しみ中、一度追い払ったオオカミ集団が逆襲しに帰ってきた。

 しかし、勝負は一瞬だった。

 俺達は怒りに任せて暴れ回り、あっと言う間に敵を全滅させたのだ。

 本気を出したチート犬&チート猫の前では、オオカミなぞ相手にならなかった。


「わふぅ」


 周囲に転がるオオカミ集団の死骸を見て、俺は軽く息をつく。一部は俺の炎によって焼け焦げていて、辺りは少し焦げ臭い。

 だけど、周囲のそんな状態なんかどうでもいい。

 とんだ邪魔が入ったが、ようやく二人きりに戻れたのだ。早く先ほどの続きを再開したい。

 はやる気持ち抑えきれず、さっそく彼女に飛びかかろうとする。

 てっきり向こうも同じ気持ちだと思ったが、


「にゃあ……」


 何故だか彼女はオオカミの屍をじっと見つめ、こちらに目を向けていなかった。

 どうしたのだろう。不思議に思っていると、きゅるるるる……といる間の抜けた音が周囲に響く。

 出処は、プーちゃんのお腹だった。


「にゃ……」


 照れたように笑うプーちゃん。どうやら腹が減ったらしい。

 言われてみれば、俺も空腹だ。少し焦げ臭いとはいえ、焼けた肉の匂いによって空腹感が呼び起こされてくる。

 そういやムツ子に襲われたせいで、今日は朝から何も食べていなかったな。

 一旦空腹感を思い出すと、腹の虫の音が止まらなくなり、他の欲求よりも食欲が勝ってくる。

 幸いにも辺りにはオオカミ(エサ)が転がっている。俺達は、さっきの続きをする前に、軽く腹ごしらえをすることにした。


「わふぅぅぅぅ」


 小さく息を吐き、焦げていないオオカミに火を掛ける。

 ジュウジュウと肉が焼け、周囲に香ばしい香りが立ち込めた。

 二、三匹を良い感じに焼いたところで、俺はさっそく肉にかぶり付く。


「わぅ、わぅ」


 うまいうまい。ちょうど良い焼け具合。俺の焼肉スキルも上達したもんだ。

 一口食べると一気に食欲が掻き立てられ、無我夢中で肉を貪った。


「にゃむっにゃむっ」


 プーちゃんも、最初こそ焼きオオカミを食べることを躊躇っていたものの、一旦口をつけ始めたら止まらなくなったようだ。

 小さな口で一生懸命肉を頬張っている。かわいい。


「わぅ」


 オオカミは肉付きが少なく、柔らかい部分はすぐに食い尽くしてしまった。

 そこで俺は、別のエサへと足を運んだ。ライオンの死体だ。

 俺をピンチに追い込んだ忌々しい敵。ムカつくから食ってやろう。


「がぅ、がぅ」


 怒りを込めながら焼いたため少し焦げてしまったが、構わず肉を噛みちぎっていく。

 筋肉質で硬い肉だが、勝利の味がスパイスとなり、美味しく頂くことができた。俺が倒したわけじゃないけど。


「わう?」


 しばらくライオンの肉を食していると、不思議な現象が起こった。

 体の奥から、ふつふつと力が漲ってくるような感覚を覚えたのだ。

 これは……。

 この感覚には心当たりがあるぞ。

 そうだ。かつてドラゴンを食し、新たなスキルを手に入れた時に感じたものと同じものだ。

 まさか。

 このライオンには何か特別なスキルがあり、それを吸収してしまったのだろうか。

 戦っているときは特殊なスキルを使っている様子は無かったが、何か能力を隠し持っていたのかもしれない。


 俺は頭の中で『ステータス』と唱え、脳内に思い浮かんだ項目をチェックしてみる。

 だが、スキル欄を確認してみるものの、新しい項目は増えてなかった。

 おかしいな。新しいを力を得た時と同じ感覚がしたのに。

 不思議に思っていると、既存のスキルが変化していることに気がつく。


 《言語理解 レベル2》


 以前ステータスを確認した時には、《レベル2》なんてものなかったハズだ。ライオンを食べたことが原因でこの項目が変化したのは間違いない。

 しかし、言語理解がレベルアップとはどういうことだろう。

 言語理解とは、異世界人の言葉を理解するスキルだったハズだ。それにレベルなんて関係あるのだろうか。

 意味が分からなかったが、すぐにその力が発揮された。


「にゃう〜」


 耳から聞こえる、何気ないプーちゃんの鳴き声。

 鼓膜に広がるそれは、可愛らしい子猫の鳴き声でしかない。

 しかし、それが、


『おいしいにゃ〜』


 と脳内で変換されたのだ。

 イヌの鳴き声が脳内で言葉に変換される現象。それが、ネコの鳴き声でも発生した。

 言語理解力がレベルアップしたことにより、ネコの鳴き声の意味を理解できるようになったようだ。

 まさかネコ科を食べるだけでネコ語を理解できるようになるとは……。

 予報外の展開に呆然としていると、プーちゃんがはたと食事を止め、


『あれ、何かにゃ? なんか、体に力が湧いてくるようにゃ……』


 自身の体をしげしげと眺め始める。

 つか、語尾が『にゃ』なんだな……。かわいいにゃ……。


『にゃんだろう? ステータス上がったのかにゃ?』


 おお、ステータスという概念を知っていたとは。

 しばしの無言を挟み、脳内で能力チェックを終えたのか、プーちゃんはボソボソと呟いた。


『……えっと、言語理解レベル2? レベル2ってにゃんだろう?』


 え? プーちゃんにも同じスキルが?

 まてよ。

 俺はネコ科のライオンを食べて言語理解のレベルが上がり、ネコ科であるプーちゃんの言葉を理解できるようになった。

 じゃあ、イヌ科であるオオカミを食べたプーちゃんはどうなる?

 まさか……


「わん」


 試しに、『プーちゃん』と呼びかける意味を込めて、おずおずと鳴き声を発してみる。

 すると、彼女は耳をピコっと反応させ、


『あれ〜? 変だにゃあ? プーちゃんの鳴き声の意味が分かる気がするにゃ』


 やはりそうか。

 プーちゃんもイヌ語を理解できるようになっている。

 しかし彼女はその重要性に気が付いてないようで、


『まぁいいにゃ〜。そんなことより、もっとお肉食べたいにゃあ』


 と呑気にあくびしながら次のエサを探していた。

 つかプーちゃん独り言多いな。でもそんなところも可愛いにゃ……。


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