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第1わん わん マンス レイター

大変お待たせしました!

第2章始まります!


「わんわんわんわんわんわん!」


 わん! わんわわわん!

 わんわんわん! わうん、わうわうわん!!


「わん!」

「きゃっ!? もう、ヌーちゃんってば〜! あんっ!」


 わうみーわわうわワンわん。

 わわうわんわ、わんわん。きゃう、わんわわん。


「わんわん!」

「こ、こら、ヌー! へ、変なところ舐めるんじゃない! んっ……」


 わうーわうわわわん。きゃうわんわワン。

 わうみー、わうーきゃわわわん。


「くぅ〜ん」

『……ヌーの……えっち……きゃん』


 わわわんわんわうしー。ワウワウわう。

 わうわう? わうわ、きゃんきゃんわん。


「わんわんわわわん!」


 わおーん!

 わう! わわわわわん!

 きゃん! くぅううううん!!


『……ねぇ、大丈夫? ヌー?』

「わん? わわん!」


 わわわうわん? わう! わんわんワワわんわんわんワン!

 わんわんわんわんわうんわんわわんわわわんわんわんわんわんわんわんわわわんわん。

 わんわんわわんわんわうんわんわわんわんわんわわわんわんわうわうわん。


『ヌー! ヌーってば!』


 ……ハッ!

 まただ。また、思考まで犬化していた。

 ダルシーに頭突きされ、ようやく自我を取り戻すことができた。


『……正気に戻った?』

『あ、ああ。悪いな……』


 街を出てから、はや一ヶ月。それはつまり、俺が犬に転生してからも約一ヶ月経過したということだ。

 最近、思考までも犬になってしまい、時々記憶が抜けてしまうことがある。

 身体だけでなく精神まで犬になりつつあるのだろうか……恐ろしいワン。


「も〜ヌーちゃんが変な所ばっかり舐めるから、身体中ベトベトだよぉ〜」

「まったくエロ犬め……。変な所ばかり舐めて……」


 俺なにやったの……。まったく記憶がないぞ……。

 ジェイミーとケリーの顔は紅潮しており、息が荒い。さらに着衣は乱れ、ほとんど裸だった。といっても、一ヶ月間の荒野生活を経て、服はほとんどボロ切れ同然になってしまっているのだが。


「もうすぐ日が暮れる。どうせだし、水浴びをして今日はもう休もう」

「さんせ〜」

「わうーん!」


 ジェイミーとケリー、そして俺とダルシーの一行は、一ヶ月間ほぼ休みなく荒野を歩き続け、わんダフルランドを目指している。

 一見何も無い荒野に見えたが、幸運なことに出発後ほどなくして透き通るくらい綺麗な川を発見した。おかげで荒野の真っ只中に居るにもかかわらず、水不足に喘ぐこともなく済んでいるのだ。

 ケリー曰く、川は海に繋がっているらしい。俺達は川の流れに沿って旅を続けていた。


「じゃあさっそく水浴びしちゃおうか〜! れっつごー!」

「わん!」

「ばう!」


 ジェイミーの掛け声で、俺とダルシーはバシャバシャと川に入っていった。

 川の幅は十メートルはあるだろうか、かなり広い。一方であまり深くなく、川の中央でも人間の膝くらいの深さしかない。流れもそこまで速くないので、水浴びには最適だった。

 人間やダルシーのような大型犬にとってはかなり浅い川だが、小柄な俺には足が届かないので、基本的に足の届く浅瀬で水浴びを行っている。

 ちなみに一ヶ月経過したというのに、俺のプリティボディは一向に大きくなる気配がない。大きくならない犬種なのだろうか。


「ほらほら、お姉ちゃんも脱いで脱いで!」

「あ、ああ……」


 俺達に続き、ジェイミーが服を脱ぎ、川へ入る。もちろん身体を隠すタオルも水着もないので全裸だ。

 一ヶ月のサバイバル生活を経て、ジェイミーは野外で全裸になるのにもはや抵抗を感じないようだ。一方でケリーはまだ少し羞恥心が残っているらしい。おずおずと衣服を脱ぎ、頬を赤らめながら必死に前を隠していた。


「わんわんわん!」

「ばうばう!」


 日中、荒野の強い日照りに照らされていた肌に冷たい水が心地良い。

 俺とダルシーは浅瀬で追いかけっこを始めた。一ヶ月も経てばこの犬の身体も完全に慣れたもので、水の中で多少抵抗があるにも関わらず、難なく走り回ることができる。時折足が付かない部分もあったが、どうやら俺には犬かきの才能があったらしく(もしくは犬化による影響か)、走り回るダルシーを余裕で追うことができた。


「私もまーぜーてっ!」


 ダルシーを追いかける俺を、ジェイミーが小走りで追いかけてくる。

 俺とダルシーは待ってましたとばかりに追いかけっこを中断し、ジェイミーの周りでバシャバシャと飛び跳ねて水飛沫を彼女に向けて飛ばした。


「きゃっ、つめたーい! こら〜!」


 お返しにジェイミーも水を掛けてくる。彼女の動きに合わせて、頭上でぷるんぷるんと大きな二つの果実が揺れる。ふわっとした巻き髪が水分を含み、その大きく膨らんだ部分に張り付いていた。


「お姉ちゃんなにやってるの! はやくー!」


 身体を隠し、俺達が遊んでいる様子を水際で羨ましそうに眺めていたケリー。見かねたジェイミーは姉の元まで駆け寄り、手を引いてきた。


「お、おい!」


 手を引かれたことによって前を隠すことができなくなり、ケリーの裸体が晒される。

 ジェイミーとは対照的な、スレンダーな身体。彼女の健康的で細っそりとした長い足に水がかかり、滑らかに滴り落ちる。


「もう! お姉ちゃんいつまで恥ずかしがってるのっ!」

「だ、だが……」


 二人の真珠のように美しい肌が、水に濡れて一層眩しく見える。加えて黄金の髪からも水が滴り落ち、輝きを増していた。太陽の光を反射して輝いて見えるほどだ。

 川が近くにあることで毎日水浴びが出来るので、二人の身体は清潔そのもので、美しい様を保つことができているのだった。しかも日焼けしにくい体質らしく、一ヶ月も太陽の日照りに晒されているにも関わらず、彼女らの美しさは出発前となんら変わりない。


「こ、こら、ヌー……あまり、いやらしい目で見るな……」

「わん」


 いや、見てない。

 恥ずかしすぎて耳まで真っ赤になっているケリーは、潤んだ瞳で俺を睨んでくる。


「そうだよぅ! ヌーちゃん、えっちな目で見ちゃだめだよぅ!」

「わん」


 いや、だから見てないって。

 ジェイミーがわざとらしくその豊満な果実を手で隠すと、腕に押し寄せられて谷間がさらに強調されていた。


『……ヌー……えっちな目で……見ないで』


 姉妹に同調し、意地悪く微笑みながらダルシーもそんなことを言い始めた。

 もちろん、冗談なのは分かっているのだが、


『ハ、ハァ!? みみみみみ見てねぇし! ぜんぜん見てねぇしっ!!』


 思わず動揺しきった返答をすると、ダルシーは面食らったような顔になる。きっと俺が軽く流すと予測していたのだろう。

 だが実際のところ、ダルシーの身体付きをいやらしい目で盗み見ていたため、誤魔化しきれなかったのだ。

 まったくダルシーの奴、エロい身体付きしやがって……。目のやり場に困るワン……。


『…………あの、ヌー? ……私としてはすごく嬉しいんだけど……その、大丈夫?』

『え、なにが?』


 彼女はポカーンとした表情のまま、俺を気遣うような視線を向ける。

 ダルシーは何を心配しているのだろう。特に体調は問題ないし、健康そのものだ。


『……だってヌー……最近ご主人の裸に興味を示さないから』


 なんだと? まったく、みんな俺が姉妹のことをエロい目で見てると思ってるのか? 心外だワン。

 確かに綺麗な身体で魅力的に見えるが、それはどちらかと言うと芸術品を見るときのような目線に近く、性的な目で見ているわけではない。

 と、その時、


「や、やっぱり無理だ! 恥ずかしすぎる! うおおおおおおお!」

「ちょっ!? お姉ちゃんどこ行くの!? 待ってよぅ!」


 叫び出しながら俺達とは反対の方向へ走りだすケリー。羞恥に耐えられず逃げ出したようだ。それを追いかけて、ジェイミーも走り去っていく。そして、犬二匹だけがその場に残された。

 走り去る姉妹を見たダルシーはニヤリと微笑むと、彼女らがこちらに背を向けていることをいいことに、四肢に力を入れて身体を踏ん張る。そして一瞬だけその身体から輝きを放ち、姿を変化させた。

 彼女のスキル、人化だ。


「……ふふ」


 ハリのある褐色の肌。ジェイミーに負けず劣らず大きく膨らんだ胸部。ぼさっとした黒髪は、水分を含み少し落ち着いている。その姿は、イヌ耳と尻尾を除いて、ほとんど人間そのものだ。

 四つん這いの状態から二本足で立ち上がり、妖しく俺を見下すダルシー。腕を寄せてその豊満な胸を見せつけるように強調してくる。


「……この姿になるの……久しぶり」


 確かに、荒野に出てからは常に姉妹と行動しているため、ダルシーが人化する機会は無い。人化スキルはアマンダさん以外の人間には秘密なのだ。

 しかし、なぜこのタイミングで人化するんだワン?


「……どう? 私の……カ・ラ・ダ」


 急にどうって聞かれても……。


『んー、ああ、いいと思うぞ』


 回答に困ったので、とりあえず当たり障りのない返答をすると、


『…………ヌ、ヌー、ほんとに大丈夫? ……私が人間の姿になって、露骨にガッカリしてない?』


 再び淡い光を放って元の犬の姿に戻りながら、不安げに俺の顔を覗き込むダルシー。

 不意にダルシーの凛々しく美しい顔が近づいてきたので、思わずドキっとしてテンパってしまった。


『なななななな、なんのことだよ、さっきから!』

『……いや、…… その……』


 なにやら歯切れの悪いダルシー。何かを言いたそうだが、遠慮しているようだワン。何か言いづらいことを隠しているのだろうか。

 俺が言葉の先を促すと、彼女はおずおずと切り出した。


『……ヌー、ここ最近、人間じゃなくて……犬に発情してない?』


 雷に打たれたようだった。

 衝撃で、頭が真っ白になる。

 確かにそうだ。ダルシーに言われて気がついた。


 白状すると、以前は確かにジェイミーやケリー、そして人間ダルシーの裸に対して発情し、エロい目で見ていた。

 しかし最近の俺は、姉妹や人間ダルシーの裸には何も感じず、犬の状態のダルシーにばかり発情している。


 思考だけでなく、性的対象までも犬化してきているのだろうか?

 愕然とした。あんなにいやらしい目で見ていたジェイミー達の身体に、まったく興味を示さなくなってしまっていたことがショックだった。


 俺はこのまま心までも犬になっていくのだろうか……。

 そんなの嫌だワン……。あ、ワンとか言っちゃった……。


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