表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/48

第28わん わんこ大集合


 響く振動。

 地面から伝わるそれは、ジェイミーの身体を抜け、彼女の豊かな胸を小刻みに震わせて俺の両頬に柔らかな肉の弾力を与えてくる。


「なんだ? 地震か?」


 街道が揺れ、周囲の建物が揺れ、まるでこの街が痙攣しているようだ。

 木造の建物が軋み、窓ガラスがガタガタとやかましい音を発している。

 決して大地震というほどの大きな揺れではないが、その振動は絶え間なく続き、確実に大きさを増していく。


「お、おい。何か、こっちにやって来るぞ……」


 武装集団に包囲された一本道。その両端から震源が近づいてくるのを感じる。

 俺はジェイミーの服の中から必死に這い上がり、なんとか顔だけを谷間の外に出して周囲を確認した。


「すげぇ数だ……なんだありゃ?」


 男達の言う通り、道の果てから大量の何かがこちらに向かって来ているのが見える。

 黒、白、茶など、様々な色が入り混じった何かの集団。俺の視力ではその集団の細部までは良く見えないが、大小様々なものが入り混じっているのだけは分かる。

 道の反対側を見ると、やはり同じような集団がこちらに猛進してきていた。

 その集団が近づくにつれ、振動の強さがさらに増していく。

 そしてその振動に混じり、声が聞こえてくる。

 多種多様の、様々な鳴き声が。


「ワンワンワン!」

「キャンキャン!」

「ワオーン!」


 そう。

 犬だ。

 ドッグだ。

 ワンちゃんだ。

 道の両サイドから、俺の呼びかけに応じて多数のワンコが押し寄せてきているのだ。

 『称号:ノラのボス』

 ――やはり野良犬を呼び寄せる力があるらしい。


「まさか、犬か!?」


 一足遅れて、男達も迫りくる震源の正体に気がついたようだ。


「なんで犬がこんなに!?」


 迫りくるワンコの大軍勢を前に、男達は当然ながら大混乱。

 しかし彼らが戸惑っているうちに、犬達は一匹一匹の姿がハッキリと見えるほどこちらに迫っていた。

 ブルドッグを先頭に、チワワやミニチュアダックスのような見た目の小型犬、そしてレトリバーやシェパードのような大型犬が続いて来る。

 その数50は下らないだろう。先日ブルドッグが呼び寄せた30匹を大きく上回る。街中の野良犬が集まっていると言っても過言ではないほどの大軍勢だ。俺がチート犬だから呼び寄せられる犬の量も多いのだろうか。


『ダンナー!』


 集団の先頭、元・ノラのボスであるブルドッグが俺の姿を発見し、嬉しそうに短い尻尾を振るわせていた。が、すぐに俺達を取り囲む武装集団、そしてジェイミーに銃を突き付ける茶髪男を見て、顔のシワを更に深めて険しい顔付きに変わる。俺が遠吠えをして野良犬を招集した理由を察したようだ。


『おいお前たち! ダンナを助けるぞ!』


 ブルドッグの一声で、50匹余りの犬からワオォォォォンと遠吠えが巻き起こる。いくら犬とはいえ、50匹もの遠吠えが合算されるとそれはドラゴンの咆哮にも匹敵するほどのボリュームだった。ビリビリと大気が震える。

 しかしその咆哮を前にしても男達は未だに状況を飲み込めていないようで、


「お、おお。犬がこんなに」

「か、可愛いなオイ」


 と、キャンキャンと駆け寄ってくる可愛いワンコに顔を綻ばせていた。

 しかしそのキャンキャンという鳴き声が『殺せ! 殺せ! 死ね! 死ね!』というバイオレンスな内容であることは、当然人間達には分からない。


「おぉ、おぉぉぉぉ……」


 ふと、興奮を抑えているような呻き声が聞こえたのでそちらに目を向けてみると、ケリーが目を爛々と輝かせて押し寄せるワンコの大軍勢をじっと見つめていた。犬の姿が鮮明になるのにつれて彼女の口角も上がっていき、しかし上がってしまう口角をなんとか抑えようとしているため、どんどん気色の悪い顔付きになっていく。


「い、犬が、犬があんなに……か、かわいい……ハァハァ……」


 荒い呼吸で犬達を見つめ、口の端から涎をタラリと垂らすケリー。しかしそこで、彼女は俺のちょっと引いた視線に気が付き、恥ずかしそうに頬を赤らめながら顔を背けた。


「お前ら騙されるな! このヌーとかいう犬のこと忘れたのか! きっとこの群れもこのクソ犬の仲間だ! 全部殺せ!」


 駆け寄ってくる犬の大群を微笑ましく見守っている武装集団と気色悪い顔で見つめているケリーの一方で、茶髪男だけはその可愛らしさに動じることなく、無情にもワンコ抹殺命令を武装集団に下す。しかし、


「いや、殺すのはちょっと……」

「さすがに可哀想だよなぁ」

「あんなに可愛いんだぜ? 捕獲してペットにするならまだしも殺すなんて……」


 武装集団は可愛いワンコの群れを前にしてすっかり牙を抜かれてしまったようだ。ゴツい武装をした筋肉モリモリの屈強なオッサンばかりだが、意外と動物に優しく可愛い物に目がないらしい。どっかのケリーとかいう人にそっくりである。

 ……って、あれ? コイツら犬を殺すの渋ってるけど、さっきまで俺のことバリバリ殺そうとしてなかった……?


「きゃんきゃん!」


 そんな中、犬の集団の中から一匹の小さなチワワの赤ちゃんが無邪気に駆け出してきて、一足先に武装集団の元へ辿り着く。

 その犬は一人の男の前にちょこんとお座りをすると、短い尻尾をブンブン振り回してクリンとした瞳で男のことを見上げた。


「くぅ〜ん」

「うお〜、かわええ〜」

「おい馬鹿やめろ! 危険だ!」


 茶髪男は必死に止めるが、可愛い子犬に目が眩んだ男は聞く耳を持たず、その子犬に向けて手を差し出す。


「へへ、大丈夫っすよ。ほら見てみろよこのつぶらな瞳。さっきのヌーとかいう犬の目と違って邪気が――」


 あぁ!? 邪気だと!? 誰が――と抗議のために吠えようとしたのだが、ガリンッ!という不気味な音が聞こえ、それと同時に男の声が途切れたのを不信に思って口を閉じた。


「くぅ〜ん」


 相変わらず可愛いらしくお座りをするクリンとした瞳のチワワ。しかし今やその口元は真っ赤に染まっていて、なにやらモゴモゴと口を動かしていた。恐る恐る手を差し出した男の手元を見ると――


「う、うぎゃああああ!! ゆ、指が、指がァァァァァァァ!!!!」


 男の中指が綺麗さっぱり無くなっており、そこから噴水のように赤い液体が飛び出している。

 その真紅に反応し、


「きゃん!」

「わん!」

「くぅぅん!!」


 まるで獲物に群がるピラニアのように子犬の群れが男に飛びかかっていき、あっという間に男の身体が押し倒され犬の体毛に埋もれて見えなくなってしまった。一見すると子犬の集団がじゃれているような微笑ましい光景だが、その向こう側ではくぐもった男の悲鳴が絶え間なく続いていて、時折子犬と子犬の隙間からピュッと赤い噴水が飛び出している。

 う、うわぁ……グ、グロイ……。さすがの俺もドン引きだ……。確かに助けを求めた俺だが、そこまでやらなくても……。


「はは、微笑ましいなぁ。あんなに犬とじゃれあって。羨ましいぞ」

「まるで子犬の布団だ……俺も埋もれてぇ……」

「いいなぁ……私も埋もれたい……」


 えぇ!? 男達もケリーも何言ってんの!? もしかして指が喰い千切られたの見てなかった!? 確かにすぐに子犬が群がって見えなくなったけど……。ほら、血が噴き出してんじゃん! 悲鳴が聞こえてんじゃん! 和んでないで仲間を助けろよお前ら!

 くそ、俺はなんで敵の応援なんか……。でもこのままでは本当に男の肉が食い尽くされてしまいそうなので、


『お、おい君たち……? あ、あんまり怪我させるなよ……?』


 と、恐る恐る小さな悪魔達に声をかける。するとボスの命令を受けて子犬達は補食を一時停止するが、俺の方を見て『なにがいけないの?』とでも言いたげに無邪気に首を傾げてきた。そのかわいい口元は血まみれである。

 こ、こえ〜〜。子犬ゆえに悪意が無いのが余計に怖い。ただ本能に従って補食しようとしているだけ、あるいは本当にじゃれているだけなのだ。


『ほ、ほら、怪我させると可哀想だろ……? いくら敵とはいえ……』


 ビビりながら子犬に進言すると、子犬達は『はぁい』と言って補食をやめた。

 その一方で、一足遅れて俺達に合流したブルドッグがワンワンと吠える。


『さすがヌーのダンナ! 敵にまで情けをかけるとは! なんと慈悲深い!』

『え? あ、あぁ……』


 いや、グロくて見てられなかっただけなんだけど……。なんか知らんけど好感度上がったっぽい。


「う、うわぁあああああ!! 助けてぇえええ!!」


 ピラニア達の動きが止まった隙に、押し倒されていた男は群がる犬を掻き分けて逃げ出した。彼は防具や服を喰い千切られてほとんど裸の状態になっており、所々生々しい歯型が付いて出血しているのが見えた。しかし傷は浅いように見える。身体の欠損が最初の指だけなのが不幸中の幸いか……。


「う、うわああああ! なんだぁァ!? じゃれてたんじゃないのかよ!?」


 血まみれで駆けていく仲間を見て、ようやく他の武装男も状況を理解したようだ。


「こ、殺せぇぇぇぇ!! 犬どもを殺せぇぇぇ!!!」


 各々の武器を手に迫り来る犬を迎撃しようと構える。しかし犬達の方が一歩早い。すでに犬達は武装集団に飛びかかり、十数匹の犬が流星のように降り注ぐ。小さな犬とはいえ、同時に十数匹に伸し掛かられた男達は背中から地面に倒された。


『でもヌーのダンナ、食い殺しちゃいけねぇとなると、どうすりゃいいすか?』


 こいつら食い殺す気だったのかよ……。

 キバをむき出しに、地面に押し倒した男の上でグルルと喉を鳴らす野良犬達。俺はその凶暴性にちょっとビクビクしながら、なんとか穏便に武装集団を制圧する方法を考える。確かに、伸し掛かっただけではすぐに振り解かれてしまいそうだ。どうにかして抵抗力を奪わないと……。


『そ、そうだな……ペロペロ……とか?』


 咄嗟だったのでそんなことしか思いつかなかった。しかしそんな俺の命令をバカ真面目に聞く野良犬達は、さっそく押し倒した男達をペロペロと舐め回し始める。


「キャンキャンキャン!」

「ちょ、や、やめろっ……そ、そんなところ舐めるなぁ……! んんっ!」


 子犬達の小さな舌がおっさんの屈強な身体を這っていき、それに応じておっさんの身体がビクンビクン跳ね、口から甘い吐息が漏れる。

 お、おぇぇ……。

 自分で言っといてなんだが、おっさん達がペロペロ舐め回されて悶える姿を見るのは中々キツイな……。でもこれで抵抗力は奪えたから結果オーライか……。


「お、お姉ちゃん……何やってるの……」


 唐突にジェイミーのドン引きした声が聞こえたので、彼女の視線の先を追ってみる。

 そこには、地面に仰向けに寝転がるケリーの姿が。彼女は俺達が冷たい目で見ているのにも気付かず、


「ま、まだかな……まだかな……もふもふ……ペロペロ……ハァハァ……」


 まるでサンタさんが来るのをこっそり待つような子供のように、瞳を閉じ、手を胸の前でクロスさせ、やけに荒い呼吸で身体をソワソワさせている。

 どうやら男達と同じように自分も犬の大群に埋もれてペロペロされるのを待ち望んでいるようだ。

 しかし犬達は、ケリーは俺の味方だと理解してか、それとも彼女の異常な気配を察してか、ケリーには近寄ろうとしない。道は大量の犬で埋め尽くされている程だというのに、川の流れを分かつ岩のように彼女の周囲には不自然な空間が生まれていた。


「くぅ〜んくぅ〜ん」

「きゃっ!? ちょ、ちょっとわんちゃん達! く、くすぐったいよぅ〜」


 姉の一方で妹の足元には大量の犬が擦り寄り、ジェイミーの足をペロペロと舐めたり頬を摺り寄せたりしていた。

 あ! このエロ犬ども! 俺のご主人様になにやってるんだ! ジェイミーをペロペロしていいのは俺だけだ! ケリーの方へ行け! そんな感じの意味を込めてグルル……と低く唸って足元の犬どもを睨みつけると、野良犬達はそそくさと退散していった。そしてケリーは素通りして男達に飛びかかっていく。


「くそ! なんで私の所には来ないんだ!」


 寝転んで待つのをやめたのか、今度は走り回って犬を追いかけるケリー。

 彼女は十数匹の犬で埋もれてペロペロされている男達を羨ましそうに見ながら、『ほら! こっちだ! おいで! おいで!』と鬼気迫る表情で犬に近づこうとしては、避けられていた。


「う、うぅぅぅ……なんで、なんで私の所に来ないんだぁ……」


 つ、ついに半泣きになった……。あのケリーがこれしきのことで半泣きになるとは……。

 彼女の周囲には、子犬に群がられてペロペロされている30〜40代くらいのヒゲ面のオッサン達。そのオッサン達を羨ましそうに、目に涙を浮かべて光の灯っていない目で見つめるクールな金髪美少女。なんかすごい絵面だ。

 あまりにもケリーが不憫だったので、


「わ、わん」


 優しく声を掛けてみる。すると俺の声に反応したケリーはパッと顔を上げてこちらを向き、俺と目が合った瞬間パァっと顔を輝かせて、


「ヌゥゥゥゥゥ!!!!」


 物凄い勢いでこっちに駆けて来た。ジェイミーの体がビクッ! と反応していたが、ケリーの尋常ではないスピードを前に逃げることも出来ず、その場に固まってしまう。ケリーはそのままジェイミーの谷間にダイブ。そこに居る俺に頬を摺り寄せてきた。


「ヌゥゥゥゥ! 私にはお前しかいないよぉ!!」

「わ、わん……」


 い、痛い……。頬ずりが強力すぎるよケリーお姉ちゃん……。せっかくのスベスベのお肌も力が強すぎて堪能できない。

 

「お姉ちゃん……」


 胸に顔を埋め、情けなく泣き喚く姉の姿を前に、頭上からジェイミーの暗く澱んだ声が聞こえる。ケリーは妹の前ではクールを気取っていたため、こんな姿をジェイミーは見たことがなかったのだろう。妹の巨乳に顔を埋める貧乳の姉……。ハタから見ればなんと情けないことだろうか……。


「ヌゥゥゥゥ! ヌゥゥゥゥ!」

「お姉ちゃん、自分で持って」


 いい加減スリスリしてくる姉が鬱陶しくなったのか、ジェイミーは俺のことをケリーに押し付ける。その際に、いつも笑顔で天使のようなジェイミーが、死んだような感情の篭っていない目をしていたのが見えて何だか胸が苦しくなった。


「ヌー! 好きだ! ヌー!」

「わ、わぅぅぅ……」


 い、痛い……。苦しい……。気持ちは嬉しいけどそんなにギュッと抱き絞めないでくれ……。ジェイミーに助けを求めるが、彼女は姉を視界に入れないようにボーっと空を眺めていて、放心状態だ。


「オォォイ! お前ら俺を無視するんじゃんねぇ!!」


 あ、茶髪男のことすっかり忘れていた。

 慌ててそちらに目を向けるが、そこに立つ物体を見てギョッとした。全身モコモコの巨大生物が居たのだ。

 茶髪男は大量の犬が飛び掛かってきても押し倒されることなく耐えていたようで、全身に十匹以上の犬を纏わり付かせながらプルプルと足を震わせていた。犬で出来た服を着ているようだ。それでも銃口をこちらに向けたままなのだから凄い根性である。


「こ、この野郎ども、散々無視しやがって……」


 若干声が掠れている。そして少し涙目だ。たぶん俺達がケリーの奇行に呆気を取られている間にもこの茶髪は『撃つぞ? おい撃つぞ? 本当だぞ? 無視するな!』みたいな感じで叫んでいたのだろう。今思えば、さっきからそんな声が聞こえていたような気がしないでもない。それでも撃たないで待っていてくれるとは、あれ、こいつ根は意外とイイ奴なんじゃ……?


「なんだ、まだ居たのか。忘れていたぞ」


 言ってやるなケリー。

 ケリーは俺に頬ずりをするのを止め、面倒臭そうに犬まみれの茶髪男を見る。そんなケリーに対して、茶髪男はニヤっと口元を歪めた。


「へへ、自分から俺の射線に入ってきてくれるとはな……」

「……え? あっ! しまった!」


 え? なに? 馬鹿なのこの子?

 一瞬前まで冷めた目で茶髪を見ていたのが一転、姉妹二人とも銃の射線上に入ってしまったことに気がついて、ケリーあたふたと慌て始めた。


「くっ! 罠か!」


 ちがう君が馬鹿なだけだ。


「とりあえずジェイミー! 私の背後に隠れるんだ!」

「あ、はい。わかりました」

「なぜ敬語!?」

「オラァ! また俺を無視しやがってぇ! マジで撃つからなぁ!」


 茶髪男が指を引き金に掛けたのが見えた。しかし掛けるだけで、それを引こうとはしない。脅しのようだ。犬の重量に必死に耐えてプルプル震えるため、狙いも定まっていない。

 しかしそこで、


「きゃん!」


 一匹の犬が、既に犬だらけの男にさらに飛びかかる。

 ちょうどその時、ブレブレだった銃口が偶然にもぴったりと俺達の方向へと重なった。


「あ」


 そして犬が飛びかかった衝撃で指に力が入ったのか、間抜けな声と共に引き金が引かれる。それが見えた瞬間、俺はケリーの胸から飛び出そうとするが、彼女にがっちり抱きつかれていたため一歩出遅れた。

 鳴り響く、乾いた銃撃音。

 空を切る弾丸。

 まるで時がスローモーションになったかのように、その軌道がハッキリと見えた。

 このまま銃弾が直進すれば間違いなく俺の眉間に突き刺さる。

 空中で身体を捻じれば避けれるだろうか? いや、避けたところで後ろの姉妹に直撃する。

 やばい、本当にやばい。このままでは――。

 眼前に迫った銃弾を前に死を覚悟した瞬間、


「ばぅ!」


 一瞬、黒い影が視界の端に映り込んだかと思うと、視界が180度回転。

 気がつくと空を仰いでいた。

 すぐに何かに突き飛ばされたのだと察し、慌てて起き上がる。


「いたた……なんだ?」


 ケリーとジェイミーも同じように突き飛ばされたようで、地面に倒れていた。

 何が俺達を突き飛ばしたのだろう。直前まで俺達の身体があった場所に目を向ける。

 そこにはグッタリと横たわる黒い影が。すぐにその正体が分かった。


『ダ、ダルシー……?』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ