第24わん 美少女にかかってしまったハチミツを犬がペロペロと舐め取るだけの、至って健全で微笑ましい光景
またまた遅くなってしまい申し訳ありません。
タイトル通り、至って健全で微笑ましい光景を描写していますが、人によっては微エロに見える可能性があるかもしれません。微エロが苦手な方はご注意ください。
「それにしてもヌー。また汚れてしまったな」
「わん?」
部屋に戻るなり、ケリーはジェイミーの腕に抱かれる俺の身体を眺めてそんなことを言った。
確かに、先ほどナンパ男達を撃退するために小便をぶちまけたので、自分自身も小便まみれだ。ちょっと気持ち悪い。
「ヌーちゃん、またお風呂入ろうね〜」
「わん!? わお〜ん!」
マジで!? 風呂! いやっほう! またジェイミーと風呂に入れる!
昨日風呂に入ったときは、何故か途中から記憶が無くなってしまったからな。今度こそちゃんと脳裏に焼き付けよう。
「それじゃあさっそく、れっつごー!」
「わふぅ〜!」
俺を腕に抱いたまま、というよりも胸に挟んだままスキップをし出すジェイミー。ぶるんぶるんと弾む二つの鞠に挟まれ、俺の身体も上下に揺れてちょっと酔いそうだった。
「ジェイミー、昨日みたいに長風呂するんじゃないぞ」
しかし風呂に向かおうとした矢先、ケリーに声をかけられてジェイミーは足を止めた。
「き、昨日……」
姉の言葉によって何かを思い出したのか、急に立ち止まって黙りこくってしまう。肌から伝わってくる体温も若干上昇しているような気がした。
「ジェイミー? どうした?」
「くぅん?」
頭上を見上げてジェイミーの顔を窺うと、彼女の頬は燃えるように赤くなっていて、俺と目が合うと恥ずかしそうに視線を逸らしてそっぽを向いてしまった。そして腕に抱く俺のことをケリーに押し付け、
「き、昨日は私が一緒に入ったから、今日はお姉ちゃんが入ったらどう!?」
動揺しているのか、やや裏返った声でそう言った。
「わ、私が?」
戸惑いつつ俺を受け取ったケリーは、じっと俺の顔を覗き込んでくる。ジェイミーと同じく、エメラルドグリーンの宝石のような瞳。しかし優しい印象を受ける妹のものとは異なり、クールで凛々しい雰囲気の吊り目だ。ケリーはその宝石のような瞳で俺のことを見つめ、しばらく考え込んだ後、微笑みながら答えた。
「そうだな。ヌーには助けられたお礼もあるし、今日は私が洗ってやろう」
「わん!?」
マ、マジで!? ケリーとお風呂!?
てっきり拒否するかと思ったが、予想外にあっさり了承されたので、驚いて変な鳴き声が出てしまった。
「なんだ? 嫌なのか?」
「わ、わんわん!」
そんなことない! と俺は全力で首を横に振る。
嫌なわけがない! 嬉しい! 幸せすぎる! またおしっこ漏れそう! ジェイミーだけでなく、まさかケリーが一緒に風呂に入ってくれるなんて!
「わふぅ〜ん」
「いやらしい顔だな……エロ犬め」
風呂のことを考えると、自分の意思とは関係なしに自然と尻尾がブンブンと左右に揺れてしまう。顔はいつも通り可愛らしい子犬のハズだが、ケリーにはいやらしそうに見えるらしい。
「じゃ、じゃあよろしくね~お姉ちゃん」
「ああ」
そう言うジェイミーの言葉は少しほっとしたような、だけども少し残念そうな声色だった。
「ヌーちゃんとお風呂に入るの、とっても気持ち良いんだよ〜」
「…………気持ち良い?」
確かに風呂に入るのは気持ちの良いことだが、ジェイミーのやけに意味有りげな言葉にケリーは少々引っかかったようだ。ケリーが首を傾げると、ジェイミーは俺をチラリと見た後、『なんでもないよぅ!』と顔を爆発させて自室へ走って行き、そのまま籠ってしまった。
「ジェイミーのやつ、どうしたんだろう。ヌーと風呂に入って以来様子が変だな……」
「わうん?」
俺を訝しむように見るケリーだが、俺自身も記憶がないのだから分からない。
「まぁいい。風呂に行こうか」
「わん!」
ジェイミーの様子に二人で首を傾げながら、俺達は風呂に向かった。
到着すると、ケリーは俺を浴室に置いて一度自室に戻って行った。着替えを取って来るそうだ。去り際、やけに嬉しそうに『待て!』と命令して出て行ったのには何も言うまい。
俺は言われた通り、浴室の中央に大人しくちょこんと床に座り、ケリーが戻って来るのを待った。
「わふぅ〜ん」
ケリーとお風呂かぁ。想像しただけで尻尾の揺れが収まらない。楽しみだなぁ。まさかこの短期間で美少女二人と風呂に入ることが出来るとは。もし俺が人間だったら絶対に不可能だっただろう。
……なんかもう人間に戻らなくてもいい気がしてきたぞ。一生犬のままでいようかなぁ。犬のままなら毎日こうして美少女と一緒に風呂に入れるし…………いやいや! 何考えてるんだ! 俺は人間に戻る! わんダフルランドに行って人間になると決めたんだ!
俺の決心が鈍りそうになっている最中、浴室の扉が開きケリーが戻ってきた。
「ま、またせたな……」
バスタオル姿のケリー。普段は衣服に隠された素肌が露になっている。透き通るような純白が眩しい。そして、そこに被さる黄金の髪。一切の乱れもない絹のような髪が、胸の辺りまで真っ直ぐ伸びている。それが新雪のような白地によって強調され、輝いて見えた。
ケリーは肉付きの良いジェイミーとは対照的に、引き締まってスレンダーな体型だ。やはり鎧を着て剣で戦うだけあって、鍛えているのだろう。しかし決して筋肉質ということはなく、むしろ華奢な印象だった。
「あ、あまりジロジロ見るな」
ケリーは両手を胸の前でクロスさせ、身体を隠すような仕草をした。ジェイミーと比べるのは悪いが、ケリーの胸元はやはり寂しい。しかし高い身長が相まって、スレンダー過ぎる胸もむしろスタイルを際立てていると思う。バスタオルの裾から伸びるスラっとした美脚が彼女の一番の魅力だ。
「わ、悪かったな。ジェイミーのような色気が無い身体で」
だから俺の心を読むな。しかし普段クールで勝ち気な彼女が恥らうその姿は、なんとも扇情的だな。なんとか平静を保とうとしているが、さっきから尻尾が勝手に動いてしまうのが止められない。
「ま、まったく。このエロ犬。ほら、さっさと身体を洗うぞ」
恥ずかしさを隠すように、せかせかと手に持っていたボトルを床に置くケリー。だが彼女の手に、もう一つボトルのような物があることに気がついた。床に置いたボトルは、昨日ジェイミーが持ってきたものと同じ犬用のシャンプーだろう。じゃあ手に持つもう一つはなんだ? 風呂で使うような犬用の商品は、シャンプーしか買ってなかったと思うけど……。しかし注視することによって、すぐにその正体が分かった。
瓶だ。
中に黄金に煌めく液体が詰められた瓶。黄金の液体と言っても、さっき俺が股間からぶちまけたものとは違う。アマンダさんの店で購入したものだ。確か、犬用のハチミツだったか。
何故ハチミツを風呂場に持ってきたんだろう。風呂に入りながら舐めるのか?
首を傾げる俺のことを、ケリーは無言でちょいちょい、と手で招いた。意味が分からなかったが、とりあえず彼女に近づいてみることにする。
「せ、せっかく買ったのだし、使わないともったいないからな……」
ブツブツと自分に言い訳するように呟くケリー。彼女は屈んで俺に向き合うと、その瓶のフタを開け、指先で中身を少しすくい上げた。そしてそのまま、それを俺に差し出してくる。細指に纏わり付いた黄金の液体がキラキラと輝く。なんだ? これを舐めろってことか?
訳が分からなかったが、促されるままそのハチミツを舐め取ってみることにした。
「わうん……」
甘い。黄金色の液体が舌先に触れ、甘ったるい風味が口の中に広がる。まぁ味は普通のハチミツだよなぁ、と考えながら一口飲み込んだその瞬間、
――プチン
頭の奥で何かが切れた音が聞こえた。そして――
「ワンワンワンワンワンワンワン!!!」
「……んっ」
一瞬の出来事だった。
気がつくと、ケリーの指先からはハチミツがキレイさっぱり無くなっていて、代わりに俺の唾液がべっとりとくっ付いていた。
――あれ? 今、俺なにをしていた? 何が起こったんだ? 一瞬意識が飛んだような……。
よく覚えていないが、ハチミツを舐めた瞬間、頭の中で何かが切れて理性が抑えられなくなり、無我夢中でハチミツを舐めていたような気がする。ほんの数秒であったが、その間の記憶がぼんやりと靄がかかったように鮮明ではない。
やはりこのハチミツが原因だろうか? 恐ろしい。自我を失うほど夢中で舐めていたなんて。でもアマンダさんの話では犬の健康に良い成分が入っているそうなので、悪いものではないのだろう。
「……ヌー」
あ、やべぇ。これから身体を洗うとはいえ、ケリーの手をヨダレまみれにしちゃったから怒ったかな。
「お、美味しかったか?」
「わ、わん」
あれ、怒ってない? それどころか何故か顔が赤いぞ。怒りによる赤面ではないように見える。
顔を赤らめつつ、ケリーはハチミツを舐めとられた指先をじっと見つめていた。その瞳の奥は何かを期待するかのように輝いている。
「ヌー、この瓶はな、つるつる滑って持ちにくいんだ」
「わん?」
は? 急に何を言い出すんだ?
言いながらケリーは、浴室の床に尻を着いた。それによってさらにバスタオルの裾が短くなる。向こう側が見えそうで見えなくてもどかしい。ケリーは座ったまま足を伸ばすと、
「うわー手が滑ったー」
わざとらしく棒読みで呟きながら、手に持つ瓶を傾けた。ハチミツが瓶からビチャビチャと零れ、ケリーの足にかかる。手が滑ったと言うが、彼女は傾けた瓶を戻そうともしない。
「……」
滴り落ちるハチミツを無言で見つめていたケリーは、右足の太ももから足先にかけてをハチミツで汚すと、ようやくそこで傾けた瓶を元に戻した。
粘性の高い液体が白くキメの細かい肌に弾かれ、ヌラヌラと足を這うように流れ落ちる。黄金に輝くハチミツをかけた純白の美脚は、まるで何かのスイーツであるかのような錯覚を与え食欲をそそる一方で、美術品のような美しさも感じさせた。
「わ、わうん……」
視覚だけでも理性を失いそうなくらい魅力的だが、それに加えて甘い香りが鼻を刺激し、俺の思考力を削いでくる。
俺の身体は勝手に動いた。身体がハチミツを求めているのだ。舐めたい。舐めたい。何か考える余裕もなく、ハチミツを求めてケリーの足に舌先を伸ばす。そして、再びハチミツを摂取した瞬間、
「ワンワンワンワンワンワンワン!!!」
またもや理性が吹き飛んだ。しかし少し耐性が付いたのか、今回は状況を認識する余地はあった。
「……あっ」
ペロペロペロペロと、小さな舌をケリーの華奢な足に這わせていく。すると頭上から、こそばゆそうな声が聞こえた。だがそんなことどうでもよかった。今はただ、ハチミツを舐めることしか頭に無い。まるで魔法にでもかかったように、俺の頭の中はハチミツでいっぱいだった。
「……んあっ……ヌー……」
舌を使って、指に付着した液体を爪の隙間まで丁寧に舐め取る。甘い。ハチミツの風味が口に広がり、さらに脳を揺らした。
次に指と指の間に舌を滑り込ませ、ねっとりと舌を絡みつける。舌を左右に動かす度に、ケリーがくすぐったそうにモジモジと足をくねらせている。
「こ、こら、ヌー。舐め過ぎだぞ……」
小指に纏わり付いたハチミツを舐め取り終え、続けて足の甲に舌を移動させる。骨っぽくてコリコリとしていたが、スベスベの舌触りが心地良い。
「……はぁ……っあ……」
次第にケリーの身体が火照ってきたのが舌先から感じられた。それに伴って呼吸も荒くなってきている。
足の甲のハチミツを舐め取り、今度は舌を昇らせて足首にある液体を舐める。ヌルヌルの液体が潤滑剤となり、滑らかに舌を這わせることが出来た。
「やんっ……こら、ヌー……ダメっ……」
徐々に、平常のケリーからは聞くことの出来ないような甘い声が、彼女の口から漏れてきた。きっとくすぐったいのだろう。誰だって足を舐められればくすぐったくて変な声が出るに決まっている。しかし今の俺には、ケリーのことを気遣う余裕などなかった。ただただ、ハチミツを舐めたくて仕方がない。俺は飢えたケモノだ。食欲に支配され、ハチミツを舐め取るケモノになってしまった。犬のヌーさんと呼んでくれて構わない。
「ヌー……ダメ……だって……」
足首から脛に舌を這わせる。本当に滑らかな肌だ。もちろんハチミツのヌルヌルのせいもあるだろうが、元々ケリーの肌がスベスベなのだ。舌の移動を阻害するものが一切無い。だからこそ、俺の舌の感触が全て伝わり、ケリーを悶えさせているのだろう。
「それ以上は……あっ……」
膝を超え、舌は太ももに達した。その瞬間、今までとは全く違う感触が舌を刺激する。
柔らかい。
そして、ハリがあって弾力がある。
太ももを一舐めして、さらに俺の理性は消滅しかけた。それほどまでに、甘美な感触なのだ。
今までの骨っぽい舌触りとは全く異なる、女性らしい柔らかさ。目には見えないが、皮膚の向こうに程よい筋肉が付いていて、それが気持ちの良い弾力を生み出している。ジェイミーの胸部の感触とはまた別の種類の感触だが、負けず劣らず素晴らしい。
「あっ……ヌー……やぁ……」
今までとは違った感触が生じているのはケリーも同様のようで、彼女の身体は桜色に燃え上がり、全身から玉のような汗が吹き出し始めた。ペロペロと動かす俺の舌に呼応して、ピクピクと小さく痙攣している。
「んくぅ……ふぅっ……」
ケリーの肌には多量の汗が滴り、バスタオルが真っ赤に火照った身体に張り付いている。浴室とはいえ、まだシャワーすら浴びてないのにも関わらず、ケリーは長時間サウナにでも入っていたかのような状態だ。
彼女は指を噛み、太ももから押し寄せる舌の感触に耐えているようだ。瞳を閉じ眉を顰めて、必死に声を我慢している。
「あっ……や、やめ……あぁっ」
だがそんな抵抗、俺の前では無意味だった。舌を左右に動かしたり、時にくすぐるように優しく触れてみたり、はたまた肉を強く押してみたり。その度にケリーの身体は小さな電流が走ったような反応を示し、口からは声が漏れてしまっていた。
「んっ……ほんとにっ……もう……だめっ……」
ケリーの身体の震えが一段と大きくなってきた。背筋を反らし、身体が強張っている。体内の奥から押し寄せる感覚を必死に抑えているように見えた。
「わ、わぅ……?」
しかし後少しというところで、舌先から感じるハチミツの感触が無くなった。ヌルヌルの感触が無くなり、スベスベの肌の感触が直に伝わってくる。どうやら、足に付着していたハチミツを全て舐め終えてしまったようだ。
ケリーの反応とハチミツの味をもっと楽しみたかったのに、残念だ。ハチミツもっと舐めたいなぁ……。
「……はぁ……はぁ……こ、この……エロいぬ……」
俺が舌の動きを止めると、息も絶え絶えといった様子のケリーは、力が入らなくなったのか床に背をつけてグッタリと寝転がってしまった。
その動作によって、俺の瞳にあるものが映り込んできた。
「……わん?」
バスタオルの向こう側。つまり、足と足の中央。
明かりに照らされ、そこがヌラリと煌めいたのだ。
よく見えないが、きっとそこにもハチミツが付着しているのだろう。先ほどケリーは足にしかハチミツをかけなかったが、たぶんハチミツが垂れてしまったのだ。
「わ……ワン……」
「ヌ、ヌー? ど、どうしたんだ?」
ケリーの足と足の間に、ハチミツがある。
……もっと……舐めたい。ハチミツ……。ハチミツ……。ハチミツ!!
「ワオオオオオン!!」
「ちょっ!? ヌー!? そこはっ……あっ……!」
――ハチミツを求めてケリーに飛びかかったところで、完全に俺の意識は無くなった。
翌日目が醒めたとき、何故か舌が異様に疲れていて、俺とケリーの身体にはダルシーと同じ匂いがこびり付いていた。