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第16わん 犬同士がペロペロじゃれ合う、至って健全で微笑ましい光景

タイトル通り、至って健全で微笑ましい光景を描写していますが、人によっては微エロに見える可能性があるかもしれません。微エロが苦手な方はご注意ください。


 目の前に直立する、二足歩行の生物。その生物はダルシーを名乗った。しかしその姿は、先程まで

の犬の姿と似ても似つかない。

 まず第一に、肌を覆っている体毛はなく、毛があるのは頭部のみだ。

 一切の布を身につけていない、褐色の素肌。キメ細やかでハリがあり、若々しい様が見て取れる。髪の毛は漆黒で艶があるものの、少しボサボサとしていて、腰の辺りまで伸びている。それはダルシーの黒い毛並みを連想させた。

 四肢も犬のものではない。むっちりとした太ももを持つ、スラッと伸びた長い二本足が、身体を支えている。また、手に肉球はなく、華奢な五本の指が生えていた。

 そして決定的に異なるのは、その顔付き。狼のような面影は全く無い。パッチリとした睫毛が覆う瞳は、レモンのような綺麗な黄色で、眠そうに目尻が垂れている。すっと通った鼻筋は犬鼻ではなく、柔らかそうな唇を携える口も、もはや犬のものではなかった。


 人間。

 その姿はまさに人間だ。

 ダルシーが人間になった。

 いや、それでも十分驚きなのだが、それよりも驚くべきことがある。

 その身体の胸部に、二つの大きな膨らみがくっ付いていること。そして股間に何もくっ付いていないことだ。


 女の子。

 ダルシーは女の子だったのだ。


「……ひどいなぁ。……メスって気がつかないなんて」


 彼……いや、彼女か。彼女はそのレモン色の瞳を細め、不満そうに俺を見る。その声も犬の鳴き声ではなく、完全に人間のモノだ。


『いや、ごめ、だ、だって……』


 テンパる俺に、ダルシーは優しく微笑みかけてきた。犬だったときと顔は完全に別物だが、その仕草や表情はどことなく似通う所がある。


「……ふふ、いいよ。……まだ犬になったばかりだから……匂いで判断するの難しいよね」

『あれ? 俺の言ってること分かるのか?』


 ダルシーはヒト語を話すが、俺はわんわんと吠えているだけなのに。


「……うん。……人間の姿にはなれるけど……元は犬だからね。……それに、完全に人間になっているワケじゃないし」


 頭部のイヌ耳を見せびらかせるようにピコピコ動かすダルシー。見た目は完全に人間である一方で、イヌ耳とイヌ尻尾が生えているこの姿は、犬神を連想させる。


『人化スキル……犬神から授かったって言ったよな?』

「……うん」


 ダルシーは生まれたときから犬だと言う。人間の姿になれるのは、犬神から授かったスキルのおかげらしい。そんなスキルがあるなんて驚きだが、死んだ俺のことを犬として転生させられるくらいなのだから、それくらい不思議ではない。


『ど、どうやってそのスキルを貰ったんだ!?』

「……犬神様と会ったとき、彼女に気に入られて……スキルを授けてもらったんだ。……あ、別に私だけが特別ってわけじゃないよ。……人化スキルを授けてもらった犬は……何匹かいる」


 ってとは、ダルシーだけが使えるユニークスキルではないということか。俺もそのスキルを手に入れれば……。


『俺もそのスキルを授けてもらえるかな!?』

「……お願いすれば……貰えるんじゃないかな」


 もしかして結構簡単に授けてもらえるのか!? あの白い空間で出会ったとき、犬神は俺のことを気に入ったと言っていた気がする。彼女と会えれば、俺も人化スキルを貰える可能性は高いかもしれない。となると問題は犬神ともう一度会えるかどうかだ。ダルシーはどうやって彼女と出会ったのだろう。


『どうやったら犬神に会えるんだ!?』

「……うーん……アマンダに聞いてみれば……もしかしたら、会えるかも」


 アマンダさん!? あの人は犬神と繋がりがあるのか!?

 意外な人の名前が出てきたが、細かいことは気にせず俺はダルシーに質問を続ける。


『じゃあ、アマンダさんに聞いてみてくれないか!?』

「……いいよ。……だけど、それは明日にしよう。……今日はヌーのご主人もいるし」


 確かにジェイミー達の前では、こんな話できないな。

 仕方ない。すぐにでも犬神に会いたいところだが、一日くらい我慢しよう。


『わかった……明日お願いするよ』


 まさか、犬神と会えれば人間になれる可能性があるとは。犬に転生したことを受け入れつつあったが、やはり人間に戻れるものなら戻りたい。しかもアマンダさんに頼めば犬神に会えるかもしれないなんて。人間に戻ることは諦めていたが、意外と遠い道のりではないのかも?

 てかアマンダさん、一体何者なんだ? 一応、犬神も神様だよな? 神様と繋がりがあるなんて……。


「……とりあえず、私からもアマンダに伝えておくね」

『ダルシーが擬人化スキル持ってること、アマンダさんは知ってるのか?』

「……うん。……基本的には犬の姿だけど……たまに人間の姿でおしゃべりとか……色々するよ……色々」


 人間になれれば飼い主と会話も出来るんだよなぁ。いいなぁ人間の姿。スラっとした長い足。やっぱり犬より歩きやすそうだよね。腰のくびれたラインも犬なんかよりも人間のほうが魅力的だ。そしてやっぱり、何と言っても胸部にある二つの爆弾! これこそ犬にはない魅力だ。……それにしても、ダルシーが女の子だとはビックリだ。しかもちょっと……というか、かなり……いや、めちゃくちゃ可愛い。超美少女だ。


「……そんなに私の身体見て……ヌーのエッチ」

『え!? い、いや! ちがっ!』


 しまった。人間の姿を観察していたつもりが、いつの間にかダルシーの色っぽい姿を凝視していたようだ。


「……おっぱいばっかり見てる。……気になるの?」

『見てない! 全然見てない!』

「……ふふ。……ヌーならいくらでも……見ていいよ」


 焦る俺の反応を楽しむように、全裸のダルシーは身体をくねくねと動かして、その豊満な膨らみを強調した。女性にしては身長も高く、そして出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。なんとも妖艶な身体付きだ。思わず見蕩れてしまっていたが、慌てて視線を逸らした。


『つか服着ろよ! 恥ずかしくないのか!?』

「……普段から裸だもん。……別に恥ずかしくないよ」


 たしかに犬は裸だけどさぁ……。てかよく考えたら俺も全裸で外を出歩いているのか。そう思うと、途端に恥ずかしく思えてきた。

 そんなことを考えていると、ダルシーは唐突に、


「……ヌー。……抱っこしていい?」

『え? お、おい!?』


 俺の了承を得る前に、俺の身体をひょいっと拾い上げ、抱き締めた。胸に引き寄せてぎゅっと抱き締めるものだから、俺の身体に両サイドから柔らかな圧力が迫ってくる。おお……。素晴らしい。ジェイミーに負けず劣らずの大ボリューム。ダルシーの方が少し弾力が強いかな。スベスベもちもちの肌が心地良い。ハチミツのような甘い香りが鼻をくすぐった。


「……ヌー……かわいい」

「わふぅ〜」


 ダルシーは俺の頭から背中にかけて、ゆっくりと手を這わせる。気持ち良くて思わず変な声が漏れてしまった。さすが犬。撫でられて気持ちの良いポイントを心得ているようだ。

 頭上からはダルシーが愛おしそうに俺を見下ろしている。急に近づいた顔に、思わず心臓が高鳴った。


「……ワンコをナデナデできるのは……人間の特権。……このスキルを手に入れて良かった」

『お、お前、そのためにスキルを貰ったのか……? わぅん……』


 ダルシーの指が俺の耳の付け根をくすぐる。身体にゾクゾクとした快感が走った。指はそのまま皮膚を伝い、今度は喉元を撫で回す。彼女が指を動かすその度に、口から変な声が漏れてしまう。


「……うん。……私、ワンコ大好き。……ナデナデするのも……されるのも……大好き」


 話しながらも、ダルシーは俺の身体中を撫で回してくる。


「……でも、メスに限るけど。……オス犬は……可愛くないから……イヤ」

『お、俺、男だけど?』


 やばい……ダルシーの指が伝う度に、天国に昇りそうな快感が襲ってくる。


「……知ってるよ。……誰かさんみたいに……性別間違えたりしないよ」

『うぐっ』


 罰とでも言わんばかりに、ダルシーはきゅっとワキを締め、胸を中心に寄せた。それによって俺の身体を挟む肉圧が強まる。さらに強まる柔らかさと、的確に気持ち良い所を攻めて来るナデナデ攻撃により、意識がぶっ飛んでしまいそうになる。ダルシーが『ヌーは特別だから』と小さく呟いていたのが聞こえたが、天国のような心地良さによって思考回路が鈍っているため、彼女の言葉の意味が良く分からなかった。

 ああ〜やばい。天国すぎて意識が飛びそう……。しかし、


「……あんっ」


 突如と聞こえたダルシーのその甘い声に、一気に意識が覚醒した。

 え? 聞き間違いか? 今、ダルシーが……。


「……んあっ……んっ……」


 聞き間違いじゃない。急に変な声出して一体どうしたんだ。と思ったが、すぐに原因が分かった。

 だらんとだらしなく開いた俺の口から舌が出ていて、気づかぬうちにダルシーの鎖骨を舐めていたようだ。


『う、うわっ! ごめん! わざとじゃないんだ!』

「……うん。……気持ち良くなると……舌が勝手に動いて……ペロペロしちゃうよね」


 犬の条件反射的な行動なのか。無意識に舌が動いてしまってビックリした。だけど犬同士、その行動に理解を示してくれたようだ。怒られずほっとしたのも束の間、なぜか険しい表情になるダルシー。


「……だけど、全然ダメ」

『は? なにが?』


 なにがダメなんだろうか? 俺の問いかけに答えず、彼女は舌の先端をチロリと覗かせる。そして首を動かし、俺の顔に舌を近づけた。上からどんどん近づいてくるダルシーの顔。口先から可愛らしく桜色の舌を出している。ワケの分からぬ行動に一瞬硬直したが、その舌先が俺の鼻に触れた瞬間、


「わ、わぅうぅぅん!?」


 身体に電流が走った。舌先が鼻に触れただけなのに。それだけなのに、信じられない快感が全身を駆け巡ったのを感じる。


『な、な、なに!?』

「……ヌーのペロペロは……まだまだ素人。……私が……本当のペロペロを教えてあげる」


 はぁぁ!? なに言ってんのダルシー!?

 俺の混乱も構わず、ダルシーはさらに舌を伸ばし、口からべろんと舌全体を垂らす。唾液でヌラヌラと光る舌。やけに淫猥だ。

 その舌を存分に使い、今度は俺の頬をベロン、と一舐めする。その瞬間、全身にカミナリが落ちたような衝撃が走った。皮膚を伝う柔らかな舌の感触。ねっとりとした感触が不思議と心地よい。頬から感じたダルシーの舌の感触は、全身を巡り、身体の隅々まで快感をもたらした。


「わぅ、わぅ……」

「……どう? ……私の本気のペロペロ」


 あまりの気持ち良さに身体が少し痙攣している。

 先ほど犬のダルシーにも頬を舐められたが、その時とは比にならないほどの快感だ。もちろん見た目がカッコいい犬ではなく、可愛い美少女であることによる心理的な要因もあるだろうが。

 これが、ダルシーの本気……。どうやったらたった一舐めでこれほどの快感を生み出すことが出来るのだろう。そんな俺の心を読んだかのように、ダルシーは答える。


「……毎晩毎晩……アマンダに舌を酷使されてるからね。……彼女を満足させるために……毎日どれだけペロペロしてきたことか」


 アマンダさん……。ダルシーに一体なにをさせているんだ。

 ダルシーは何かを思い出すような目をして、何故か頬を赤くした。


「……おかげで身体にハチミツの匂いが染み込むし……舌が疲れて喋るのも億劫になるし……大変だよ」


 舌が疲れているからそんなにゆっくりな喋り方なのか? てっきり寡黙で喋るのが好きじゃないのか、もしくは単に眠いだけかと思っていた。

 アマンダさん、マジで何者なんだ……。犬神と接点あるようだし、ダルシーに何か恐ろしいことをしているようだし。怖い。なんか怖いよアマンダさん。


「……そんなわけで……私はペロペロが物凄く得意。……ヌーにも……このテクニックを授けてあげる」

『えっ』

「……身を持って……教えてあげる。……身体の隅々まで……ペロペロする」

『ハァァ!? いいよ遠慮しとくよ!』


 ダルシーの本気ペロペロで身中を舐められなんかしたら、快感で死んでしまう! 頬を一舐めしただけで意識が飛びそうになるんだから、全身舐められたらどうなってしまうんだ……。

 ちょっと興味もあったが、それよりも身の危険を感じた。すぐにでも逃げ出したかったが、俺はダルシーの二つの膨らみに完全に捕えられいるので、逃げ出す術がない。

 そうこうしているうちに、ダルシーのピンク色の舌が迫ってきた。


「……気持ちよく……してあげる」

「きゃうううん!?」


 ヤバイ! ダルシーを止めないと! 快感に溺れて死んでしまうぞ!

 でも、どうやって止めれば……あ、そうだ!


『だ、ダルシー! 時間! 時間やばいんじゃない!?』


 咄嗟に出たその言葉に、舌をぺろんと出したダルシーの動きが止まった。


「……あ、確かにそうだね。……そろそろ帰らないと」


 おお、意外とあっさり引いてくれた。実際、店から出てから結構経ったと思う。早く帰らないとジェイミーの買い物が終わってしまい、俺達が脱走したのがバレてしまう。

 ダルシーもアマンダさんに心配をかけたくないのだろう。彼女は夕暮れの空を見上げ、少し残念そうにため息をついた。それによって一瞬だけ、俺を挟む柔らかな圧力が弱まる。俺はその隙にぴょんとダルシーの拘束から逃れ、地面に降り立った。

 ふぅ……なんとか助かった。ほっと息をつく俺を、ダルシーは妖艶に見下ろし、


「……じゃあ今度じっくりと……ペロペロしてあげるね」


 ペロリと舌舐めずりをする。背筋がゾクっとした。身体中を舐められる……ダルシーに……俺の全身をくまなく……。どれほどの快感があるのか。想像するだけでも恐ろしい。……でも、やっぱりちょっと興味ある。


「……じゃ、帰ろうか」

『ああ……ってオイ! その格好のまま行くなよ!』


 人間の姿のまま歩き出そうとするダルシーを、俺は慌てて追いかける。


「……え、ダメなの」

『ダメに決まってんだろ! 捕まるぞ!』


 いくら美少女だからと言って、全裸で街に繰り出しては確実に捕まる。今は人通りのない路地裏だからいいが、店に戻るには大通りを通る必要があるだろう。それになによりも、頭上で揺れる二つの果実が気になって仕方ない。


「……しょうがないなぁ」


 そう言うと、ダルシーは人間の身体のまま四つん這いになった。それによって彼女の顔と、その下にぶら下がる二つの果実が目前に迫り、目のやり場に困った。


「……ヌーのエッチ」

『なんでだよ! いいから早く戻れ!』

「……はぁい」


 ダルシーはドギマギする俺の反応を楽しむようにクスクス笑いながら、身体に力を込めた。すると彼女の身体が再び煌めき、一瞬にして身体が小さくなる。目映い光が消えると、そこには真っ黒い毛に覆われた元の姿のダルシーが。犬から人間になるときは少し時間がかかったが、戻るときは一瞬のようだ。


『……急いで戻ろうか。……ちょっと走るよ。……ついてきてね』

『お、おう』


 ようやくマトモにダルシーを見れる。いくら変身した姿だからと言っても、人間ダルシーの身体付きは刺激が強すぎだ。これからも出来るだけダルシーには犬の姿のままでいてもらおうかなぁ。と、前方を駆けるダルシーを見ながら思っていると、ダルシーのお尻が視界に入った。……犬の姿だと、今度は肛門がバッチリ見えるんだよなぁ。ダルシーの……肛門……。ダメだダメだ。人間ダルシーの姿を思い出しちゃダメだ。

 俺は邪念を振り払うために必死にダルシーに追いつき、並走しながら魔術用品店へ向かった。



しつこいかもしれませんが、主人公はそう簡単に擬人化しません。

具体的には物語終盤までしません。ほぼ全編、犬目線でお送りします。


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