うちの腹筋運動
リビングにいても肌寒いと感じるようになってきたので、座布団くらいの電気毛布を用意して、ソファーの上に敷いた。
そこへ腰掛けると、じんわり暖かい。
ストーブよりも、すぐに暖まる気がするし、座布団くらいの大きさだから、電気代もそれほどかからない。
なにより電気毛布というのは、気持ちがいい。
これはいい買い物をしたんじゃないかと思う。
電気毛布を用意して何日かすると、うちの猫もその存在に気がついたようだ。
毛布の上に丸まって眠るようになった。
「あらー、占領されちゃいましたねー。これじゃあ僕が座れないじゃないですか」
自分のもののような顔で、電気毛布の真ん中に寝転んでいる。
目を閉じて、本当に気持ちが良さそうだ。
――まあ、喜んでくれているならいいでしょう。
邪魔をしないように、そっとその場を離れた。
その後も電気毛布は、うちの猫のお気に入りの場所になっている。
「ここは暖かいですよねー」
と言いながら近づいて、電気毛布に触れたときに気がついた。
スイッチが入っていない。
――これは暖かくないですね……。
それでもうちの猫は幸せそうに目を閉じていた。
夜中になると、僕の部屋にやってくるようになった。
ひとのいる部屋のほうが暖かいのだろう。
突然寒さが厳しくなった夜、とりあえずその場しのぎで、柔らかい生地のパーカーを着て寝ていたことがある。
夜中にうちの猫がやってきた。
真っ暗だが、気配だけはしている。
ベッドに登って、ガサゴソしはじめた。
「うーん? 一緒に寝ますか?」
寝ぼけながら声をかけると、僕の背中側に移動したようだ。
この日は特別に眠かった僕が、
――好きにさせますか……。
とまた眠ろうとすると、グイッと首を引っ張られた。
うちの猫だ。
うちの猫がパーカーのフードを引っ張っている。
「ちょっと……それはオモチャじゃないんです。僕の首が絞まるので、引っ張らないでください……。やめてください……」
その後もうちの猫はゴキゲンな様子で、のどをゴロゴロと鳴らしながらフードを引っ張っていた。
布団の上にも乗ってくるようになった。
僕の膝と膝のあいだがお気に入りだ。
スッポリ納まって、落ち着いている。
――うーん、重さを感じると、触りたくなっちゃいますね。
どうにも気になってしまう。
膝のところにうちの猫がいるので、下半身は動かさないようにして、上半身だけでそっと起き上がった。
手を伸ばすと、ギリギリ指の先が届くくらいのところにうちの猫がいた。
手触りを確認して、眠りについた。
少しして、僕はからだを起こした。
もう一度、うちの猫を触っておきたくなったのだ。
指先で触って、うちの猫が間違いなくそこにいることを確認して、また眠りについた。
それを何度か繰り返す。
そうこうしているうちに、眠れなくなってきた。
――考えてみると、腹筋をしているようなものですからね。そりゃあ眠れなくなりますか……。
最後にもう一度、と起き上がった。
うちの猫は丸くなっているようで、手触りだけではどの部分を触っているのかわからない。
――これはどこなんでしょう。お尻かな……? あっ……。
カプッと指先を噛まれて、頭を触っていたのだと分かった。
――頭でしたか。そうかぁ……。
なんだか満足して、僕は眠りについた。




