うちのネズミバトル!
ふと思いついて、僕はオモチャのネズミを持って、外へ出かけた。
すぐに庭でウロウロしているシマシマシッポを見つけた。
目の前で、ネズミを振ってみせる。
シマシマシッポはビクッとからだを縮めて、ネズミの人形に反応した。
こういうオモチャを見たときの反応は、猫によって違う。
うちの猫は夢中になってすぐさまとびかかっていく。
シマシマシッポは慎重派だ。
ネズミをしっかり見ながら、いつまでもモゾモゾしている。
以前バッタを見つけたときは、隙を狙ってじっと身構えて、そのまま逃げられていた。
確実に仕留められそうなときだけ動くタイプなのだろう。
ボスは、オモチャにはあまり反応しない。
僕がネズミを持って近づくと、「そんなことより撫でて!」と仰向けになってアピールを始めてしまう。
玄関前に、うちの猫の姿が見えた。
ネズミを持って立ち上がる。
ネズミを振りながら、ゆっくり移動すると、シマシマシッポもしっかりついてきていた。
うちの猫のほうへ、移動する。
二匹が近づいたところで、真ん中にポイッとネズミを投げた。
――さあ、どうなるんでしょう。
と二匹の様子を見守った。
シマシマシッポはネズミから目を離さない。
じっと見つめて隙をうかがっている。
うちの猫もじっと……シマシマシッポをにらんでいた。
「なんなのよ、この子!」
という顔をしている。
ネズミは視界に入っていないようだ。
――ああ、そうなっちゃうんですか。
二匹でじゃれあいながらネズミを取り合うのかと思っていたのに、ちょっと違う結果になってしまった。
うちの猫がシマシマシッポにそっと近づく。
そして、軽くジャブを入れる。
シマシマシッポが、「ちょ、ネズミがいるのに」という感じで慌てて移動する。
それをうちの猫が追いかける。
――うーん、一緒に遊んでいるといえば遊んでいますけど……。
ネズミを拾って、二匹の前で動かしてみせる。
「ほら、取りに行ってくださいー!」
とポイッと放り投げた。
シマシマシッポがトコトコと追いかけていく。
そのおしりにジャブを入れながら、うちの猫が追いかける。
――そういうことじゃないんですよね……。
と思いながら、じゃれあうことのない二匹を見送った。
***
ちなみに、うちの猫はトタン屋根から僕の部屋に侵入するようになった。
窓を開けておかないと、うちの猫が飛び上がる音がいつまでも近所に響いてしまう。
トタン屋根だから、この音はすごい。
しかもうちの猫が入ろうとするのは、決まって夜中だ。
いそいで窓を開けるしかない。
「ここから入るのはやめましょうね」
窓に飛びついたうちの猫に言っても、「もう、じゃまなんだから!」というように、僕を押しのけて、部屋に入ってしまう。
部屋から出て、階段を降りる。
そして、玄関へ。
ドアに飛びついて、開けようとする。
「ちょっと、いま入ってきたところじゃないですか……。違うところから出ても、同じ庭ですよ」
と言っても、納得してくれないので、仕方なくドアを開けることになる。
――もう……。本当に思い通りにならない子ですね。
と思いつつも、なんだかんだで言いなりになってしまっている。
もしかすると、ボスやシマシマシッポも、こんな感じでうちの猫と接しているのかもしれない。




