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うちの猫と犬みたいな猫

 ――うーん、いないですねー。どこにいったんでしょうか。うちの子がいそうなところ……。


 そうして頭を悩ませながら納屋の中をのぞくと、シマシマシッポが寝ころんでいた。

 僕を見つけて仰向けになり、前足で僕の手をつかもうとしている。

 しかし、まったく届かなくて、空中をかきまわすような状態になっていた。


「あはは、何してるんですか……。それより、うちの子はいませんでしたか?」


 うちの猫の姿が、朝から見当たらなかった。

 ちょっと撫でたいと思ったときに、見つからないと気になってしまう。

 どうしても触りたくなる。

 そこで、家の中を探してみたが、どこにもいなかった。

 諦めきれなくて、こうして庭まで捜索範囲を広げているところなのだった。


「いったいどこに……えっ、ここにいたんですか?」


 納屋の奥で、うちの猫がちょこんと座っていた。

 ここにいるとは思わなかった。

 しかも、シマシマシッポと一緒だ。


「なんだー。いつのまにか、こんなに仲良しになってたんですね」


 納屋の大きさはたたみ一畳くらい。

 この狭いスペースに二匹で入り込んでいるというのは、もう完全に仲良しだろう。


 ――あれ? でもなんか……?


 うちの猫の耳はペタンと伏せられていて、ちょっと口をすぼめて、地面を見つめて、なんだか困っているような表情に見える。

 座り方も、きゅっと肩を縮めて、居心地が悪そうだ。


 納屋の奥の壁に寄り添うようにうちの猫、入り口を塞ぐようにシマシマシッポという配置になっている。


 ――これってもしかして、閉じ込められてますか?


 僕がシマシマシッポを抱えて移動させると、うちの猫はすぐに飛び出してきた。

「本当に困っちゃうわ」というように、ちらりとシマシマシッポをにらむと、トコトコと走り去った。

 やっぱり閉じ込められていたらしい。


 ――パンチして出ればいいのに、不思議なものですね。妙なところで押しが弱いんですよね。


 うちの猫はそういうところがある。

 わがままばかりというわけでもないのだ。


 うちの猫を見送って、シマシマシッポを地面に下ろすと、「えっ! どこ行ったの!?」というように周囲を見回していた。

「どこ!? どこ!?」とバタバタッと庭の端まで走って、急いで戻ってくる。

 走っているうちにテンションが上がってきたようだ。

 どんどん勢いをつけて走り続ける。

 もはや何かを探しているようではない。

 目的もなく、ただ走りたくなったから走る、という感じだ。


 納屋の中は日陰だったけれど、外に出れば、日差しは強い。

 シマシマシッポはすぐにスピードを落として、僕の足元に倒れこんだ。


「あはは、さすがにこの暑さで走ったらバテるでしょう」


 疲れて立ち上がれないようだ。

 横になったまま、お腹を激しくゆらして息をしている。

 口を横に大きく開いて、ちょっと舌を見せて、これではまるで――。


 ――犬みたいですね!?


 シマシマシッポの口元に耳を寄せると、「ハッハッハッ」という息づかいが聞こえた。

 ボリュームは小さいけれど、これは犬の呼吸と同じだ。


「あははっ、変な猫ですねー!」


 鼻をつんつんすると、「ハッハッハッ」と呼吸をしながらも、肉きゅうタッチで応えてくれた。


 ――そういえば犬っぽいところがあるような気もしますね。犬に育てられた猫だったりして。


 などと考えながら、僕は満足して家に戻っていった。



 まだうちの猫を触っていないことに気づいたのは、しばらくたってからだった。

その後ちゃんと触ることができました!

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