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うちの水をさす話

「ウワーオ! アーオ」


 猫が喧嘩をしている声が聞こえた。

 かなり近い。

 うちの猫の声でもないし、シマシマシッポの声でもない。


「うーん……喧嘩してますねえ……」


「ナーア!」


「アーアー!」


 しばらく待ってもやめる様子はない。

 うちの猫が巻き込まれても困るし、あんまり騒いでいると近所迷惑だし、と仲裁に入ることにした。


 玄関を出て、周囲を見まわして、ぐるっと探すとうちの庭の裏、柵に寄り添うにして向かい合う二匹の猫を見つけた。


「もー、こんなところで喧嘩して……どこの子ですか?」


 近づきすぎるとひっかかれるかもしれないと、1メートルほど離れて立ち止まる。


「さあ、喧嘩はやめて……」


「ナアー!」


「アーウー!」


「ほらほら。ここに人間がいますよ? 喧嘩は……」


「ンギャー!」


「アアー! ンナアー!」


「どうして無視するんでしょう……? ほら、ちょっと!」


 近づいて手をパチパチ叩いてもやめない。

 冊を叩いてもやめない。

 地面をダンダンと踏み鳴らして、「ナ、アー!」と僕が叫ぶと、猫たちは「変な人間がいる……」という顔でゆっくりと去っていくのだった。


***


 うちの猫が部屋の中にいるとき、外で喧嘩をしている声が聞こえると窓に駆け寄っていく。

 そして窓の外を眺め、フンッと鼻を鳴らして、「たいしたことなさそうね」という顔をするのだった。


 シマシマシッポはというと、モゾモゾとなるべく窓から離れようとするのだった。


***


 猫が喧嘩をする声が聞こえた。


「また喧嘩ですか? 最近多いですね。そういう季節ですっけ? ってこれは……!」


 うちの猫の声だ。

 僕は玄関から飛び出したのだった。


 家の前の道路で喧嘩をしていたのは予想通り、うちの猫。

 もう一匹はきれいに黒と白に分かれたハチワレだ。


 うちの猫はもう完全に戦闘態勢で、「ウオーウ」と威嚇している。

 ハチワレのほうは何とも思っていないような表情でじっとしている。


 この状態のうちの猫に近づくと僕もひっかかれそうなので、近づきすぎないようにしながら声をかける。


「ほら、喧嘩はやめてくださいよ」


「ウアーオウ!」


「ハチワレちゃん……どうして平気な顔でいられるんですか……? この子は激怒してるし、人間もいますよ。ほら、あっち行って……!」


 このハチワレが動こうとしない。

 道を譲ったら負けとかそういう戦いなのかもしれない。


 回り込んでハチワレのほうに行こうとするが、うちの猫が反応して「ナアー!」と僕を威嚇してくる。

 これでは近づけない。

「わかりましたよ……」と引き下がって、僕は庭へ向かった。


 向かう先にあるのは水まき用のホース。

 蛇口を開けて、めいいっぱい伸ばして、道路まで引っ張っていく。

 シャワーモードにして放水開始。

 ジョロジョロと水が飛び出して、二匹は「ハア?」という顔をしていたが、地面に水たまりが広がっていくと、二匹とも嫌そうな顔で離れていくのだった。


「なるほど、水をさすってこういうことなんですね……! へへっ!」


 シッポを膨らましたうちの猫が「はやく家に帰りたいんだけど?」と玄関のドアの前に座るので、僕は伸ばしたホースを放りだしてドアを開けるのだった。

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