うちの起こしたい猫
ガチャン!
音を立てて、うちの猫が入ってくる。
「オ、アーオ!」と自分をアピールするときの声を出す。
「うーん? なんですか? 寝てたんですよ? 起こさないでください」
「フーン!」
「まだ暗いし。何時だと思って……本当に何時だと思ってるんですか! まだ夜じゃないですか」
「ンーウンー」
「もう……」
布団の中から手を伸ばすと、「フルフルフル」とのどを鳴らしながら声を出して、鼻をこすりつけてくる。
「もう、まったく……。一緒に寝ましょうか」
と起き上がると、すぐさまくるりと向きを変えて、逃げていくのだった。
***
「逃げるなら、なんで起こしたんですか……」
寝不足気味でリビングに向かうと、うちの猫がソファーに寝ていた。
このところ変わった体勢で寝ていることが多い。
例えばソファーで寝るときは、顔を背もたれのほうに向ける。
狭いほう、窮屈なほうを向いて寝るのだ。
「あー、こんなところで自分だけ寝てるー」
と言いながら近づくと、うちの猫がチラッと僕を確認する。
「ほら、触っちゃいますよー」
と手を伸ばすと、背もたれにギュッと顔を押し付けて「フウーン」と鳴く。
「あれ? 嫌がってますか? ちょっとその体勢はわかりにくいんですよね……。嫌がってるのかな……?」
とりあえずお腹をポンポンと叩いて、僕は朝食を食べるのだった。
***
メダカを外に移動させることになった。
容器を用意して、並べていく。
作業をしていると、すぐにうちの猫がやってくる。
現場監督をしたいらしい。
僕の様子を眺めながら、「キューアー」と声を出しながらあくびをする。
「あっ、まだ眠いんじゃないですか。ひとのことを起こして、自分も寝不足になっちゃったんですか?」
うちの猫は僕の指摘にも動じず、べたりと横になってしまった。
「まあ邪魔しないならいいんですけど……」
容器を洗って、用意していた水を入れていく。
最後にメダカを移動させる。
ひととおり終わったのを確認してうちの猫が動きだす。
容器に顔を突っ込んで、ごくごくと水を飲むのだ。
「ちょっと、たしかに飲みやすくなりましたけど、メダカが驚いてますよ? そんなに勢いよく飲まないでください……! それくらいで、もういいでしょう……え、なんでこんなに踏ん張ってるんですか? そんなに水を飲みたいんですか? 自分用の水差しがあるでしょう……!」
メダカを飲み込んでしまわないかハラハラしながら見守ることになるのだった。




