おじさん猫とお行儀のいい猫
ソファーにうちの猫が座っていた。
寝そべっていると言ったほうがいいだろうか。
だらんと横になって、前足、後ろ足を投げ出して。
こういうときの猫は、おじさんがくつろいでいるように見える。
僕が近づいておでこを撫でると、「ここをお願い」という風に首を伸ばす。
要求通りに首を撫でてしばらくすると、「もういい加減にやめて」という風に噛む真似をする。
この間、動いたのは首から上だけだ。
「暑いのはわかりますが……徹底して動かないんですね……」
「何か文句あるの?」という顔で、下から僕を見上げるのだった。
***
シマシマシッポも似たようなところがあるが、ときどき妙にお行儀がいいことがある。
うちの猫に叩かれてしつけられたのかもしれない。
最近はちょこんと座って、窓の外を見つめていることが多い。
「外に出たいんですかー? そういうときは言ってくださいよ? 中に入るときも座って待ってるだけですよね……。呼んでくれないと気づかないですよ?」
と言いつつ窓を開けると、ちょこんと座ったまま外を見つめるのだった。
「うん……出るの? 出ないの?」
「あれ? やっぱり出るつもりなのかなあ?」と絶妙な反応を見せるので、なかなか離れることができないのだった。
***
「まあ、猫の元気がないときは、やっぱりこれですよね」
と買ってきたチューブのおやつを取り出す。
チューブの先を切って、寝ころんだままのうちの猫に近づけていく。
うちの猫はヒクヒクと鼻を動かして目を細める。
「あっ、気づきましたね! おやつですよー? これ好きですよねー!」
うちの猫は目を細めて、なんだか満足げな顔をしながらトコトコと去っていくのだった。
「ちょっと! なんで! チューブのおやつですよ! チューブのおやつ!」
僕の「チューブのおやつ」という言葉を聞きつけて、シマシマシッポが走ってきて目の前にちょこんと座るのだった。
キラキラした目で見つめている。
こういうときもお行儀がいい。
「シマシマちゃんが食べるんですか? シマシマちゃんは食べすぎじゃないですかね……。でも開けちゃったから仕方ないですね……」
チューブを差し出すと、チューブごと食べそうな勢いでかぶりつくのだった。




