なんかかわいくない猫
「ナアアン」
窓の外でうちの猫が鳴いていた。
「あれ? お出かけしていたんですか?」
と窓を開ける。
最近、暑いせいか、うちの猫が横になってだらんと寝そべっている姿をよく見る。
僕が触ってもシッポをブンと振るだけ。
少し心配になっていたところだったので、お出かけしていたというのは安心材料だ。
「まあ、そんなに心配することでもないですよね。暑いだけだし。はい、入ってください」
「ナアナア」
と僕に声をかけながら部屋の中に入る。
「機嫌がいいんですかね?」と見送って、窓に手をかける。
ふと足元を見る。
トコトコと虎柄の猫が窓から入ってこようとすることだった。
「ちょっとちょっと! なにしてるの!? どちら様ですか?」
「ハア?」
という顔で虎柄猫が僕を見つめる。
「ハア? じゃないでしょ……。見たこと……ないですよね? うちの子とお友達なんですか?」
僕が近づいてじっくり見ようとすると、後ずさって「ハア?」という顔をする。
「いや、そんなに避けなくても……」
警戒するというより、距離を置きたいという感じで、虎柄の猫は僕から離れていく。
「家の中には勝手に入ろうとしたのに、なにその反応……。でも近所の子じゃないみたいですね。この辺はこういう柄の子が多いですけど、毛の長さと身体の太さが違いますよね……」
と考えていると虎柄の猫は「ナッ!」と吐き捨てるように鳴いて、去ってしまった。
「なんだろう……。なんかかわいくない猫……」
首をかしげながらキッチンへ向かう。
コーヒーを入れて戻ってくると、先ほどの虎柄の猫が窓から部屋の中を凝視していた。
「いやいや、入れませんからね。もう帰ってください」
と僕が近づくと、「ハア?」という顔で、今度こそ去っていくのだった。
***
シマシマシッポもやはり、最近は寝そべってばかりだ。
見つかりにくい部屋の隅で、床と一体化していることが多い。
踏みつけてしまいそうで怖いし、実際たまに踏みつけている。
「あーこんなところにいましたね」
と声をかけると、意地でも反応しないぞという表情で、遠くを見つめている。
本当に動きたくないのだろう。
僕が触ると、「オアーオ」と怒ったふりをして、すぐにあきらめる。
「へへへ、怒っても触っちゃいますからね!」
とシマシマシッポを撫でていると、ビクンと何かに反応した。
窓に向かって駆けだし「オアオアオア!」と怒った声を出している。
「何ですか? ……あっ、また!」
追いかけると、あの虎柄の猫が家の中をのぞいているのだった。
「オアーオ! アーオ! アーオ!」
とシマシマシッポが鳴き続けると、うるさそうな顔で窓から離れていく。
どうやらシマシマシッポと仲が悪いようだ。
虎柄の猫を見送って、すっかり見えなくなっても、シマシマシッポは臨戦態勢で窓を見つめているのだった。
「もういなくなりましたからね。大丈夫ですよ」
とシマシマシッポの背中を撫でる。
「シマシマちゃんと仲が悪いんですね。……やっぱりあの猫、なんか感じが悪いですよね? わかりますよ?」
そうして落ち着いたシマシマシッポは、部屋の隅に戻って寝転び、遠くを見つめるのだった。




