うちの悲しいおやつ
「今日は新しいおやつを買ってきましたよ!」
と僕が手に持っているのは猫のおやつ。
カリカリにかけて食べてくださいという、栄養補助食品のようなものだ。
以前買ってきたものは、シマシマシッポもうちの猫もモリモリ食べてくれた。
これなら値段も安いし、カリカリも一緒に食べてくれる。
ちょうどいいと思って、また買ってきたのだった。
「今日のは安売りでしたからね。いっぱいありますよ!」
前回買ってきたものよりも、数十円安い。
その分、量が多い。
これでしばらく喜んでもらえるだろう。
「ハサミ、ハサミ……」
僕がおやつの袋を持ってウロウロしていると、うちの猫が気づいて近づいてくる。
「何なのかしらね?」とすました顔で、カリカリのお皿の前に座る。
「さ、開けました! はいはい、お待たせしました。おやつですよー!」
カリカリの上におやつを乗せる。
うちの猫はスンスンとにおいを嗅いで、「はあ?」という顔をして走り去っていくのだった。
***
「まあね、うちの子は好き嫌いが激しいですからね。こうなるかもしれないというのはわかっていましたから……」
と僕は移動する。
シマシマシッポのお皿の前だ。
シマシマシッポも、もちろんお皿の前で待機している。
目をキラキラ輝かせて、モゾモゾ身体を動かして、待ち遠しくてたまらないという様子だ。
「シマシマちゃんはなんでも食べますもんね! おやつがなくてもモリモリ食べるんだから! もう何でもいいんだから!」
カリカリの上におやつを乗せる。
シマシマシッポはにおいを嗅いで、立ち上がり、スタスタと去っていくのだった。
***
「ねえねえ、おやつ、食べましょう?」
スタスタ。
シマシマシッポはわき目も振らずに玄関へ向かう。
玄関のドアの前で僕を見上げて、「アウ」と短く鳴く。
「いや、開けますけど……おやつ……」
ドアの隙間からするりと抜け出して、またスタスタと歩いていく。
「そんなにですか……? 好みじゃなかったというか、むしろ嫌がってますよね……。たくさん買ったのに、どうしよう……」
大量に買ってきてしまったおやつのことを考えて、僕は途方に暮れるのだった。




