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メダカと水を飲むシマシマシッポ

 メダカを飼い始めて、大きな容器を外に並べていた。

 しかし、庭をあれこれいじることなり、メダカにはしばらく家の中で暮らしてもらうことになったのだった。


***


「よし、とりあえずこれで移動完了と」


 何か忘れていることはないかな、としばらく考える。

 メダカたちは元気そうに泳いでいる。

 必要以上に元気な気もする。


「心配なさそうですね」


 と僕の隣に、シマシマシッポがやってきた。

 見慣れないものを見つけて、興味津々という様子だ。


 メダカたちは、お魚屋さんでよく見かける白い発泡スチロールの中に入っている。

 背の低い容器だから、猫でも中をのぞくことができる。

 シマシマシッポはじいっと見つめて、顔を近づける。


「そういえばシマシマちゃんは何でも食べちゃうんでしたね……。メダカは食べないでくださいよ?」


 さすがに食べないよね? と思いつつも心配になる。

 シマシマシッポはどんどん顔を近づけて、容器の水を飲み始めた。


「ちょっと……! あっちに水のお皿はあるでしょう! ちょっと! なんで!」


 ピチャピチャ。


 僕のことを無視して、シマシマシッポは水を飲み続ける。

 容器から離そうとしても、足を踏ん張って動かない。

 こういう時のシマシマシッポは頑固だ。


「ええ……これどうなのかな……? メダカに悪影響な気がするけど……どうなんだろ……。とにかく食べないでくださいよ?」


 シマシマシッポは舌でピチャピチャと水を舐めるだけで、メダカを食べたり捕まえたりするつもりはないようだ。

 一生懸命水を飲んでいる。


「まあ、この様子なら大丈夫……え……?」


 ピチャピチャと水を飲むシマシマシッポのもとに、メダカたちが集まっていた。

 シマシマシッポの口元めがけて突進しているメダカもいる。


「ええ? 食べてないですよね……? ん……? ええ……?」


 どういう状況だ? と顔を近づけて確認すると、シマシマシッポはピチャピチャ舐めるだけでメダカを食べてはいない。

 集まってきたメダカたちは、シマシマシッポに舐められて、方向転換して、また突撃するということを繰り返している。


「何これ……? どういう……? メダカもシマシマちゃんも何を考えてるの……?」


 こうしてシマシマシッポとメダカは謎の交流を続けるのだった。


***


 メダカにエサをあげていると、うちの猫も近づいてきた。


「やっぱり気になっちゃうんですね」


 うちの猫は水を飲んだりメダカを食べたりはしないと思う。

 もう少し大きな生き物なら、叩いていたぶっていただろうけど、水の中のメダカには手を出せないだろう。


 僕の隣にちょこんと座って、メダカの容器を眺める。


「ほら、メダカです。ここに、ほら」


 とうちの猫にメダカを見せると、興味を持ったようで、じっと見つめる。

 水を飲むわけでもなく、容器に近づくでもなく、ただじっと見つめている。


 しばらくすると、うちの猫はじわじわと僕の背後に移動していった。


「うん、どうしたんですか? あっ、もしかして、メダカが怖いんですかー?」


 鼻をツンツンとつくと、「フウーン」とかわいい声でごまかしている。

 その後も「こわいんだー、こわいんだー」とからかっていると、うちの猫は「ンギャー!」と僕を威嚇して、走り去っていくのだった。

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