うちの動じない猫
「うーん、なんか調子が悪いですね……」
低気圧が近づいているせいか、頭が重い。
天気もずっと曇り空が続いている。
「ハァ……って、いたんですか!?」
窓の外を見ると、シマシマシッポが座っている。
どうやら開けてもらうのをずっと待っていたらしい。
「いつからいたんですか? 呼んでくださいよ」
窓を開けて声をかけると、「ずいぶん待たされましたけど?」とアピールをするように、ガリガリと爪を研ぎ始める。
「はいはい、ごめんなさい」とシマシマシッポの気が済むまでなだめることになるのだった。
***
「フギャー!」
「ギャアーオ!」
部屋で本を読んでいると、猫がケンカをする声が聞こえた。
ずいぶん近い。
パタンと本を閉じて、急いで玄関へ向かう。
シマシマシッポがいじめられているのかもしれない。
「こらー! 誰ですかー!」
「ウアーオ! ……?」
「ウーウ! ……?」
玄関の目の前で二匹の猫が喧嘩をしていた。
僕を見て「誰?」という顔でピタリと止まる。
「誰? じゃないでしょう! うちの前でケンカしないでください! だいたいあなたたちこそ誰なんですか! 見たことないですよ!?」
「……アーオ!」
「……ナアーア!」
僕がそばにいるのに二匹はケンカを再開してしまった。
一匹はオレンジに近い茶色の、ふわふわの毛皮の猫。
もう一匹は白地に少しオレンジの部分がある、ぺったりした毛皮の猫だ。
近所で見かけた記憶はない。
「ひとの家で喧嘩をするわ、僕のことは無視するわ、どういうこと……? うむむ、ナアー!」
僕が両手をあげて威嚇すると、二匹は少し移動する。
効果が薄いようなので、ジタバタと地面を踏み鳴らしながら近づくことにした。
ダンッ、ダンッ、ダンッと何度か足を踏み鳴らして、ようやく二匹が反応する。
「こらー!」
「アーア!」
「ンギャー!」
と騒ぎながら去っていくのだった。
「ひどい子たちがいますね……僕が来ても逃げないなんて……この気分は、あれだ! 『はじめてですよ、この私をここまでコケにしたおバカさんたちは』だ!」
ちょうどいいフリーザの名言を思い出して満足していると、トコトコとうちの猫がやってきた。
「あれ? どこにいたんですか。いたんなら追い払ってくださいよ」
「……?」
うちの猫はちょっと首をかしげて、「なにを騒いでいるのかしら」というようにフンッと鼻を鳴らして、いつもと変わらない様子でトコトコ歩いていくのだった。




