うちの真夜中の声
「ギュウギュウ……」
「あらまあ……」
季節の変わり目のせいなのか、うちの猫の鳴き声がかすれたものになった。
もしかしたら風邪をひいているのかもしれない。
「大丈夫ですか?」
「グウン……」
カリカリはちゃんと食べている。
お水も飲んでいることを確認済みだ。
「食欲はあるみたいだし……」
背中を撫でようとすると、バシッと叩いてにらみつけてくる。
「まあ元気そうだと……。しばらく見守るしかないですね」
「ギュー……」
自分でも気になるのか、うちの猫は不満げな様子でウロウロするのだった。
***
数日たつと、うちの猫の声は元通りになった。
「ウーン」
「はいはい良かったですね」
「フウーン」
気分がいいのかやたらと僕に話しかけてくる。
「もうわかりましたから。それじゃあ遊んでてください。僕は部屋に行きますからね」
と自分の部屋に行くと、すぐにうちの猫がドアをひっかく。
「もう……はい、開けましたよ」
「フーン、フーン」
部屋に入って、すぐに出ていき、シッポをぴんと立てて、また入ってくる。
「入るのか入らないのか、どっちですか……。用がないならドアをひっかかないでくださいよ」
「ウウーン」
といつまでもウロウロするのだった。
***
さらに真夜中、リビングでドタバタ走り回っている音がした。
テンションが上がって戻らないらしい。
「もう……まあほっといたらそのうち落ち着くでしょう……」
と眠ろうとすると、声が聞こえた。
「きゅう、ご、さん、はち」
リビングには固定電話がある。
いまどき固定電話はなくてもいいのだが、ファックスを使うために設置してあるのだ。
ボタンを押すと、「いち、に、さん」と対応した数字の音声が流れるタイプのもの。
うちの猫がその上に乗っているらしい。
「電話の上に乗って遊ばないでくださいよ……。まあそのうち飽きるでしょう……」
「さん、さん、さん、さんさんさんさんさんさんさん」
「もう! ちょっと!」
結局起きて相手をすることになるのだった。




