うちの猫の外泊2
この猫は家の中で飼っていたのだけれど、大きくなってからは家の外にも出すようになった。
玄関のドアを開けると喜んで飛び出していく。
家の外といっても本当に近くをうろうろするだけ。
必ず日帰りで、たいていは暗くなる前に帰ってきているようだった。
一時間もしないで帰ってくることもあった。
気がつくと窓の外で座っている。
自分では開けられないから、開けてもらうのを待っているのだ。
だから、みんな安心していた。
そうして外に出すようになって、一ヶ月ほどが過ぎたころ、猫が帰ってこなくなった。
初の外泊だった。
一日。二日。三日目になっても猫は帰ってこない。
ご飯はどうしているんだろうか。
ほかの猫にいじめられていないだろうか。
寝る場所はあるんだろうか。
夜は寒くないだろうか。
事故にあってないだろうか。
もしかしたら、このまま帰ってこないんじゃないか……。
そういうことを家族は口に出さなかった。
「猫なんだから、食べ物くらい自分で見つけられるよ」
「外で遊ぶのに夢中で、帰ってこないんだよ」
「気の済むまで遊んだら、すぐに帰ってくるさ」
「野良猫はずっと外で生活してるんだから、それを考えたら三日くらい外で暮らすのなんてなんでもない」
家族は口々にそう言って、しかし全員が深刻な顔をしていた。
悪い予感を口に出すのを恐れているようだった。