うちの猫のぴゃーお
倉庫にできていた穴は埋めた。
結局庭でハクビシンを見かけることはなかったが、不安の種は埋めてしまうのが一番だ。
ついでに倉庫の片づけもすることにしたのだった。
***
「これは燃えるゴミ。燃えるゴミ……? そうなの……? 燃えそうにないですけど……」
倉庫から引っ張り出したガラクタを分別していく。
細かくていまいちよくわからない謎の基準にあわせて分別しなければならないので大変だ。
「このガラスは取り除いて……ネジを外して……」
作業を進めていると、うちの猫がやってきた。
家の中、窓の向こうに座って僕の作業を眺めている。
現場監督だ。
「ふふふ、何やっているか気になりますか?」
聞こえているのかいないのか、うちの猫は窓の向こうで目を細めている。
「そろそろやめようかと思ってましたけど、監督が来たならもう少しやらないといけませんね……!」
作業を続けているとうちの猫があくびをした。
ぴゃーおという声が聞こえる。
これはたまにしか見かけない現象だ。
うちの猫があくびをするのと同時に鳴こうとしたときに、この「ぴゃーお」という声を聞くことができる。
僕としては毎日この声を聞かせてほしいのだけど、なかなか遭遇することはない。
「えへへ、今日はラッキーでしたね」
作業も捗るのだった。
***
片づけが終わって玄関のドアを開けると、うちの猫がするりと外へ出てきた。
機嫌がいいようだ。
シッポをピンと立てている。
「どうですか? きれいになりましたよね?」
うちの猫が僕の片付けたガラクタの山に近づいていく。
興味津々な様子だ。
そして、ガラクタの山の中に入っていこうとする。
「ちょっと! 気になるのはわかりますけど、ガラクタですから。不安定だし、尖ったものもあるし、やめて。そこに入っていこうとしないで!」
僕が止めようとするほど、ぐいぐいとガラクタへ近づこうとする。
「もう……別に困らせようとしてるんじゃないと思いますけど、余計なことをするんだから……。もう帰りますよ」
僕が玄関へ向かうと、ガラクタに背を向けてトコトコとついてくる。
「えへへ、やっぱり機嫌がいいんですかね?」
シッポをピンと立てて、お尻を見せつけながら、僕の前を歩く。
「片付けをするといいことがありますね」と思っていると、うちの猫がシマシマシッポのエサ入れに駆け寄る。
「あっ、食べた!?」
うちの猫がシマシマシッポのカリカリを食べ始めたのだった。
「珍しいですね……? シマシマちゃんのカリカリがなくなっちゃいますよ?」
それほどお腹はすいていなかったらしく、すぐに食べるのをやめる。
そしてテーブルに飛び乗る。
「つまみ食いですか? やっぱりテンション高いですよね……あっ、お菓子です。このお菓子好きですよね?」
テーブルの上にはお菓子の山。
うちの猫はお菓子が好きなのだ。
と言っても食べるわけではなくて、お菓子の小袋のギザギザ部分に顔をこすりつけるのが好きなのだ。
「そんなに気持ちいいものなんでしょうか……あっ、落ちましたよ?」
うちの猫がぐいぐい顔をこすりつけたおかげで、お菓子の山が押されてお菓子が一個落ちてしまった。
うちの猫は僕の声に反応して「えっ?」という顔をして、すぐにお菓子に顔をこすりつけるのを再開する。
「うーん、もう、落ちる! ドンドン落ちてますよ!?」
テーブルからお菓子が落ちてもうちの猫は気にせずご機嫌なまま。
「まったく……余計なことをするんだから……」
目を細めて嬉しそうな顔をしているので怒るに怒れずに、僕はテーブルから落ちたお菓子を拾うのだった。




