うちの気分が乗らないおやつ
家に帰るとシマシマシッポがストーブの前に座っていた。
「わー、あったかそうですね! 外は寒かったんですよー!」
僕が隣に座ると、モゾモゾと移動する。
「あら、場所を譲ってくれるんですか? でもくっついてあったまりましょう」
僕が近づくと、シマシマシッポは迷惑そうな顔で、モゾモゾと離れていくのだった。
***
うちの猫は僕の布団の中で暖まっていた。
「帰ってきましたよー?」
布団から顔を出して、目をショパショパさせている。
指を近づけると、スンスンとにおいを嗅いで、おでこを押し当ててくる。
「寝起きは素直に甘えてきますね! あっそうだ!」
鞄の中からクッキーの小袋を取り出す。
「これ、食べたやつ。中身ないけど、この袋好きですよね」
と近づけると、うちの猫は目を細めて、丁寧に袋を舐め始めた。
「なんなんでしょうね……。クッキーの味がするというわけでもないですし」
もう僕には見向きもせず、うちの猫はのどを鳴らしながらクッキーの袋を舐め続けるのだった。
***
「そうそう、チューブのおやつも買ってきたんですよ!」
とチューブを見せつける。
うちの猫は「あら、何かしらね」という顔で、僕の前にお行儀よく座る。
「えへへ、待ってください。ハサミで切って……ほら!」
チューブをぎゅっと握って、中身が多めに出てしまった。
「あはは、たくさん出てきちゃいましたね!」
うちの猫は「えっ?」という顔をして、一瞬止まって、それからトコトコとリビングから出て行ってしまった。
「えっえっ、なんで? チューブのおやつですよ?」
とうちの猫を追いかける。
「たくさん出てきちゃったけど……。ちょっと食べにくいかもだけど……。そんな反応あります……?」
うちの猫はトコトコと階段を上っていってしまった。
「ええ……、気が乗らなかったのかな……。たしかにたくさん出てきちゃったけど……」
と振り返ると、シマシマシッポがウキウキした顔で、チューブを持った僕を見つめているのだった。




