うちのどうしても邪魔したい猫
「今日もパン。毎朝パンを食べてるのに、飽きないって、考えてみると不思議ですよねえ」
とパンをモシャモシャしていると、うちの猫がテーブルに飛び乗って、近づいてきた。
「ん? 何ですか? 食べます?」
パンを鼻の側に持っていくと、一応ヒクヒクさせて、それから嫌そうな顔をした。
「パンじゃない……? いったい何ですか?」
うちの猫は僕の食事を黙って見つめ、僕の真似をするようにカリカリを少し食べて、鼻をフンッと鳴らして去って行くのだった。
***
「庭もキレイになってきたんですよねー」
邪魔な木を切ったり、草を刈ったり、花を植え替えたり。
台風が過ぎてから地道に片付けていたおかげで、庭がかなりスッキリしたのだった。
「ここに畑を作ることもできましたし」
とちいさな畑を眺める。
畑と言ってもたたみ一畳分くらいを掘り返しただけだ。
そこに、適当に二十日大根の種を撒いていた。
「芽が出るのが楽しみですね。そもそも種を撒く時期なのかどうかも調べてないですけど」
と畑をいじっていると、うちの猫が近づいてきた。
「あら、現場監督をしに来たんですか?」
うちの猫は、僕をあえてスルーするそぶりで目の前をウロウロする。
そして、二十日大根を植えた土を、丁寧に掘り返し始めた。
「ちょっと! 何してるんですか。やめてください。僕が作った畑ですよ!?」
止めようとする僕の手をするりと避けてしゃがみこむ。
そして耳をペタリと寝かせる。
「えっ、その体勢は……」
おしっこをしているのだった。
「もう! 何してるんですか! あんまりですよ!」
うちの猫は畑の土を適当にかけて、フンッと鼻を鳴らして去っていくのだった。
***
「ウウーン。ウーン」
僕が寝ようとすると、ドアの外で声がする。
うちの猫が部屋に入りたいようだ。
「やりたい放題する猫は、入れませんよ!」
と言っても、いつまでも粘り強く「ウウーン」と鳴いて待っているので、ドアを開けないわけにはいかないのだった。
ドアを開けるとおでこをこすりつけてくる。
「まあ……許されるのは今回だけですよ?」
「ウウーン」
とりあえず用は済んだと、僕の部屋を物色し始める。
「僕は寝ますからね? おやすみなさい」
電気を消すと、うちの猫が近寄ってくる。
モゾモゾとぎこちない動きで、僕の布団の上に乗る。
――もう、そんなに僕のそばがいいんですね。かまってほしかったんですね。
暗闇の中、手を伸ばすと、「フシャー! クワ―!」と怒り狂ったうちの猫に、腕をひっかかれるのだった。




